2016年度 太陽系科学研究系 STPセミナー

■場所  :A棟5F会議室 (変更の場合は赤字)
■時間  :毎週火曜 16:00-18:00 (変更の場合は赤字)
■連絡先 :齋藤研D1 加藤 大羽(daiba [AT] stp.isas.jaxa.jp)
■備考  :発表時間は一人当たり45分程度 * 2人
履歴と予定
開催日時・場所 発表者 (所属・身分)
4/26(火) 16:00- 5F 会議室 塩谷(准教授)
5/3(火) 祝日のためお休み
5/10(火) 16:00- 6F 会議室 自己紹介
今井(M1),長谷川(M1),土井(M1)
5/17(火) 16:00- 5F 会議室 自己紹介&JpGU発表練習
北原(M1),韓(M1),須藤(M2)
5/24(火) JpGUのためお休み
5/31(火) 16:00- 5F 会議室 自己紹介
石川(PD)
6/6(月) 16:00- 5F 会議室 銭谷(国立天文台)
6/14(火) 16:00- 6F 会議室 中村(教授),横田(助教)
6/21(火) 16:00- 5F 会議室 坂尾(准教授),長谷川(助教)
6/28(火) 16:00- 5F 会議室 伴場(PD),Peralta(PD)
7/5(火) 16:00- 5F 会議室 小美野(M2)
7/12(火) 16:00- 6F 会議室 佐藤(PD),小美野(M2)
7/19(火) 16:00- 5F 会議室 大場(D2),西野(名古屋大学)
7/26(火) 16:00- 5F 会議室 松岡(准教授),今村(東京大学)
8/2(火) AOGSのためお休み
8/9(火) 16:00- 5F 会議室 笠原(助教)
9/13(火) 16:00- 6F 会議室 修論中間発表
須藤(M2),星(M2),長谷川(M2)
9/20(火) 16:00- 5F 会議室 修論中間発表
奈良(M2),武藤(M2)
9/27(火) 16:00- 5F 会議室 修論中間発表
小美野(M2),下川(M2),坂本(M2)
10/4(火) 16:00- 5F 会議室 D論中間発表
清水(D3),榎本(D3)
10/11(火) 16:00- 5F 会議室 D論提出前発表
平林(本郷D3)
10/18(火) 16:00- 5F 会議室 D論提出前発表
金子(本郷D3)
10/25(火) お休み(振り替え11/10)
11/01(火) お休み(振り替え11/14)
11/08(火) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
長谷川(M2)
11/10(木) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
下川(M2),奈良(M2)
11/14(月) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
星(M2),須藤(M2),小美野(M2)
11/15(火) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
岩本(本郷M2),市村(本郷M2),武藤(M2)
11/22(火) SGEPSSのためお休み
11/29(火) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
大井(本郷M2),鈴木(本郷M2)
12/06(火) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
疋田(本郷M2)
12/13(火) AGUのためお休み
12/20(火) 16:00- 5F 会議室 Tasker(准教授),加藤(D1)
1/10(火) 16:00- 5F 会議室 修論提出前発表
疋田(本郷M2), 松本(PD)
1/17(火) 16:00- 5F 会議室 佐藤(教授),Tasker(准教授)
1/24(火) 16:00- 5F 会議室 川畑(D1),坂本(M2)
1/30(月) 16:00- 6F 会議室 修論発表練習
須藤(M2),長谷川(M2),星(M2)
1/31(火) 16:00- 5F 会議室 修論発表練習
小美野(M2),下川(M2),奈良(M2),武藤(M2)
2/7(火) 16:00- 5F 会議室 今井(M1)
2/14(火) 16:00- 5F 会議室 韓(M1),土井(M1),長谷川(M1)
2/21(火) 惑星圏シンポジウムの為お休み
2/28(火) 16:00- 6F 会議室 清水(D3)
3/7(火) お休み
3/14(火) 16:00- 5F 会議室 北村(PD)
3/21(火) 16:00- 5F 会議室 村上(豪)(PD)



発表の概要
開催日時・場所 発表者 (所属・身分)
3/21(火) 16:00- 5F会議室 村上(豪)(PD)
続・次期惑星探査に向けた新型紫外線検出器の開発
概要: 我々はこれまで惑星大気・プラズマ観測における極端紫外線観測技術とその有用性を実証してきた。一方、従来の装置設計で達成できる性能はすでに上限に達しつつあり、将来の探査計画において新たな突破口が必要であることもわかってきた。本研究では可視光用の画像素子であるCMOSイメージセンサを応用した新型の極端紫外線検出器を開発し、将来の惑星探査計画に向けて検出器の分解能およびダイナミックレンジを向上させることを目的とする。また試作した検出器に機械環境試験や熱真空試験、放射線照射試験を実施し、飛翔体への搭載可能性を検証する。1年前の本セミナーでは初期の開発状況および課題を紹介したが、今回は現在までの課題克服状況および今後の見通しについて紹介する。
3/14(火) 16:00- 5F会議室 北村(PD)
MMS衛星の観測データを用いたWPIA解析による電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波動励起、重イオン加速の直接計測
概要: 宇宙空間の無衝突なプラズマ中でプラズマを加速するためには背景の場からエネルギーを得る必要がある。その中でも特にプラズマ粒子が波動と相互作用しエネルギーを得ること(波動粒子相互作用)が様々な粒子加速の原因となっている。例えば、広帯域の電磁波動等が地球の極域でイオンが磁気圏へ流出していく際の加速に主要な役割を果たしていると言われている。また、コーラスと呼ばれる電子サイクロトロン波が放射線帯にある相対論的エネルギー電子の生成に重要であると主張されている。一方、その波動自身も何らかの過程でプラズマ粒子からエネルギーを得て励起する必要がある。しかし、電磁波動は伝搬するため、たとえ波動が衛星によって観測されたとしても、その場で粒子と相互作用して励起しているのか、伝搬してきているものが観測されているだけなのかは簡単には区別できない。また、加速された粒子が観測されたとしても、その場で粒子加速が起きているのか、他の場所で加速された粒子がやってきたのかを区別するのも容易ではない。衛星による波動と粒子のエネルギー、ピッチ角分布の観測データを用い、準周期的な波動と粒子がその場で相互作用する理論的条件を満たすかどうかというタイプの議論は長年にわたって数多くなされているものの、実際に周期的波動と粒子がエネルギー交換しているエネルギー交換率を直接観測し理論を実証することは主に観測器の時間分解能等の制約で課題として残されている。昨年打ち上げられたあらせ(ERG)衛星ではプラズマのエネルギー、ピッチ角分布に加えて、ジャイロ角方向分布と波の電磁場の相対的な位相情報を用いるWPIAと呼ばれる手法で直接観測を行い、内部磁気圏において電子について波動粒子相互作用を実証する事がミッションの主要なターゲットとなっている。本発表ではWPIA的な解析手法をMMS衛星群で磁気圏外周部で観測されたイオンと電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波に適用した結果について報告する。MMS衛星は多数の低エネルギーイオン計測センサーを搭載し、波動の周期よりはるかに短い時間で3次元分布関数を計測する事ができる。観測された波動の先頭の数周期において磁場に垂直な方向に温度が高いという温度異方性をもった10-30 keVのH+がジャイロ非等方になり、EMIC波動にエネルギーを供給し、同時にHe+が波動からエネルギーを受け取り2 keV程度まで加速されているのを直接検出した。H+と波動のエネルギー交換は分布関数内の共鳴速度付近で発生していたため非線形のサイクロトロン共鳴によるもので、He+と波動のエネルギー交換は共鳴条件を満たさない非共鳴の波動粒子相互作用であった。これは、複数のイオン種が波動を介してエネルギー交換している事を初めて観測的に実証し、更にエネルギー交換のイオン分布関数内での分布からイオン加速や波動励起の物理過程を直接同定したものであり、WPIAの手法が波動粒子相互作用の理解に極めて有用である事を示す例である。
2/28(火) 16:00- 6F会議室 清水(D3)
Triggering of explosive reconnection in a thick current sheet by temperature anisotropy boosted tearing mode
概要: It has been widely believed that magnetic reconnection is triggered when a current sheet thickness thins and becomes comparable to the ion inertial scale. Here we challenge this argument by performing two-dimensional kinetic simulations of magnetic reconnection triggering in anti-parallel current sheets. In the simulations, the current sheet subject to reconnection is filled with plasmas having temperature anisotropy (T_perp/T_para=2) and its thickness (D=L/λ_i, where L is the half-thickness of the current sheet and λ_i is the ion inertia length,) is larger than unity. What we newly show here is that the temperature anisotropy boosted tearing mode seeds explosive magnetic reconnection even in thicker initial current sheets more than an order of magnitude of the ion scale. We also show the explosive reconnection triggering via the instability boosted by the spontaneously generated temperature anisotropy by compression of thick current sheets. We discuss not only the physical process through which but also the border of a parameter space in which the nonlinear tearing mode evolves into explosive magnetic reconnection and show that the anisotropic ion tearing mode plays an important role for the triggering of explosive magnetic reconnection.
2/14(火) 16:00- 5F会議室 韓(M1)
Enhanced Radial Diffusion and synchrotron emission in Jovian Radiation Belt(JRB) driven by dawn-to-dusk electric field
概要: Radiation belt is a layer of energetic particles (~few tens MeV) held by geomagnetic fields, ranging up to several planetary Radii in distance. Jovian Radiation Belt, where in-situ measurement is limited, Jupiter's synchrotron emission(JSR) observation is a key tool for determining physical process therein, and various diffusion models have been proposed to account for observed JSR's short term and long term variations. Recently, Extreme ultraviolet spectroscope HISAKI has found evidence of solar-wind-driven convection electric field inside Jupiter's magnetosphere, which could possibly distort the electron's drift path and thus contribute partly to radial diffusion in JRB. I show the result of my calculation on redial diffusion driven by the estimated convection electric field and synchrotron emission variation therefrom.
2/14(火) 16:00- 5F会議室 土井(M1)
活動領域NOAA11692シグモイド足元近傍における磁場の非ポテンシャル性
概要: 太陽フレアは太陽大気中で起こる爆発的増光現象であり、黒点近傍に蓄えられた磁場の自由エネルギーが解放されることにより起こる。大規模フレア発生前には、軟X線でS字型または逆S字型のコロナループ(シグモイド)が観測されることがある。これは太陽大気中のねじれた磁束ロープの存在を示唆し、高い自由エネルギーを持ちフレア発生の可能性が高いことが推察される。シグモイド構造の形成には、理論的・観測的に、黒点の回転による磁束ロープの不安定化・磁気中性線付近でのシアやコンバージング運動による磁束の相殺といった光球表面での運動が寄与していると考えられてきている。本研究の対象とする活動領域NOAA11692では、2013/3/15 6:58(UT)にM1.1クラスのフレアが発生した。光球表面では、大規模フレア発生領域ではよく見られる複雑なデルタ型黒点ではなく、一対のN・S極からなる単純な双極磁場構造が形成されている。一方、コロナでは典型的なシグモイド構造がフレア発生の数時間前より見られる。しかしながらシグモイド構造形成を促進する光球表面での運動を顕著には確認できない。本研究ではまず、フレア発生前に磁場の自由エネルギーの蓄積がなされているかの検証を試みる。磁場の自由エネルギーの大小を評価する指標として、光球観測磁場とポテンシャル磁場との方位角・仰角の差(twist shear角・dip shear角) が挙げられる。ひので衛星/可視光望遠鏡により得られたフレア発生18時間前以降の空間分解能0.3″の光球表面磁場データを用いて、これらの角度差の空間分布を先行黒点暗部・半暗部において算出した。その結果、twist shear角・dip shear角が特徴的な値を持つ領域が暗部・半暗部内に存在することが分かった。この領域の位置の時間変化およびコロナループとの位置関係についての検討内容を本発表にて報告する。
2/14(火) 16:00- 5F会議室 長谷川(M1)
Flux Emergence and Reversed Rotation of the Sunspot associated with the X2.1 Flare in Active Region NOAA12297
概要: 我々は、活動領域NOAA12297におけるX2.1クラスフレア前後の磁場構造の,2015年3月10日から13日までの時間発展について研究した。本活動領域の主要な黒点は、3/10の0時ごろの段階では時計回りの回転をしていたが、3/10、22時ごろに現れた急速な磁気浮上によるシア流れによって反時計回りの回転が促された。磁気浮上が進むにしたがって黒点に発生するローレンツトルクも増加し、黒点の回転速度は上昇していき、最大で~2.5deg/hに達した。これに伴い、磁場の非ポテンシャル性を表す物理量(平均フォースフリーα)も増大して行った。さらに、黒点の逆回転は、大局的に正の磁気ヘリシティを持つ本活動領域に、大きな負の磁気ヘリシティをもたらしていた。3/11の16時ごろ、この黒点のすぐ北でX2.1クラスフレアが発生した。そのすぐ後、黒点の回転速度は減少を始め、3/13の0時ごろには時計回りに戻っていた。この解析結果から、我々は、Xクラスほどの巨大フレアの自由エネルギー蓄積には、黒点付近の磁気浮上に加えて、黒点の回転が重要な役割を持つことを主張する。またこの結果は、系のもつ大局的な磁気ヘリシティに対して逆向きの磁気ヘリシティがもたらされることが、フレアのオンセットに寄与する可能性を示唆する。
2/7(火) 16:00- 5F会議室 今井(M1)
月・惑星探査用飛行時間型質量分析装置の開発
概要: 月・惑星探査におけるその場の質量分析は、月・惑星の進化を理解する上で非常に重要であると考えられる。近年の太陽系探査において、NASAの火星探査機「Curiosity」やESAの彗星探査機「Rosetta」にはその場での元素分析を行うための質量分析器が搭載されている。しかし、ISASでは月・惑星の岩石試料の計測を目的とした質量分析器は未開発である。そこで我々は月・惑星の探査を想定したTOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質量分析器)の開発を進めている。また、本TOF-MSはその場K-Ar年代測定への応用も想定している。その場K-Ar年代測定により、クレーター年代学で生じる不確定性を減らし、火星の気候変動や月の進化の過程に制限を設けることができる可能性がある。 我々がTOF-MSの使用を検討しているその場K-Ar年代測定は、K濃度測定を行うLIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起絶縁破壊分光装置)とAr同位体測定行うTOF-MSから構成されている。着陸機搭載を想定すると、重量、サイズ(直径10[cm]、全長20[cm]程度)、電圧(数[kV])などに制約があり、その条件下でAr同位体測定が可能な質量分解能のTOF-MSを設計する必要がある。TOF-MSにおいて、イオンの初期位置や初期エネルギーのばらつきを抑え、高い質量分解能を得るために、我々はイオンを反射させるリフレクター方式のTOF-MSを採用し、先行研究で試作した試験モデルの改良を進めている。先行研究で試作した試験モデルでは、イオン源で生成したイオンの加速を行うイオン加速部は1段、リフレクトロンのイオン反射部は2段の構成であったが、最適な設計を目指した性能比較試験を行うため、本研究のモデルでは、加速部を2段、反射部を1段の構成に変更した。イオンの初期位置や初期エネルギーのばらつきに依らず飛行時間が収束することを条件にして求めた解析解から、装置の寸法や印加電圧等のパラメータを設定した。これらのパラメータを基に粒子シミュレーションソフトSIMIONを用いてArイオンの飛行時間と検出器への到達率を求め、前述のサイズ、印加電圧の条件において、Ar同位体計測に必要な質量分解能が達成可能である事を確認した。 本発表では、Ar同位体計測用のTOF-MSの開発状況を報告する。また、限られた容積で質量分解能を向上させることを目指した、反射を複数回行うマルチリフレクター型のTOF-MSの研究状況を報告する。
1/31(火) 16:00- 5F会議室 小美野(M2)
Venus Express搭載VIRTISによる金星夜面赤外画像を用いた風速場の研究
概要: 金星では高度44〜70 km付近に硫酸の液滴からなる雲層が存在し、全球を覆っている。それらの厚い硫酸の雲層を形成・維持する上では、子午面循環や惑星スケールの波動等大気の運動による硫酸の原材料の輸送が重要となるが、このような物質循環がどのような力学過程によってなされているかは明らかではない。また、金星には地球とは異なる大気現象が多く存在する。その一つが自転速度の最大で60倍の速度で大気が回転し、約4地球日で一周する「スーパーローテーション」と呼ばれる現象である。スーパーローテーションを形成・維持する上では角運動量を鉛直上向きに伝搬するメカニズムが必要であるとされるが、そのメカニズムは未だ解明されていない。 スーパーローテーションをはじめとする金星の大気現象や雲形成に関わる物質循環の理論的な解明を目指し、大気循環モデルGCMを用いた様々な数値実験が行われてきた。数値実験の中では大気波動等の擾乱成分が角運動量輸送や物質循環の根幹を担うことが示唆された。しかしそのような大気擾乱の観測は、雲頂(〜70 km)より低い高度ではほとんど行われていないため、数値モデルの検証は今後の課題とされている。 そこで、本研究では、Venus Express搭載の分光撮像装置VIRTISの近赤外画像を用いて雲追跡を行い、従来観測の乏しい雲層下部の風速場に含まれる擾乱成分について調べた。雲追跡は目視によるマニュアルのトラッキングと位相限定相関法のアルゴリズムを用いた自動トラッキングによる微修正を組み合わせた手法を用いて行った。期待される擾乱の大きさ(数m/s)はピクセル精度での雲追跡の誤差と同程度であると考えられるため、この手法にさらにサブピクセル精度で雲の移動先を指定する方法を評価し、加えた。サブピクセル精度の雲追跡の結果、この高度ではこれまで捕らえられてこなかった数千kmスケールの雲移動ベクトルの発散・収束や回転の様子が捕らえられた。そして、雲追跡により求められた風速ベクトルを用いて、金星大気の風速場の発散成分・回転成分を導出した。計算された発散成分と回転成分の振幅は同程度であるという結果が得られた。これは、Hayashi et al. (2015)によるAFESを用いた数値実験の結果と整合している。この結果から、金星大気力学においては、回転成分が発散成分に比べて一桁ほど大きい地球で行われているような回転成分を基本とする近似は不適当であることがわかった。
1/31(火) 16:00- 5F会議室 下川(M2)
One-dimensional modeling of Venusian clouds
概要: The Venusian cloud exists at 45-70 km altitudes and vertically form into three layers according to the observations, but it is still unsolved how this vertical structure is maintained. Previous models have used various tunable parameters in the models, and these are likely to have large uncertainties. In this study we developed a vertical one-dimensional model to parameterize the upward wind expressing meridional circulation and the eddy diffusion expressing the dynamics of the atmosphere such as turbulences and convections, to investigate the vertical transport processes forming and maintaining the cloud of Venus. In the models we calculated the time developments of the number densities of sulfuric acid and water in both gas and liquid phase at each altitude to examine the vertical distributions of cloud droplets. We considered as the physical factors controlling the vertical distribution of clouds the sedimentation of droplets and the chemical production of sulfuric acid at the upper cloud, as well as the upward wind and the eddy diffusion. Especially the latter two factors were parameterized: the constant air flux of the upward wind and the eddy diffusion coefficient were varied. The results of the calculations were compared to the vertical distributions of the cloud particles observed by Large Cloud Particle Spectrometer onboard Pioneer Venus (Knollenberg and Hunten, 1980), and the cloud top altitude and the cloud scale height observed by VeRa radio occultation experiments and VIRTIS observations onboard Venus Express (Lee et al., 2011). We showed that the large eddy diffusion coefficient over 100 m2 s-1 is necessary and convection should occur in the middle cloud, being consistent with the weak static stability in this region observed by VeRa experiments (Tellmann et al., 2009), and that both the eddy diffusion and the upward wind should be weaker than the previous estimates at the cloud top with the timescale of vertical transport of around 100 days.
1/31(火) 16:00- 5F会議室 奈良(M2)
雲追跡手法を用いた金星雲層における物質輸送の研究
概要: 金星探査機Venus Expressに搭載されていた撮像装置VMCにより得られた、紫外の雲画像を用いて、相互相関法により雲頂の風速場を推定し、濃淡模様との比較により紫外吸収物質の分布を支配する力学過程を調べた。ここでは特に、ローカルタイムに固定した輝度分布と数日周期で伝播する輝度分布に見られる惑星規模の濃淡に着目する。ローカルタイムに固定した輝度分布を調べると、スーパーローテーションに近い速度で伝播することが知られているY字模様に似た構造が、太陽直下点から午後側にかけて存在することが分かった。これは熱潮汐波に伴う太陽直下点付近の上昇流と正午付近の中緯度における極向きの流れによる吸収物質の移流により説明できる。さらに、ローカルタイムに固定されずに伝播する擾乱について、風速場と輝度変動を周期解析した。その結果、赤道域と中緯度の間で輝度の変動周期は同程度であるものの、背景風に対する相対的な伝播方向は赤道域では西向き、中緯度では東向きであることがわかった。また、中緯度における輝度変動と南北風の位相関係は、背景風に対して東向きに伝播する南北風の場によって吸収物質が輸送されると考えると説明できることがわかった。ここから示唆されるY字模様の形成過程は、赤道域においてケルビン波によって下層から供給された吸収物質が、周期の等しいロスビー波と、ハドレー循環によって極向きに移流され、さらに高緯度ほど角速度の大きい中緯度ジェットによって西向きに流されることにより、緯度線に対して傾いた帯状構造が形成される、というものである。
1/31(火) 16:00- 5F会議室 武藤(M2)
Expressの分光撮像データを用いた金星雲頂のpolar ovalの研究
概要: 金星は主に硫酸からなる反射率の高い雲に覆われており、可視波長で金星を観測するとほぼ模様が存在しない。一方、紫外波長で観測を行うと未知の紫外吸収物質の影響により様々な模様が観測できる。金星の可視波長におけるアルベドは0.8程度であり、太陽光のエネルギーが可視領域において大きいことを考えると可視領域においての太陽光吸収は金星の熱収支にとって重要であると考えられる。 金星において可視波長でも観測されている数少ない模様の一つに、極域に存在するpolar ovalがある。Polar ovalは可視から紫外にわたる波長で観測されており、ほかの紫外波長で観測されている模様とは異なっている。金星において可視波長で顕著な吸収を見せるpolar ovalを調べることで雲層の光学特性を支配する吸収物質を分布させる物理プロセスへの手がかりとなると考えられる。しかしpolar ovalの全体形状や形状の時間変化、光学特性はほとんど調べられていない。 そこで、本研究ではVenus Expressに搭載されているVMCの画像を用いpolar ovalの全体形状の復元を試み、同じくVenus Expressに搭載されているVIRTISの画像を用いることでpolar ovalの光学特性の解明を試みた。VMCの画像を用いてpolar ovalの東西移流を考慮することにより、日照側でしか観測できないpolar ovalの全体形状の復元に成功した。それによりpolar ovalは細長い形状と丸い形状を行き来していることを発見した。この形状変化の主な周期は200?350地球日であり、この周期は金星の1年、1日、自転周期のいずれとも異なっており、polar ovalの形状の変化は非線形の力学的なプロセスが関わっていることが示唆される結果となった。また、VIRTISのデータの解析によりpolar ovalでは紫外?近赤外の領域にかけて広くアルベドの低下が起きていることがわかった。これはpolar ovalを生成している吸収物質が未知の紫外吸収物質とは異なり広い吸収帯を持つことを示唆する結果である。また、簡単な熱収支の計算を行うことによりpolar ovalでの太陽光吸収量の差によりpolar oval部分で局所的に温度上昇が起こりうることを示した。
1/30(月) 16:00- 6F会議室 須藤(M2)
将来ミッションに向けた熱的・超熱的イオン分析器の開発
概要: 内部磁気圏プラズマの供給源の一つとして電離圏からのイオン流出現象が知られている。このとき熱的(数eV)なエネルギーを持つ電離圏イオンは磁力線に沿って数十eV程まで加速されていることが過去の衛星観測から分かっているが、その加速機構は未だ解明されていない。この理由の一つとしては数十eV以下の熱的・超熱的イオンの直接観測を行う場合、衛星の帯電電位が粒子軌道に影響を与えてしまい観測自体が容易でないという問題が挙げられる。これらの影響を抑制するために、観測器を衛星から伸展したブーム上に設置し観測器の筐体電位を制御する方法が考えられる。したがって我々は、ブーム上に搭載可能な小型軽量化を重視した熱的・超熱的イオン分析器の開発を行っている。 本研究では過去に今村[今村,2015]が行った熱的・超熱的イオン分析器の基礎設計をもとに、実際に組み立てることの出来る構造や検出部の設計および実機の開発を行った。本機器はエネルギー分析部と質量分析部の2つから構成されており、それぞれイオン粒子のエネルギー・電荷比と質量・電荷比を計測することができる。エネルギー分析部には、360度の平面状視野を持ち各粒子のエネルギー・飛来方向が同定可能なトップハット型静電分析器の構造を採用している。したがって本機器はスピン衛星に搭載することで分析器周辺の全視野を網羅することが可能である。一方、質量分析部にはKaguyaなどに搭載実績を持つ飛行時間分析型質量分析器を採用している。これらの設計においては、粒子軌道シミュレーションを用いて入射粒子の飛行軌道に影響が生じない内部機構や部品形状を模索することで、十分な性能を持つと予測される設計を成すことができた。また検出部においても、放電等のリスクを考慮しながら開発を行った。 結果として本研究では、アナライザ部の大きさが100φ×60 mm程度、重量が1kg程度の小型熱的・超熱的イオン分析器を開発することができた。本機器は真空チャンバーおよび超熱的イオンビームラインを用いた性能評価試験も実施しており、要求として定義した値を満たす十分な観測性能を持っていることを確認することができた。本機器は技術実証試験を兼ねて2017年度冬季に極域観測ロケットSS-520 3号機へ搭載される。
1/30(月) 16:00- 6F会議室 長谷川(M2)
原始惑星系円盤における中心面近傍でのストリーミング不安定性によるダスト集積と微惑星形成
概要: 惑星系の形成とは,原始惑星系円盤と呼ばれるガス円盤の中で起こる固体物質(ダスト)のサイズ進化の過程である.惑星系はその形成の途中で微惑星と呼ばれる ~km サイズの段階を経たと考えられているが,この微惑星の形成過程は未解明である.近年の観測により,惑星系はこの宇宙において普遍的に存在していることが明らかになった.微惑星も様々な星の周りで形成されているはずであり,その事実を自然に説明できるようなモデルが必要である. 今回はストリーミング不安定性 [Youdin & Goodman 2005] と呼ばれる二流体不安定性による微惑星形成モデルに注目した.この不安定性は,局所的にダストの空間密度を上昇させるため,重力的に束縛された高密度のダスト塊を形成することが知られている [Johansen et al. 2012].また,ストリーミング不安定性が十分に密度の高いダスト塊を形成する条件は Carrera et al. [2015] や Yang et al. [2016] によって部分的に調べられている. 本研究では,これらの先行研究とは独立に,ダスト-ガスの二成分系のシミュレーションを行い,ストリーミング不安定性が十分に密度の高いダスト塊を形成する条件を改めて整理した.さらに,どの程度効率的にダストが集積しているかという点に注目した解析を行った.まずダスト-ガスの面密度比が 0.01 の系では,ダスト塊の総質量が惑星系の形成に十分な量になるためには,ダストが τ_s=0.1 程度まで成長していることが必要だと分かった.一方,ダスト-ガスの面密度比が 0.04 の系においては,τ_s に依存することなくより強い濃集が起こった.すなわちダスト-ガスの面密度比が 0.04 の場合は,τ_s=0.05 程度でもダスト塊の総質量が惑星系の形成に十分な量になる. 今回の結果は,ダスト-ガスの面密度比 0.04 が実現された場合は,ダスト成長や大局的な濃集などの複雑な過程を経なくてもストリーミング不安定性によって十分な量の微惑星形成が可能であることを示唆しており,微惑星形成が普遍的に起こっていたであろうという事実と整合的である.
1/30(月) 16:00- 6F会議室 星(M2)
地球磁気圏昼側リコネクションライン位置の季節及び太陽風依存性
概要: オーロラ活動や磁気嵐など地球周辺の宇宙環境における擾乱現象は、太陽風起源のエネルギーによって駆動される。このエネルギー流入において最も重要な過程は、太陽風中の惑星間空間磁場 (IMF) と地球磁場がつなぎ変わる磁気リコネクションである。IMFが南向き、あるいは朝夕成分が支配的であるとき、磁気リコネクションが起こる領域は昼側磁気圏境界面の磁気赤道付近にライン状に広がることが知られている。この領域は、Xラインと呼ばれる。IMFとつながった地球の磁束は、太陽風と共に磁気圏の夜側に輸送され、夜側の磁気圏内に蓄積される。このように、磁気圏内へ流入する磁束量は、昼側で起こる磁気リコネクションの効率によって決定される。磁気リコネクションの効率は、磁気リコネクションが起こる時の境界条件に依存すると予想される。すなわち、Xラインの位置が変化すると、Xラインにおける境界条件の変化によって磁気リコネクションの効率が変化すると考えられる。この結果、地球磁気圏内へ流入する磁束量が変化する可能性がある。すなわちXラインの位置は、磁気圏内へのエネルギー輸送において重要なパラメータとして考えられる。Xラインの位置は、近年のモデリングや観測等によって、太陽に対する磁極軸の傾きであるダイポールチルトや太陽風の効果で磁気赤道付近から南北にずれることが指摘されている。しかしながら、統計的な観測に基づいたXラインの位置は未だに明らかになっていない。そこで、磁気リコネクションによって加速されたプラズマ流であるジェットの統計解析を行い、IMFが南向きの時のXラインの位置に対するダイポールチルト及び太陽風の影響を調べた。解析には、昼側低緯度で観測を行うTHEMIS衛星の約10年分のプラズマ及び磁場観測データのうち、磁気地方時が10時から14時の昼側で観測されたデータを用いた。 まずジェットの候補として、磁気圏境界面付近で境界面内の速度がシースのアルフベン速度程度の150 km/sを超える速度を持つイオン流を選んだ。次に、シースの流速を引いた観測値とジェットの速度の理論値を比較するWal?nテストを行い、計715例のジェットを同定した。Xラインの位置は、ジェットの向きと位置の関係から推定した。これは、Xラインの北側では北向きのジェット、Xラインの南側では南向きのジェットが観測されることを前提に、北向きジェットと南向きジェットの発生位置を二分する直線がXラインと等価であると考え、この直線を求める判別分析によってXラインの位置を推定した。この結果、Xラインの位置はダイポールチルトが存在すると冬半球側へ最大で地球半径の約6倍の距離ずれることが判明した。さらに、IMFの太陽-地球向き成分であるBX太陽-地球向き成分の効果によって、地球半径の約2.5倍の距離ずれうることが判明した。特に、昼側低緯度のXラインの位置に関するIMF B_Xの効果は、本研究で初めて観測的に明らかになった。この結果から、ダイポールチルトが存在する時、あるいはB_X成分が卓越する南向きIMF時はXラインの位置がずれることで、昼側の磁気リコネクションの効率が低下することが示唆された。 以上の結果は、南向きIMF時の昼側磁気リコネクションによる磁気圏内へのエネルギー輸送効率は、ダイポールチルトが大きいときに低下することを示唆する。これは、ダイポールチルトの効果が大きい時に地磁気活動度が下がるという過去の観測結果の原因が、Xラインの位置がダイポールチルトに依存していることにあることを示唆する。
1/24(火) 16:00- 5F会議室 川畑(D1)
He I 10830?観測による活動領域上空の彩層磁場分布
概要: 太陽フレアはコロナ中に蓄えられた磁気エネルギーを急速に解放する現象として知られている。磁気エネルギーは太陽光球における磁気浮上やガスの水平方向運動によって蓄えられると考えられている。これらの光球の運動に応答して上空での磁場構造やエネルギー分布がどのように変化するかを定量的に評価することは、フレア発生とエネルギー蓄積過程の関係を理解する上で非常に重要である。光学観測のみでは3次元磁場情報を得るのは困難なため、現状では力学的平衡状態でローレンツ力が0となるという条件(フォースフリー条件)を満たすと仮定したモデリングが良く行われている。しかしこのモデリングには観測から与える境界条件(光球磁場)がフォースフリー条件を満たしていないという問題点が存在している。 本研究ではこの問題点解消の第一段階として直接観測によってフォースフリー条件を満たす彩層の磁場分布を導出することを試みた。観測データはスペインのテネリフェ島に設置されているGREGOR望遠鏡によるHe I 10830?のデータを用いた。先行研究では光学観測から彩層磁場を導出する際ゼーマン効果が多く用いられていたが、Trujillo Bueno et al. (2007)では原子偏向の効果を考慮することの重要性が指摘されている。我々の解析の結果、原子偏向を考慮するか否かで導出された彩層磁場が大きく変わることが明らかになった。本発表では導出された磁場が異なる結果になった原因や直接観測とモデリングの結果の比較についても議論する。
1/24(火) 16:00- 5F会議室 坂本(M2)
電離圏スポラディックE層内の電子温度構造に関する研究
概要: スポラディックE層は突発的且つ局所的に現れる高密度電子層であり,古くから研究・観測がされてきた.その生成機構についてはwind-shear理論が一般に受け入れられているが,この理論は電子密度の集積過程を説明するものの内部の熱エネルギー収支についてはほとんど情報を与えない.更に,電子温度は電離圏の熱エネルギー収支を議論する上で重要なパラメータであるが,過去にはスポラディックE層内での十分に信頼性のある電子温度観測データは限られた報告例しか存在していない.したがって内部での熱エネルギー収支に関する議論は非常に少ない. 我々は,平成26年8月に打上げられた観測ロケットS-520-29号機搭載のラングミュアプローブの観測データをもとに,スポラディックE層内の電子密度・温度の空間構造の研究を行なってきた.その結果,スポラディックE層内において,電子温度は外部との境界付近から中心に向って温度が次第に減少していく傾向を明らかにした.引き続いて,この空間構造がどのようなメカニズムによるものかを議論するため,電子に関するエネルギー方程式を使用して密度が変化した場合の電子温度分布についての数値計算を行っている.この計算では,高度100kmにスポラディックE層が存在すると想定し,この層内で最大電子密度が背景に対して10倍,20倍,30倍に増加した場合の電子温度分布を求めた.その結果,電子密度が高くなるにつれて,背景に対する電子温度の減少幅が徐々に下がっていく傾向が見られたが,その減少幅は観測値では約450Kであるのに対し,計算値では約2.4Kで差が大きい.そこで,数値計算で使用している多くのパラメータの中で,どの値を変化させれば電子温度減少幅が大きくなるかについて,検討を行なった.今回の発表ではこれらの検討結果についてのまとめを行う.
1/17(火) 16:00- 5F会議室 佐藤(教授)
Dynamics and structure of the clouds of Venus studied with Akatsuki IR2
概要: IR2 onboard Akatsuki is a cooled near-infrared imager designed to study Venus atmosphere by utilizing the transparency windows (1.735, and 2.26 um) and absorption bands of CO (2.32 um) and CO2 (2.02 um). Since the successful orbit insertion of December 2015, IR2 acquired both night-side images (1.735, 2.26, and 2.32 um) and day-side images (2.02 um) of Venus with high spatial resolution and good temporal coverage, allowing us to study the atmospheric motion as wel as the changes in the clouds. In this seminar, animated IR2 images will be shown to give audience how complecated the dynamics of Venus atmosphere is. In addition to the overall "super rotation", numerous waves and vortices are seen in such movies. In the second half of seminar, preliminary results of cloud-top altimetry with IR2 2.02-um data will be presented. Strength of CO2 absorption at each pixel is converted to cloud-top altitudes through the radiative transfer analysis. The methodology and near-future works will be discussed.
1/17(火) 16:00- 5F会議室 Tasker(准教授)
Can the effects of planetesimal accretion be observed? (And what do we mean by planet habitability?)
概要: Exoplanets are frequently found on short orbits close to their host star. Different explanation exist for how a planet could orbit in such a location, including inward migration from cooler regions of the planetary system where larger worlds are easier to form. Planets that have migrated inwards are expected to be in resonance with neighbouring planets within the same system. However, data from the Kepler Space Telescope implies that resonant orbits are avoided. One explanation is that migration leads to strong planetesimal accretion that can break resonant orbits. This work performs a simple calculation to ask if the effects of such accretion can be seen in the planet’s atmosphere. The second part of the talk will discuss metrics used to rank exoplanets for follow-up studies by instruments such as the JWST. Much emphasis has been placed on the prospect of detecting an Earth-like habitable planet. But what can we really say about these discoveries with the information we have?
1/10(火) 16:00- 5F会議室 疋田(本郷M2)
極端紫外光観測に基づいたイオプラズマトーラスのエネルギー収支に関する研究
概要: 木星の内部磁気圏では、衛星イオから放出された火山ガスを起源とするプラズマが木星磁場により共回転しており、イオプラズマトーラス(IPT)を形成している。ボイジャー1号のその場観測の結果により、IPTに含まれる電子は、数eVの背景電子と数百eVの微量の高温電子により構成されていることが示された。 電子衝突でイオンが励起されることにより、IPTは主に極端紫外の波長域の輝線を放出している。IPTの発光エネルギーの主な供給源の一つは、木星磁場により共回転速度に加速されたイオンが背景電子に与えるエネルギーである。一方、先行研究では、高温電子も発光エネルギーの重要な供給源であることが示されている。高温電子のエネルギーは、クーロン衝突を介した背景電子の加熱、および衝突励起によるイオンの発光を通して消費されている。 本研究では、ひさき衛星によって取得された分光観測データにスペクトル診断と呼ばれる手法を用いることにより、イオンと電子の密度と温度を求めた。この結果から、IPTの発光エネルギーの供給源における、高温電子による衝突励起の占める割合を求めた。 また、ひさき衛星の観測データを用いた近年の解析により、オーロラの増光に伴ってIPTが増光する現象が確認されている。これは中間磁気圏から内部磁気圏へのプラズマの輸送を示唆する重要な現象である。本研究により、この現象の発生時の、高温電子の密度の増加、ならびに衝突励起の寄与の増加が確認された。
12/20(火) 16:00- 5F会議室 加藤(D1)
電子反射法を用いた月磁気異常測定
概要: 現在の月は全球的な磁場を持たないことが知られているが、磁気異常領域と呼ばれる局所的に強い磁場を持つ領域の存在が確認されている。月表面に存在する強い磁気異常によって、太陽風は月面に衝突することを妨げられる。月磁気異常は月の内部の進化や月面上空のプラズマ粒子の分布などと重要な関係を持つとされ、月表面の磁気異常領域が発見された1960 年代以降、人工衛星による観測や計算機シミュレーションなどで研究が行われている。Apolloによる月磁場の観測により、盆地など月地形の特徴と比較的強い磁気異常領域に相関があることが示唆された。さらに最近の観測では、弱い月磁気異常を含めれば月のほぼ全域に渡って固有磁場が存在していると考えられている。 月磁気異常領域を測定する方法の1つとして、電子反射法による測定方法がある。電子反射法とは、磁気ミラー効果を利用して月表面磁場を求める方法である。月磁気異常の存在によって、月表面に向かう太陽風電子が磁気ミラーにより反射され衛星高度へと戻ってくる。この反射電子のピッチ角分布を測定することで、月表面磁場強度を推定することができる。この方法は衛星高度に依らずに月表面磁場強度を測定でき、磁力計のみの結果からでは測定できない弱い磁気異常領域まで測定ができる。月探査衛星「かぐや」に搭載されたプラズマ・磁場観測装置MAP-PACE, LMAG の観測データを用いることで、電子反射法計測を行った。電子反射法による月表面磁場の測定は、ApolloやLunar Prospector衛星においても行われてきたが、かぐや衛星の観測データはそれらよりも高い時間分解能で観測されており、他の衛星観測データよりも詳細な磁場構造の解明が可能となっている。本発表では、このかぐや衛星観測データを用いて作成した高空間分解能での月磁場マップを紹介する。
11/29(火) 16:00- 5F会議室 大井(本郷M2)
Flux Rope Formation and Eruption in a Quadrupolar Active region holding a ?-sunspot
概要: This study aims to probe the condition for the formation and the ascent of a flux rope above a delta spot held by a quadrupolar active region. It is suggested that most of the largest flares in the Sun are produced in active regions hosting delta-sunspots (Sammis et al., 2000). The formation process of delta-sunspots is not clearly understood but some of them may be formed by the merging of two beta-sunspots, which produces a quadrupolar active region. Toriumi et al. (2014) and Fang & Fan (2015) showed that the quadrupolar active region was successfully reproduced in their MHD simulation only when the two merging bipoles were magnetically connected with each other in the convection zone. However, magnetic flux rope formation/eruptions were not found in their simulations. Therefore, in this work, we aim to propose a theoretical model which produces not only the quadrupolar active region but also the magnetic flux rope. As a result of MHD simulation, we succeeded in reproducing a flux rope above the polarity inversion line, when the radius of the flux tube was 1.4 times larger than that of Toriumi et al. (2014) and the twist parameter was 1.75 times larger. Also, we found that the flux rope could reach the upper boundary when reconnection-favored coronal magnetic field was introduced above the developing active region. In this presentation, we will discuss the formation process of the flux rope and physical conditions for its ascent.
11/29(火) 16:00- 5F会議室 鈴木(本郷M2)
木星磁気圏における 擾乱の観測的研究
概要: 木星磁気圏では、惑星自転との共回転と衛星イオによる定常的なプラズマ供給によって、Vasyliunas cycleという対流が卓越していると考えられている。Vasyliunas cycleの全貌を観測的に明らかにするために、木星オーロラや電波のリモート観測をその場観測と組み合わせることで磁気圏の異なる領域で発生する現象を関連付けるという研究がなされてきた。その結果、磁気圏尾部でのリコネクションや中間磁気圏におけるInjection、オーロラの増光などの現象が伴って起こることが明らかになってきた。しかし、中間・外部磁気圏における現象と内部磁気圏における現象を関連付けた研究は少ない。木星の内部磁気圏にはイオプラズマトーラス(IPT)と呼ばれる特徴的な構造があり、IPTの光学観測は内部磁気圏における擾乱の指標となる。 そこで本研究では、ひさき衛星に搭載された分光撮像装置EXCEEDにより得られたオーロラとIPTの極端紫外発光の同時観測データの解析により、両者の増光の関連について調査した。その結果、ほとんどのオーロラ増光現象にIPTの増光が伴っていることを突き止めた。また、IPTに流入した高温電子の温度を導出する手法を考案し、流入する電子の温度が数100 eVであることを明らかにした。この温度は、内部磁気圏における交換型不安定によって高温電子がIPTに流入したと仮定すれば説明出来るため、今回の結果は中間・外部磁気圏での擾乱と内部磁気圏における交換型不安定が関連する現象であることを示唆している。
11/15(火) 16:00- 5F会議室 岩本(本郷M2)
large-amplitude electromagnetic precursor waves excited in relativistic shocks「相対論的衝撃波における大振幅電磁波」
概要: Many particle acceleration mechanisms have been suggested to explain the origin of extragalactic cosmic rays, however, a wakefield acceleration has not been fully understood. The wakefield mechanism has lately been applied to astrophysical plasmas. Recently Hoshino demonstrated the efficient particle acceleration by the wakefields generated by the ponderomotive force of the large-amplitude electromagnetic waves in relativistic shocks by using one-dimensional simulation. However, the nonlinear wave-wave couplings of the precursor waves may appear in multi-dimensional system, and the precursor waves might be damped. In this study, we discuss the precursor waves in relativistic shocks by using two-dimensional simulation, because the previous one-dimensional simulation could not investigate the wave coherency which is required for the ponderomotive force, and because the efficiency of the wakefield acceleration is sensitive to the nature of the precursor waves. We found the amplitude of the precursor waves are almost same between one- and two-dimensional simulations for “sigma parameter” > 0.1-0.01, which is the ratio of the Poynting flux and plasma flow energies. For “sigma parameter” < 0.1-0.01 the precursor waves in two-dimensional propagation become weak compared with that in one-dimensional propagation. We reports our results by paying special attention to the wave coherency.
11/15(火) 16:00- 5F会議室 市村(本郷M2)
Non-kinematic flux-transport dynamos including the effects of diffusivity quenching
概要: Aim of the solar dynamo theory is explaining features of the periodic magnetic activity of the sun (11-year cycle). The flux-transport dynamo (FTD) is known as one theoretical dynamo model which reproduces features of the solar magnetic activity successfully. We study, in a framework of the non-kinematic regime, the influence of the “diffusivity-quenching” effect on FTD by numerical simulations. Turbulent magnetic diffusivity is quenched when strong magnetic fields suppress the motion of turbulence. This phenomenon is called as diffusivity quenching. We have found that toroidal magnetic field strength is amplified up to around 1.5 times in the convection zone by diffusivity quenching. This amplification is much weaker than that of kinematic cases because of the Lorentz force feedback on differential rotation. Although amplified magnetic fields lead to stronger Lorentz-force feedback on velocity fields, our results show that meridional flow transports magnetic fields equatorward near the base of the convection zone, which is the one of the essential processes of FTD.
11/15(火) 16:00- 5F会議室 武藤(M2)
Venus Express搭載VIRTISデータを用いた金星極域のアルベド分布の研究
概要: 金星の金星には高度50km?70kmに雲層が常時存在しており、この雲層において太陽からのエネルギーをほぼ吸収していることが分かっている。金星の大気運動を理解する上では雲層高度における太陽光吸収物質の振る舞いを理解することが必要となる。過去に、Titov et al.(2012)によって365nmにおいてはアルベドに日変化があることがわかっており、この原因としては太陽光加熱による硫酸ヘイズの消失などが考えられている。しかし、このアルベドの日変化は赤道域でしか報告されておらず、また波長も未知の吸収物質による太陽光吸収が強く表れる365nmのみで報告されているばかりである。 本研究では、Venus Expressに搭載されている可視近赤外分光撮像装置VIRTISの画像を用い、これまで太陽光吸収物質注目されてこなかった可視波長においてのアルベドの日変化を調べた。観測機の制約によりVIRTISのデータは金星極域に限られているが同じくVenus Expressに搭載されているVMCに比べノイズの少ないより精度の良い画像を得ることができる。これにより、VIRTISのデータを用いることにより吸収物質がほとんど存在しておらずアルベドの変化に乏しい可視波長においてもアルベドの日変化を調べることが可能である。本研究により太陽光の影響が少ないと考えられてきた極域においても紫外、可視の両波長においてアルベドの日変化が確認できた。
11/14(月) 16:00- 5F会議室 星(M2)
昼側磁気圏境界面における磁気リコネクションライン位置の季節及び太陽風依存性
概要: 太陽風の質量、運動量、エネルギーが地球磁気圏内へ流入する最も重要な過程の一つとして、昼側磁気圏境界面の電流層内で惑星間空間磁場と地球磁場がつなぎ変わる磁気リコネクションがある。この現象が起こる領域は磁気圏境界面上にライン状に広がる事が知られており、Xラインと呼ばれる。磁気リコネクションの発生条件やXラインの存在する位置は、太陽風流入の効率を変化させうるものの、統計的な描像は未だに明らかになっていない。そこで、THEMIS衛星観測データを用いて、昼側低緯度の磁気圏境界面において、磁気リコネクションに伴うジェットの統計解析を行い、Xラインの存在位置を調べた。 THEMIS衛星は2007年の打ち上げ以来、2010年まで同一構成の5機、2010年以降は2016年現在まで、月周回衛星となった2機を除いた3機で地球磁気圏の低緯度領域を編隊観測を行っている。この期間のうち、磁気地方時が10時から14時までの昼側の範囲で観測された低エネルギーイオン、及び磁場データを用いた。さらにこのうち、衛星が磁気圏側からシース側へ、又はその反対向きに完全に境界領域を通過し、かつ磁気圏境界面付近でシースの流れに比べ境界面に沿って高速のイオン流を観測したイベントを選び、ワレンの関係式を満たすイベントを磁気リコネクションに伴うジェットと同定した。ただし、イベントの前後で太陽風動圧、太陽風磁場が安定しないもの、またイオン流速の反転に伴って全圧が数nPa上昇するなど、複数Xラインが運動していると思われるイベントは除いた。以上の解析で715例のジェットを同定した。磁気リコネクションジェットの発生位置と向きから、Xラインは季節によらず磁気赤道付近に形成され、季節によって太陽直下点から約5地球半径ほど冬半球側にシフトする事が示唆された。さらに、惑星空間磁場の地球-太陽向き成分が、Xラインのシフトに寄与する事が分かった。
11/14(月) 16:00- 5F会議室 須藤(M2)
人工飛翔体搭載用 熱的・超熱的イオン分析器の開発
概要: 地球磁気圏には数eV程度の熱的・超熱的と呼ばれる低エネルギー粒子から数MeVを超える高エネルギー粒子まで、幅広いエネルギー帯のプラズマ粒子が同時に存在している。これらの粒子は電磁場を介して相互作用し、加速や輸送を経て生成・消滅することで多様なプラズマ環境を形成している。例えば、内部磁気圏には電離圏起源のプラズマが存在することが知られており、磁力線に沿って電離圏プラズマが磁気圏へと流出する現象「polar wind」が衛星観測によっても確認されている。このとき、電離圏では1eVほどであった粒子が高高度では数十eVほどにまで加速されている。しかし、その加速機構は未だ解明されていない。この理由の一つとして、数十eV以下の熱的・超熱的イオンの直接観測を行う場合、衛星の帯電電位が粒子軌道に影響を与えてしまい、観測自体が容易でないという問題が挙げられる。 内部磁気圏において人工衛星は約5?10Vほどに帯電することが知られている。このとき衛星は熱的・超熱的イオン(0.1-10 eV)の加速電位と同等以上の電位を持っているため、それらを衛星周辺で観測することは非常に難しい。したがってこれらの影響を抑制するために、観測器を衛星から伸展したブーム上に設置し、観測器の筐体電位を制御する方法が考えられる。この場合、観測器は小型軽量である必要がある。そのため我々は、小型化を重視した熱的・超熱的イオン分析器の開発を行っている。 一般的なイオン分析器はエネルギー分析部と質量分析部の2つの部分から構成される。本機器のエネルギー分析部には、360度の平面状視野を持ち各粒子のエネルギー・飛来方向が同定可能なトップハット型静電分析器の構造を採用した。本機器はスピン衛星に搭載することで分析器周辺の全視野を網羅することが可能である。したがって、本機器によって得られたデータを解析することでイオン粒子の3次元速度分布を取得することができる。一方、質量分析部にはKaguyaなどに搭載実績を持つ飛行時間分析型質量分析器を採用した。我々は、入射イオンの軌道シミュレーションをもとにこれらの構造を小型化することで、アナライザ部の大きさが100φ×60 mm程の熱的・超熱的イオン分析器を設計した。粒子シミュレーション結果から、本機器は電離圏イオン観測に十分な感度や分解能を持つことが分かっている。また、本機器で使用する検出器は紫外線に対する感度も持つため、イオンの入射口や静電分析部には紫外線への対策加工も施されている。 本機器は技術実証試験を兼ねて極域観測ロケットSS-520 3号機への搭載が予定されており、その打ち上げに向けた開発が進められている。現在は上記の基本設計をもとに内部機構の詳細設計が完了し、実機の開発を行っている。 本発表では、熱的・超熱的イオン分析器の詳細な設計および現在の開発状況について述べる。
11/14(月) 16:00- 5F会議室 小美野(M2)
Venus Express搭載VIRTISの画像データを用いた金星夜面の雲移動ベクトルと雲分布の関係
概要: 金星はその全球が分厚い硫酸の雲で覆われており、それらの雲の生成や維持の上では、小規模な乱流、雲層内の対流、惑星スケールの波動、子午面循環など様々な大気運動の寄与が想像されるがそのメカニズムは未だ解明されていない。このような雲の生成や大気循環のメカニズムに対する理解を深める上で、金星大気における雲構造とその周辺における風速場を解明することが重要であるが未だ不十分である。 本研究では、欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されていた可視近赤外分光撮像装置VIRTISの分光画像データを用いて雲追跡を行うことにより金星大気における雲の分布と風速の分布の関連性について調べている。具体的には、金星の分厚い雲を通って出てくる「大気の窓」と呼ばれる波長である1.74μmの画像データを用いることで、金星夜面における大気運動について調べている。近赤外夜面画像では下層大気からの熱放射を光源として雲量の分布が可視化される。時間的に連続したこのような画像を用いて、1枚目と2枚目の画像間で位相相関を計算することにより画像間で濃淡の特徴が一致している部分を抽出し、その移動量を二枚の画像の時間間隔で割ることにより風速を導出する。また、測定をサブピクセル精度で行うため、位相相関のピークを同定する方法を評価する。
11/10(木) 16:00- 5F会議室 下川(M2)
鉛直 1 次元モデルを用いた金星の雲形成の研究
概要: 硫酸を主成分とする金星雲は高度 45~70 km に存在し、高アルベドであることから金星気候に大きく影響を与える。また高度 70 km 付近においてスーパーローテーションによる東西方向の風速がピークを持つ上、太陽光を吸収した雲層で励起される熱潮汐波が大気の運動量伝播を担っている。よって、金星の雲構造がどのような物理過程により調節されているかを知ることは金星の大気力学を理解する上で重要であり、また物理過程が引き起こす鉛直輸送がどのように雲の鉛直構造に影響するかについてはほとんど調べられていない。 本研究では Imamura and Hashimoto (1998, 2001) におけるモデルを基に、硫酸の光生成化学を考慮した鉛直 1 次元における雲形成モデルとして高度 40~75 km における硫酸および水の数密度の時間発展を液相と気相それぞれについて高度ごとに計算し、液相である雲成分の高度分布を調べた。数密度を変化させる物理的要素については、液相の重力沈降、渦拡散、雲層上部での大気化学を想定した。また、子午面循環を考え、鉛直風として赤道域での上昇流を導入した計算も行い、上昇流を含まない計算結果と比較した。特に本研究ではパラメタ依存性に着目し、各物理的要素の値を変化させたときの雲形成の様子について詳しく調べた。 初期状態として、各物質の大気に対する体積混合比が下端を除く全高度で一様になるように与え、各物理的要素を考慮した場合と除いた場合についてそれぞれ計算を行った。上端では混合比の勾配をゼロとし、下端では 電波掩蔽観測による硫酸蒸気や地上観測による水蒸気の観測結果を境界条件として用いている (Knollenberg and Hunten, 1980) 。得られた気相および液相の分布は、 Imamura and Hashimoto (1998) による計算結果や Kolodner and Steffes (1997), Oschlisniok et al. (2012) による観測結果と比較し、雲層下部での気相分布については観測結果との符合が得られた。雲層上部ではスケールハイトの値を求め、 Lee et al. (2011) による観測結果と比較し、低中緯度で概ね近い値であった。また、渦拡散係数の値のみを変化させた場合の計算も行った結果、雲層下部では大気運動がもたらす渦拡散の程度が小さく、中〜上部では大きいことが示された。加えて、渦拡散係数を K, 鉛直風速を w とすると、鉛直スケール L に対する拡散及び鉛直風の時間スケールはそれぞれ L*L/K, L/w と表されることから、 K や w を変化させた際の時間スケールについても考察を行っている。
11/10(木) 16:00- 5F会議室 奈良(M2)
Venus Express/VMCの雲画像を用いた金星雲層の風速場と物質輸送の研究
概要: 金星の雲形成やアルベドの分布に関わる物質循環を理解するうえで、雲層内の3次元的な運動やそれに伴う太陽光吸収物質の輸送を把握することが重要である。金星昼面においては、これまで未同定太陽光吸収物質の空間分布を捕らえる紫外波長で観測された画像が雲の運動の研究に用いられてきたが、太陽光により加熱された大気によって引き起こされる物質循環を理解するためには、複数波長での撮像による複数高度の情報と、雲そのものの空間分布の情報が必要である。Hueso et al. (2015) は欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されてた分光撮像装置VIRTISの観測結果を用いて複数高度の大気の運動を求めているが、雲の形態との関連付けはされておらず、風速場の日々の変化は調べられていない。また、観測機の制約から赤道域の風速場については調べられていない。 そこで本研究では、Venus Expressに搭載されていた撮像装置VMCにより得られた、約70kmの雲頂の吸収物質の分布を反映している紫外画像に加え、低コントラストながら模様が存在する、雲頂より低い約60kmの雲そのものの厚さを反映している可視画像を用いて金星の雲の3次元的な運動を、風速場を導出することで捉えることを試みた。これまで紫外画像を用いた研究は数多くあるが、可視画像を用いた研究は少なく、VMCの可視画像に関する知見がほぼ無いため、検出器の歪曲収差の補正や検出器に固定されたノイズの除去をおこない、風速場推定の確度を向上させた。2波長で求めた雲の移動ベクトルと雲の形態を比較することで、アルベドの分布や、雲頂が下層から受ける影響を調べている。
11/08(火) 16:00- 5F会議室 長谷川(M2)
ストリーミング不安定性による微惑星形成
概要: 星形成の初期段階に存在していたとされる微惑星の形成過程は未解明な部分が多く,それを解決することは普遍的な形で惑星系形成過程を理解していく上で非常に重要である.微惑星形成の現場である原始惑星系円盤はガスとダストで構成されており,ダスト・ガス質量比は~0.01程度であることが知られている.そのため,微惑星形成を調べた先行研究では,質量において卓越するガスの運動に対するダストからの影響(back-reaction)は無視されてきた。しかし近年の研究によって,動径方向のガス圧力勾配に伴いガスとダストとの間に速度差が生じる場合,ストリーミング不安定性と呼ばれる機構によってダストを濃集させ,重力不安定を引き起こすシナリオが提唱されている.特に,この不安定性はダスト質量密度が局所的にガス質量密度と同等か支配的な状況においてより強く働くことが分かっている [Johansen & Youdin 2007] .以上の理由から,ダスト沈殿層のようなダストが集積した状況を考える際,ガスとダストの相互作用を正確に解くことが必要である.本研究では,ダスト・ガス質量密度比~1のダスト層を考え,ストリーミング不安定性によるダスト濃集過程を様々なダストサイズ(すなわち、ガス抵抗によりガスとの速度差が緩和するStopping time)を仮定して数値実験で調査する.本研究は、ガスとダスト間の相互作用を導入するために,ガスは流体,ダストは粒子として扱う、プラズマ物理におけるハイブリッドシミュレーションの手法を応用した計算コードを活用して行った.
10/18(火) 16:00- 5F会議室 金子(本郷D3)
Numerical Study of Solar Prominence Formation
概要: Solar prominences (called as solar filaments on the disk) are cool dense plasma clouds in the hot tenuous corona. The cool dense plasmas are sustained by coronal magnetic fields, i.e., flux rope. The formation mechanism of prominence is still unclear. On the formation of flux rope, the scenario of reconnection in the coronal arcade field has been proposed, however, the origin of cool dense plasma is still unclear. We demonstrate that the topological change from the sheared arcade field to the flux rope by reconnection can trigger the radiative condensation for prominence formation (reconnection-condensation model) using three-dimensional MHD simulations including nonlinear anisotropic thermal conduction and optically thin radiative cooling. In our model, the converging and shearing motion at the footpoint of coronal arcades causes the reconnection to form flux rope. When the reconnected loops are sufficiently long, the radiative cooling is not suppressed by thermal conduction, leading to radiative condensation. The critical length roughly matches Field length, one of the criteria of thermal instability determined by the balance of radiative cooling and thermal conduction. Our study concludes that reconnection can lead radiative condensation for prominence formation as well as flux rope formation, and suggests future observational studies for prominence formation to check the length of reconnected loops against Field length. We also report the recent progress of our numerical simulation for the interior dynamics of prominence. The observations by the Solar Optical Telescope on Hinode revealed that the interior of prominence is highly dynamic, although the global structure is relatively static and stable for days to months. The observational studies of Berger et al. (2008, 2010) reported the existence of upflows and downflows by Rayleigh Taylor instability, and suggested the influence on the internal structures of prominence. So far no numerical simulations of prominence formation by radiative condensation have reproduced Rayleigh Taylor instability in their simulated prominences. We succeeded in reproducing it in our reconnection-condensation model. We will present some preliminary analyses of the flows and magnetic fields related to the internal structures of prominence.
10/11(火) 16:00- 5F会議室 平林(本郷D3)
Mechanism of angular momentum transport in collisional and collisionless accretion disks
概要: An accretion disk is one of the most ubiquitous astrophysical objects, where gravitational binding energy of an accreted matter is converted into the form of heat, radiation, and in some cases, directed bulk flows. When the central accreting star is a massive object like a neutron star or a black hole, in particular, the efficiency of the energy conversion exceeds the nuclear process. Thus the accretion disks are considered to be responsible for various luminous phenomena in astrophysics. For the accretion flow to reach deeply enough into the gravitational potential, however, the angular momentum of the orbiting plasma must be transported outwardly; otherwise the substantial centrifugal barrier eventually balances with the attraction of gravity and further accretion cannot occur. The magnetorotational instability (MRI) has been studied as one of the most plausible mechanisms which can provide a rate of the angular momentum transport sufficient to explain estimated values of viscosity on the observational ground. While a number of authors have investigated the properties of the MRI in a collisional regime, our current understanding of a low-density, hot accretion disk in a collisionless plasma state, the presence of which is inferred both theoretically and observationally, is inadequate to construct a predictive collisionless disk model. In the seminar, we will review the recent progress on the collisionless MRIs together with the related accretion theories. We will also discuss the results of our numerical simulations of collisionless MRIs in a stratified shearing box using a newly developed collisionless MHD code.
10/4(火) 16:00- 5F会議室 清水(D3)
温度非等方性によって強化されたテアリング不安定による分厚い電流層内での大規模磁気リコネクションのトリガー
概要: 太陽フレアやサブストームなどを駆動する大規模な磁気リコネクションがどのようにトリガーされるかは明らかではない。従来、衛星観測などから磁気リコネクションは電流層幅がイオン慣性長/イオンラーマースケールになるとテアリング不安定を介してトリガーされると考えられてきた。しかし、過去の数値シミュレーションによりテアリング不安定は、温度が等方的なプラズマ中では電子スケールの非常に薄い電流層中でしか磁気リコネクションのトリガーメカニズムとならない事が知られている。一方で、プラズマの温度非等方性(α=T_perp/T_para>1)が、テアリング不安定の線形成長率を電子スケールからイオンスケールの波長までグローバルに上昇させることが理論的に指摘されている。近年、温度非等方性によって強化されたテアリング不安定(ATI: Anisotropic Tearing Instability)はイオンスケール程度の電流層中で初期電流層を超える飽和レベルに達することが報告された。このような背景から、テアリング不安定に温度非等方性が与える効果が注目されているが、先行研究はイオンスケール以下の電流層に限られている。しかし、プラズマ密度が10の9乗に及ぶ太陽コロナ中ではイオン慣性長はメートルオーダーであり、太陽スケール(Mm)に比べて非常に小さい為、このような電流層の存在には疑問が残る。本発表では粒子シミュレーションを用いて、イオンスケールより1桁以上分厚い電流層中でもATIを介して大規模な磁気リコネクションがトリガーされる事を報告する。そこではイオンと電子の人工的なマス比は問題にならない事を示す。さらにトリガーされた磁気リコネクションのリコネクション率が初期電流層幅に関係なく?0.2に達する事が分かった。ATIから大規模磁気リコネクションへと繋がる物理過程を議論する。
10/4(火) 16:00- 5F会議室 榎本(D3)
Temporal variations of Venusian polar hazes inferred from groud-based imaging-polarimetry with “HOPS"
概要: Venus is totally covered by thick sulfuric acid cloud (micron-size) and haze (submicron-size) particles. Some studies reported that the optical thickness of the polar haze layers (τ) have temporal variations. Sato et al. [1996] analyzed polarimetric data from Orbiter Cloud Photopolarimeter (OCPP) onboard Pioneer Venus Orbiter (PVO), and they reported that the value of τ had decreased from 0.3 to 0.05 at 935nm wavelength during its mission period (1978-1986). Since the time constant of such variations can give restrictions of the kinds of chemical reactions and enable us to estimate corresponding energy deposition in Venusian atmosphere, continuous observations are required. In order to track the temporal variations of the optical thickness of polar haze layers, we have carried out observations with a 2-beam type imaging-polarimetry system “HOPS” (Hida Optical Polarimetry System) attached to 65cm refractor telescope at Hida Observatory form 2012. We picked up the data satisfying the combination of (α: phase angle, λ: observing wavelength)=(~80°, 930nm) for analysis because this combination is the most sensitive to the amount of haze particles when considering the differences of the polarizations generated by cloud and haze particles. The data satisfying this combination were obtained in Aug. 2012, Apr. 2014, and June 2015. For radiative transfer calculations, we assumed simple 2-layer model composed of main cloud layer and overlying haze layer, and treated some parameters, such as τ, as free parameters. Some values of the properties were taken from previous studies (Sato et al. [1996], Braak et al. [2000]) with consideration for its temporal variations. We evaluated observed data and theoretical calculations in terms of disk-integrated polarization degrees and polarization maps in order to avoid the influence of atmospheric turbulence during observations. As a result, we obtained ~0.2 for τ of polar regions in Aug. 2012, and 0.01 for those in Apr. 2014 and June 2016. This indicates the rapid decrease of τ in this period. In this seminar, details of analysis and discussions about the temporal variations of resultant parameters will be presented.
9/27(火) 16:00- 5F会議室 小美野(M2)
Venus Express搭載VIRTISの画像データを用いた金星夜面の雲移動ベクトルと雲分布の関係
概要: 金星はその全球が分厚い硫酸の雲で覆われており、それらの雲の生成や維持の上では、小規模な乱流、雲層内の対流、惑星スケールの波動、子午面循環など様々な大気運動の寄与が想像されるがそのメカニズムは未だ解明されていない。このような雲の生成や大気循環のメカニズムに対する理解を深める上で、金星大気における雲構造とその周辺における風速場を解明することが重要であるが未だ不十分である。 本研究では、欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されていた可視近赤外分光撮像装置VIRTISの分光画像データを用いて雲追跡を行うことにより金星大気における雲の分布と風速の分布の関連性について調べている。具体的には、金星の分厚い雲を通って出てくる「大気の窓」と呼ばれる波長である1.74μmの画像データを用いることで、金星夜面における大気運動について調べている。近赤外夜面画像では下層大気からの熱放射を光源として雲量の分布が可視化される。時間的に連続したこのような画像を用いて、1枚目と2枚目の画像間で位相相関を計算することにより画像間で濃淡の特徴が一致している部分を抽出し、その移動量を二枚の画像の時間間隔で割ることにより風速を導出する。
9/27(火) 16:00- 5F会議室 下川(M2)
鉛直 1 次元モデルを用いた金星の雲形成の研究
概要: 硫酸を主成分とする金星雲は高度 45~70 km に存在し、高アルベドであることから金星気候に大きく影響を与える。また高度 70 km 付近においてスーパーローテーションによる東西方向の風速がピークを持つ上、太陽光を吸収した雲層で励起される熱潮汐波が大気の運動量伝播を担っている。よって、金星の雲構造がどのような物理過程により調節されているかを知ることは金星の大気力学を理解する上で重要であり、また物理過程が引き起こす鉛直輸送がどのように雲の鉛直構造に影響するかについてはほとんど調べられていない。 本研究では Imamura and Hashimoto (1998, 2001) におけるモデルを基に、硫酸の光生成化学を考慮した鉛直 1 次元における雲形成モデルとして高度 40~75 km における硫酸および水の数密度の時間発展を液相と気相それぞれについて高度ごとに計算し、液相である雲成分の高度分布を調べた。数密度を変化させる物理的要素については、液相の重力沈降、渦拡散、雲層上部での大気化学を想定した。また、子午面循環を考え、鉛直風として赤道域での上昇流を導入した計算も行い、上昇流を含まない計算結果と比較した。 初期状態としては、各物質の大気に対する体積混合比が下端を除く全高度で一様になるように与え、上記の各物理的要素を考慮した場合と除いた場合についてそれぞれ雲形成の様子を調べた。上端では混合比の勾配をゼロとし、下端では 電波掩蔽観測による硫酸蒸気や地上観測による水蒸気の観測結果を境界条件として用いている (Knollenberg and Hunten, 1980) 。得られた気相および液相の分布は、 Imamura and Hashimoto (1998) による計算結果や Kolodner and Steffes (1997), Oschlisniok et al. (2012) による観測結果と比較し、雲層下部での硫酸の気相分布については観測結果との符合が得られた。また渦拡散係数を K, 鉛直風速を w とすると、鉛直スケール L に対する拡散及び鉛直風の時間スケールはそれぞれ L*L/K, L/w と表されることから、 K や w を変化させた際の時間スケールについて比較し、対流や子午面循環などの大気力学作用が雲形成をどう変化させるのかについても考察している。
9/27(火) 16:00- 5F会議室 坂本(M2)
スポラディックE層内の電子温度減少に関する研究
概要: スポラディックE層は突発的且つ局所的に現れる高密度電子層であり,古くから研究・観測がされてきた.その生成機構についてはwind-shear理論が一般に受け入れられているが,この理論は電子密度の集積過程を説明するものの内部の熱エネルギー収支についてはほとんど情報を与えない.更に,電子温度は電離圏の熱エネルギー収支を議論する上で重要なパラメータであるが,過去にはスポラディックE層内での十分に信頼性のある電子温度観測データは限られた報告例しか存在していない.したがって内部での熱エネルギー収支に関する議論は非常に少ない. 我々は,平成26年8月に打上げられた観測ロケットS-520-29号機搭載のラングミュアプローブの観測データをもとに,スポラディックE層内の電子密度・温度の空間構造の研究を行なってきた.その結果,スポラディックE層内において,電子温度は外部との境界付近から中心に向って温度が次第に減少していく傾向を明らかにした.引き続いて,この空間構造がどのようなメカニズムによるものかを議論するため,電子に関するエネルギー方程式を使用して密度が変化した場合の電子温度分布についての数値計算を行っている.この計算では,高度100kmにスポラディックE層が存在すると想定し,この層内で最大電子密度が背景に対して10倍,20倍,30倍に増加した場合の電子温度分布を求めた.その結果,電子密度が高くなるにつれて,背景に対する電子温度の減少幅が徐々に下がっていく傾向が見られたが,その減少幅は観測値では約450Kであるのに対し,計算値では約2.4Kで差が大きい.そこで,数値計算で使用している多くのパラメータの中で,どの値を変化させれば電子温度減少幅が大きくなるかについて,検討を行なった.今回の発表ではこれらの検討結果についての報告を行う.
9/20(火) 16:00- 5F会議室 奈良(M2)
Venus Express/VMCの可視・紫外画像解析による金星大気循環の研究
概要: 金星の雲形成やアルベドの分布に関わる物質循環を理解するうえで、雲層内の3次元的な運動やそれに伴う太陽光吸収物質の輸送を把握することが重要である。金星昼面においては、これまで未同定太陽光吸収物質の空間分布を捕らえる紫外波長で観測された画像が雲の運動の研究に用いられてきたが、太陽光により加熱された大気によって引き起こされる物質循環を理解するためには、複数波長での撮像による複数高度の情報と、雲そのものの空間分布の情報が必要である。Hueso et al. (2015) は欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されてた分光撮像装置VIRTISの観測結果を用いて複数高度の大気の運動を求めているが、雲の形態との関連付けはされておらず、風速場の日々の変化は調べられていない。また、観測機の制約から赤道域の風速場については調べられていない。 そこで本研究では、Venus Expressに搭載されていた撮像装置VMCにより得られた、約70kmの雲頂の吸収物質の分布を反映している紫外画像に加え、低コントラストながら模様が存在する、雲頂より低い約60kmの雲そのものの厚さを反映している可視画像を用いて金星の雲の3次元的な運動を、風速場を導出することで捉えることを試みた。これまで紫外画像を用いた研究は数多くあるが、可視画像を用いた研究は少なく、VMCの可視画像に関する知見がほぼ無いため、検出器の歪曲収差の補正や検出器に固定されたノイズの除去をおこない、風速場推定の確度を向上させた。2波長で求めた雲の移動ベクトルと雲の形態を比較することで、アルベドの分布や、雲頂が下層から受ける影響を調べている。
9/20(火) 16:00- 5F会議室 武藤(M2)
polar oval および極域大気の放射特性の研究
概要: 金星大気の熱収支にとって雲層高度における太陽光吸収物質の振る舞いが重要である。これまで太陽光吸収物質が注目されてこなかった可視波長においても極域においてpolar oval が存在し顕著な吸収が有る。Polar oval は金星南極域で可視、紫外領域において観測される環状構造であり、その生成メカニズムは未だわかっていない。このpolar oval をはじめとして吸収物質がどう分布し、どのような熱的影響を与えているか理解することが重要である。polar ovalは昼面でしか観測できないためこれまで夜面も含めた全体形状やその時間変化は不明であった。今回、Venus Express/VMCの可視画像を用い、polar ovalの夜面も含めた全体形状の復元と形状の変動について明らかにすることができた。また、Venus Expressに搭載されていたVIRTIS の可視および赤外の画像を比較することにより、polar ovalの暗い部分で周囲より5K程度温度が上昇していることがわかった。しかし、その温度上昇のメカニズムについては未だわかっていない。そこで、polar oval の熱収支について簡単な計算を行い、それによりpolar oval での温度上昇は可視のアルベドの差によるもので十分説明できることがわかった。また、極域全体において、過去Titov et al. 2012などで報告されてきた365nmにおける午前と午後のアルベドの違いが確認され、この傾向は可視波長においても同様であった。これは紫外。可視波長での吸収物質の分布に時間変化が生じてアルベドが変化していることを意味する。このことが雲頂の熱収支にどのような影響を与えるかについては考察中である。
9/13(火) 16:00- 6F会議室 須藤(M2)
人工飛翔体搭載用 熱的・超熱的イオン分析器の開発
概要: 地球磁気圏には数eV程度の熱的・超熱的と呼ばれる低エネルギー粒子から数MeVを超える高エネルギー粒子まで、幅広いエネルギー帯のプラズマ粒子が同時に存在している。これらの粒子は電磁場を介して相互作用し、加速や輸送を経て生成・消滅することで多様なプラズマ環境を形成している。例えば、内部磁気圏には電離圏起源のプラズマが存在することが知られており、磁力線に沿って電離圏プラズマが磁気圏へと流出する現象「polar wind」が衛星観測によっても確認されている。このとき、電離圏では1eVほどであった粒子が高高度では数十eVほどにまで加速されている。しかし、その加速機構は未だ解明されていない。この理由の一つとして、数十eV以下の熱的・超熱的イオンの直接観測を行う場合、衛星の帯電電位が粒子軌道に影響を与えてしまい、観測自体が容易でないという問題が挙げられる。 内部磁気圏において人工衛星は約5~10Vほどに帯電することが知られている。このとき衛星は熱的・超熱的イオン(0.1-10 eV)の加速電位と同等以上の電位を持っているため、それらを衛星周辺で観測することは非常に難しい。したがってこれらの影響を抑制するために、観測器を衛星から伸展したブーム上に設置し、観測器の筐体電位を制御する方法が考えられる。この場合、観測器は小型軽量である必要がある。そのため我々は、小型化を重視した熱的・超熱的イオン分析器の開発を行っている。 一般的なイオン分析器はエネルギー分析部と質量分析部の2つの部分から構成される。本機器のエネルギー分析部には、360度の平面状視野を持ち各粒子のエネルギー・飛来方向が同定可能なトップハット型静電分析器の構造を採用した。本機器はスピン衛星に搭載することで分析器周辺の全視野を網羅することが可能である。したがって、本機器によって得られたデータを解析することでイオン粒子の3次元速度分布を取得することができる。一方、質量分析部にはKaguyaなどに搭載実績を持つ飛行時間分析型質量分析器を採用した。我々は、入射イオンの軌道シミュレーションをもとにこれらの構造を小型化することで、アナライザ部の大きさが100φ×60 mm程の熱的・超熱的イオン分析器を設計した。粒子シミュレーション結果から、本機器は電離圏イオン観測に十分な感度や分解能を持つことが分かっている。また、本機器で使用する検出器は紫外線に対する感度も持つため、イオンの入射口や静電分析部には紫外線への対策加工も施されている。 本機器は技術実証試験を兼ねて極域観測ロケットSS-520 3号機への搭載が予定されており、その打ち上げに向けた開発が進められている。現在は上記の基本設計をもとに内部機構の詳細設計が完了し、実機の開発を行っている。 本発表では、熱的・超熱的イオン分析器の詳細な設計および現在の開発状況について述べる。
9/13(火) 16:00- 6F会議室 星(M2)
昼側低緯度磁気圏境界面における磁気リコネクションジェットの統計解析による磁気リコネクションラインの位置の推定
概要: 太陽風の質量、運動量、エネルギーが地球磁気圏内へ流入する最も重要な過程の一つとして、昼側磁気圏境界面の電流層内で惑星間空間磁場(IMF)と地球磁場がつなぎ変わる磁気リコネクションがある。この現象が起こる領域は、太陽直下点付近の磁気圏境界面上にライン状に広がる事が知られており、Xラインと呼ばれる。磁気リコネクションの発生条件やXラインの存在する位置は、太陽風流入の効率を変化させうるものの、これらについて統計的な描像は未だに明らかになっていない。そこで、THEMIS衛星観測データを用いて、昼側低緯度の磁気圏境界面において、磁気リコネクションに伴うジェットの統計解析を行い、Xラインの存在位置を調べた。 THEMIS衛星は2007年の打ち上げ以来、2010年まで同一構成の5機、2010年以降は2016年現在まで、月周回衛星となった2機を除いた3機で地球磁気圏の編隊観測を行っている。この期間のうち、磁気地方時が6時から18時までの範囲で観測された低エネルギーイオン、及び磁場データを用いた。このうち、衛星がShue et al. [1998]のモデル境界面から1.23地球半径以内におり、境界面内のイオン速度の南北成分の大きさが、シース領域のアルフベン速度である150 km/sより大きい観測点を磁気リコネクションによって生じたジェットとみなした。さらに、この観測点を観測した後15分以内に複数点が存在した場合は、この間の最初の点のみをとって1イベントとした。以上の基準で選んだ磁気リコネクションジェットは、THEMIS衛星の全観測期間内で7418イベントあった。これらのジェットの発生位置と向きから、季節依存性に対応する地磁気双極子の傾きが小さい春や秋でIMFが南を向いている時は、Xラインは太陽直下点から磁気赤道付近に存在し、IMFの東西成分があるとIMFのクロックアングルに依存して太陽直下点にピン留めされたように傾くこと、また、地磁気双極子の傾きによって、最大約2地球半径ほど太陽直下点より冬半球側に移動することが分かった。このことから、地磁気双極子の傾きが大きい夏及び冬は、昼側の磁気リコネクションによって夜側に輸送される磁束が減少することが示唆された。
9/13(火) 16:00- 6F会議室 長谷川(M2)
原始惑星系円盤におけるダスト沈殿層でのストリーミング不安定性によるダスト濃集過程
概要: 惑星形成の初期段階に存在していたとされる微惑星の形成過程は未解明な部分が多く,それを解決することは普遍的な形で惑星系形成過程を理解していく上で非常に重要である.微惑星形成の現場である原始惑星系円盤はガスとダストで構成されており,ダスト・ガス質量比は~0.01程度であることが知られている.そのため,微惑星形成を調べた先行研究では,質量において卓越するガスの運動に対するダストからの影響(back-reaction)は無視されてきた。しかし近年の研究によって,動径方向のガス圧力勾配に伴いガスとダストとの間に速度差が生じる場合,ストリーミング不安定性と呼ばれる機構によってダストを濃集させ,重力不安定を引き起こすシナリオが提唱されている.特に,この不安定性はダスト質量密度が局所的にガス質量密度と同等か支配的な状況においてより強く働くことが分かっている(Johansen & Youdin 2007).以上の理由から,ダスト沈殿層のようなダストが集積した状況を考える際,ガスとダストの相互作用を正確に解くことが必要である.本研究では,ダスト・ガス質量密度比~1のダスト層を考え,ストリーミング不安定性によるダスト濃集過程を様々なダストサイズ(すなわち、ガス抵抗によりガスとの速度差が緩和するStopping time)を仮定して数値実験で調査する.本研究は、ガスとダスト間の相互作用を導入するために,ガスは流体,ダストは粒子として扱う、プラズマ物理におけるハイブリッドシミュレーションの手法を応用した計算コードを活用して行った.
8/9(火) 16:00- 5F会議室 笠原(助教)
Verification of wave-particle interaction in space by ERG observations
概要: ERG (Exploration of energization and Radiation in Geospace) is a geospace exploration spacecraft, which is planned to be launched in FY2016. The mission goal is to unveil the physics behind the drastic radiation belt variability during space storms. One of key observations is the evaluation of wave-particle interaction (WPI), which is considered to play significant roles in the radiation belt dynamics. In this talk, after the review of the concept of WPI analyses and implementation on the spacecraft, reconsideration on the treatment of observables is discussed. It is found that several factors which should be included in the calculation process of the energy transfer rate (thus-far simple summation of E-dot-V as a proxy), as well as a note about the flux variability during the target interval.
7/26(火) 16:00- 5F会議室 松岡(准教授)
The design and performance of the flight model of the magnetometer for the ERG mission
概要: The acceleration process of the charged particles in the inner magnetosphere is considered to be closely related to the deformation and perturbation of the magnetic field. Accurate measurement of the magnetic field is required for the understanding of the acceleration mechanism of the charged particles, which is one of the major scientific objectives of the ERG mission. We designed a fluxgate magnetometer which is optimized to investigate following topics; (1) accurate measurement of the background magnetic field - the deformation of the magnetic field and its relationship with the particle acceleration. (2) MHD waves - measurement of the ULF electromagnetic waves of frequencies about 1mHz (Pc4-5), and investigation of the radiation-belt electrons radially diffused by the resonance with the ULF waves. (3) EMIC waves - measurement of the electromagnetic ion-cyclotron waves of frequencies about 1Hz, and investigation of the ring-current ions and radiation-belt electrons dissipated by the interaction with the EMIC waves. A fluxgate magnetometer (MGF) was built for the ERG satellite to measure DC and low-frequency magnetic field. The design is based on MGF-I, one of the magnetometers for MMO, Mercury orbiter, which would also suffer high radiation on the Mercury orbit. The requirements to the magnetic field measurements by ERG was defined as (1) accuracy of the absolute field intensity is within 5 nT (2) angular accuracy of the field direction is within 1 degree (3) measurement frequency range is from DC to 60Hz or wider. We tested the characteristics of MGF and confirmed that its performance satisfies these requirements.
7/26(火) 16:00- 5F会議室 今村(東京大学)
あかつき雲画像に見られた巨大弓状構造の数値モデリング
概要: あかつきが周回軌道投入直後に赤外線で写した画像には、南北に伸びる巨大な弓状構造が見られる。そのあとの継続的な観測から、この構造は地表に対してほぼ静止しており、背景風であるスーパーローテーションに対しては相対的に上流側に向かって移動していることがわかっている。この構造はある種の大気波動によって作られるものと考え、金星大気を模した力学モデルを用いてその力学的性質を調べている。
7/19(火) 16:00- 5F会議室 大場(D2)
デコンボリューション解析による太陽光球における対流速度場の3次元構造の取得
概要: 太陽表面層と定義される光球は、「粒状斑」と呼ばれる明るい無数の粒状構造と、その周囲を取り囲む暗い「間隙」の構造で覆われている。これらは対流構造によって形成されており、太陽下部から上昇してきた熱いガスが明るい粒構造を形成し、やがて周辺の間隙へと沈み込んでいくプロセスとして理解されている。これらの動的プロセスには、放射によるエネルギー損失過程が重要である。具体的には、上昇ガスが放射によってエネルギーを損失し、密度が高くなることで周辺の間隙にて沈み込んでいくというものである。このエネルギー損失の結果、間隙において強い下降流が生じることが予想されており、数値シミュレーションでは上昇流よりも高速な下降流を再現している。一方で観測結果からは、下降流よりも、むしろ高速な上昇流が生じていると報告されている。我々は、これらの理論計算と観測結果の不一致が生まれる原因について、太陽の観測像がぼやける影響によって引き起こされていると考えた。つまり下降流のシグナルが、周辺に分布している上昇流からのシグナルの寄与によってキャンセルされてしまい、観測される際には強い下降流のシグナルが失われてしまうというものである。そこで本研究では、高空間・高精度観測を実施している太陽観測衛星「ひので」の分光データを用いて、太陽像がぼやける影響を取り除くデコンボリューション解析を実施した。得られた分光データの速度場を解析することで、これまで得られなかった強い下降流を捉えることができた。本セミナーではこれらの解析結果を報告・議論する。
7/19(火) 16:00- 5F会議室 西野(名古屋大学)
Kaguya observations of the lunar wake in the terrestrial foreshock
概要: Entry processes of solar wind plasma into the lunar wake have been widely studied. In addition to gradual refilling of the wake by the ambient solar wind, it has been known that a portion of solar wind protons that are scattered at the dayside surface or deflected by crustal magnetic fields can enter the wake (i.e. type-2 entry). However, proton entry into the deepest lunar wake (i.e. anti-subsolar region at low altitude) by the type-2 process needs specific solar wind conditions. Here we report, using data from Kaguya spacecraft in orbit around the Moon, that solar wind ions reflected at the terrestrial bow shock easily access the deepest lunar wake, when the Moon is located in the foreshock. This phenomenon is called type-3 entry. In one case, when the spacecraft location is magnetically connected to the lunar night-side surface, the kinetic energy of upward-going field-aligned electron beams decreases or electron beams disappear during type-3 entry events. This shows that the intrusion of the shock-reflected ions and electrons into the wake changes the electrostatic potential of the lunar night-side surface.
7/12(火) 16:00- 6F会議室 佐藤(PD)
Characteristics of Venus cloud particles inferred from near-infrared atmospheric windows.
概要: Optically thick sulfuric acid clouds in the altitudes of 50-70 km are considered to have impacted on the atmospheric dynamics and the climate system of Venus. Discovery of near-infrared atmospheric windows allow us to investigate the middle and lower clouds by remote sensing techniques. Akatsuki IR2 carries three channels for studying atmospheric dynamics and clouds in the lower atmosphere and has tested its performance for three months. In this presentation, I will review two important works (Carlson et al., 1993; Wilson et al., 2008) which analyzed spaceborne 1.74 and 2.3 micron images to obtain the spatial variations in properties of cloud particles. And I will explain the updated IR2 observation plan to be executed in several weeks.
7/12(火) 16:00- 6F会議室 小美野(M2)
Venus Express搭載VIRTISの画像データを用いた金星夜面の大気運動の研究
概要: 金星はその全球が分厚い硫酸の雲で覆われており、それらの雲がどのようなメカニズムで生成され、どのような大気循環により維持されているのかは未だ解明されていない。このような雲の生成メカニズムや大気循環のメカニズムに対する理解を深める上で、金星大気における雲構造とその周辺における風速場を解明することが重要であるが未だ不十分である。本研究では、欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されていた可視近赤外分光撮像装置VIRTISの分光画像データを用いて雲追跡を行うことにより金星大気における雲の模様と風速の分布の関連性について調べている。具体的には、金星の分厚い雲を通って出てくる「大気の窓」と呼ばれる波長である1.74μmの画像データを用いることで、金星夜面における雲層下層の大気運動について調べている。
6/28(火) 16:00- 5F会議室 伴場(PD)
太陽フレア発生過程に関する研究の現状と課題
概要: 我々はこれまでに、数値シミュレーションとその観測的検証から、太陽フレアの発現メカニズムの解明に挑んできた。ひので衛星・SDO衛星によって観測されたフレアのデータ解析から、複数の大規模フレアのトリガとなった微細な磁場構造である「トリガ磁場」を発見した(Bamba et al. 2013)。これらのトリガ磁場およびフレアに至る磁場構造の変化は、我々のグループの提案するフレア発生の数値シミュレーション(Kusano & Bamba et al. 2012)とよく一致し、理論モデルを観測的に一部実証した例として注目されている。 これまでにトリガ磁場を特定したフレアイベントは、比較的単純な磁場構造の領域で発生していたため、上述の数値シミュレーションによるモデルとの比較も容易であった。しかし、一般的にフレアは非常に複雑な磁場構造の領域で発生するため、例えばフレアリボンやプリフレア発光、磁場構造の変化などが、理論的に予想されるものと大きく異なる例が数多く存在する。これらのフレアイベントも、上述の理論モデルによって説明可能なのか、あるいは全く異なる物理機構によるものなのか、当該活動領域におけるフィラメント噴出や小規模フレアイベントとの関係も含めて解析することで考察した。 本発表ではまず、比較的単純な磁場構造のもとで発生したフレアを例に、理論モデルの観測的検証の現状を手短に紹介する。そのうえで、多様なフレアイベントと理論モデルの整合性に関する考察を行い、今後の課題についてまとめる。
6/28(火) 16:00- 5F会議室 Peralta(PD)
Slowly moving cloud features challenge Venus’s night side superrotation
概要: We used infrared images at 3.8 and 5.0 micrometers from ESA Venus Express and NASA Infrared Telescope Facility to characterize the mid and low-latitude global motions of the upper clouds (60-70 km above surface) on the night side of Venus. Contrarily to the day side, where super-rotating winds range -120 to -90 m/s at this altitude, night side motions are far more variable, with most velocities ranging from -80 to -40 m/s. In addition, thermal images show the abundant presence of varied wavy features that are nearly stationary to the surface or sun-synchronized with speeds ranging -10 to +10 m/s. These results defy the paradigm of a ubiquitous steady bulk superrotation at these altitudes and decades of numerical efforts to explain Venus’s General Circulation.
6/21(火) 16:00- 5F会議室 坂尾(准教授)
Creation of Hot Plasmas in a Flux Eruption Event Observed in Soft X-rays with Hinode/XRT
概要: The X-Ray Telescope (XRT) aboard Hinode is capable of imaging, and diagnosing, a wide range of coronal temperatures ranging from below 1 MK to beyond 20 MK, without gaps in the temperature coverage. Thus it has a unique advantage over other on-orbit coronal imagers that it can observe both hot and cool coronal activities and their temperature evolution with a single telescope. In particular, the grazing-incidence nature of the XRT optics is suited for imaging high-temperature plasmas (>20 MK) created during the course of flares that are not necessarily well accessible with coronal imagers utilizing EUV emission lines. XRT observed an eruptive flare (GOES M1.1) that commenced behind the east limb at 18:30 UT on 14 October 2014. The observation was made with the flare-observing sequence of XRT, following the on-board flare detection called by the XRT-MDP (Mission Data Processor) system. The X-ray images showed a flux eruption, corresponding to the early stage of a CME observed with SoHO/LASCO, with a flux-rope-like feature ejected as the flare progressed. Filter-ratio temperatures of the soft X-ray flaring structure derived from multiple-filter observation of the flare suggest possible creation of super-hot (reaching as high as ~30 MK) plasmas distributing from near the apex of the erupting structure (where the flux rope is present), downwards along the sides of the structure. The observation may be the first identification in images of super-hot plasmas in the soft X-ray range, with XRT covering an energy range up to ~2 keV.
6/21(火) 16:00- 5F会議室 長谷川(助教)
MMS衛星がみた磁気リコネクション領域
概要: 2015年3月13日に打上げられたMMS(Magnetospheric Multiscale)衛星は、高分解能の電磁場観測器に加え、時間分解能30 msという桁違いの電子計測器を搭載し、地球磁気圏を編隊飛行観測している。発表では、2015年10月16日にMMS衛星が通過した、昼側磁気圏界面での磁気リコネクションの散逸領域の観測(Burch et al., Science, 2016)について概説し、その運動や構造の詳細を解析した結果を紹介する。
6/14(火) 16:00- 6F会議室 中村(教授)
失敗に学ぶ
概要: あかつきの大失敗から5年。2015年に我々は金星探査機を周回軌道に入れる事に挑み、成功させた。しかし、プロジェクトマネジャーである中村の犯してきた失敗はこれに留まるものではない(^_^; 本セミナーでは実験家としての中村の大学院生時代からの様々な失敗を振り返り、それが如何に昇華されていったか(露と消えたものもある)を話してみたい。
6/14(火) 16:00- 6F会議室 横田(助教)
地球起源酸素イオンの月面への降り込み:かぐやの観測
概要: 月はかつて、テイアと名付けられた巨大隕石が地球へ衝突したのを機に形成されたと広く考えられている。この隕石衝突による月形成モデルは数値計算等で理論的に研究されていて、また月から得た試料の同位体分析による実証の試みがなされている。数値計算モデルによる研究では月の物質の大部分はテイアから供給されたということが提唱されている。しかしながら、同位体分析では月と地球の試料で非常に近似した結果が得られていて、これは地球が月に対して大きく物質供給したことを示唆することになる。同位体分析が月と地球の試料で近似した結果が出た理由として、地球での試料の汚染などがまず考えられている。一方で、GEOTAIL衛星を始めとした地球磁気圏観測衛星により、特に酸素イオンが地球起源粒子として地球から散逸し、地球磁気圏尾部へと流されていくことが観測されている。最も遠い場合だと200地球半径離れた地球磁気圏で、地球起源の酸素イオンが観測されている。月は一か月に5日ほど60地球半径離れたところで地球磁気圏を通過するため、地球起源の酸素イオンは月表面に輸送される機会があると考えることが可能である。月探査衛星「かぐや」は太陽風が静穏な時期ではあるが2008年を100km高度で周回した。イオン分析器が「かぐや」には搭載されていて、地球磁気圏においてイオンを観測している。地球磁気圏イオンに酸素イオンが含まれていることが観測データから示されていて、地球から月面へ酸素イオンが流入が「かぐや」によって観測されている。我々はこの酸素イオンの流量と観測時間から、地球から月へと輸送される酸素イオンの量を見積もった。本発表では酸素イオンの輸送量を示し、月試料の同位体分析に対する影響を考察する。
6/6(月) 16:00- 5F会議室 銭谷(国立天文台)
無衝突磁気リコネクションにおける電子軌道の解析 Particle dynamics and nongyrotropic distribution functions in collisionless magnetic reconnection
概要: 無衝突磁気リコネクションの電子の運動論物理を観測的に検証するために打ち上げられた NASA MMS 衛星は、順調に観測を開始し、 高解像度の電子の速度分布関数データを取得し続けている。現在、MMS 衛星は磁気圏昼側境界のリコネクションを重点的に観測しているが、2017年には磁気圏尾部の観測を開始する予定である。磁気圏尾部では、反平行向きのほぼ同じ大きさの磁場がつなぎ変わる基本タイプの磁気リコネクションが起きており、リコネクション物理の基礎が観測で実証されることが期待されている。 MMS の観測結果をよりよく理解するためには、複雑な形状の電子速度分布関数とそれに対応するラグランジュ軌道の関係を理解しておく必要がある。こうした試みとしては、例えば平出・星野ら(Hoshino et al. 2001, EPS) の先駆的研究がある。その後、MMS 衛星の打ち上げを控えた2010年前後から、X-line 近傍の分布関数と電子運動との関係が再び議論されるようになってきた。しかし、これらの研究は意外な盲点を抱えていた。 本研究では、磁気リコネクションの粒子シミュレーションデータを解析するシンプルかつ有効な手法を提案する。そして実際に、一部の電子が古典的な Speiser タイプの軌道を通ることを確認した。さらに今回、新手法を生かした結果、我々は3種類の新しいタイプの電子軌道を発見した。本発表では、これらの軌道の基本的性質やそれに伴う観測的特徴を議論する予定である。 Reference:Zenitani, Shinohara, & Nagai (2016), Phys. Plasmas, submitted (arXiv:1605.07472)
5/17(火) 16:00- 5F会議室 北原(M1)
複数探査機データによる火星大気の長期温度場:ダストストームが及ぼす傾圧不安定への影響
概要: 火星のダストストームが、北半球の冬の時期の傾圧不安定の発達を促進するイベントが見られた[Banfield et al., 2004]。 また、シミュレーションにより、傾圧不安定波がCO2 氷雲・季節極冠の生成に大きな影響を与えていることもわかっている[Kuroda et al., 2013] 。 このCO2による大気の季節変動を解明する方法として、2つの衛星の温度場観測による8年にわたる長期連続データから、ダストストームを発生緯度と時期で 分類し、それぞれが傾圧不安定に及ぼす影響を考察した。
5/17(火) 16:00- 5F会議室 韓(M1)
KIC 12557548b and K2-22b Cases- Data Analysis of K2 Data and Starspot Simulation regarding the Exotic Phenomena in Astronomy, Evaporating Planet
概要: KIC 12557548b is a unique planet candidate characterized by highly variable transit depth and asymmetric shape of transit curve. Evaporating-planet scenario is the most convincing hypothesis to explain the abnormalities, backed by a number of researches in the intervening years. In the meantime, the issue on what kind of energy source is driving KIC 12557548b into catastrophic evaporation is yet to be settled - there are at least two possible sources - high XUV energy (Kawahara et al., 2013) and bolometric energy (Croll et al., 2014) - while both of them can give explanation to reasonable mass-loss rate of planet, how anti-correlation between the rotational modulation and transit depth variation observed in KIC 12557548b is formed, is not thoroughly discussed in Croll et al. (2014). I present the result of the starspot simulation to show that the anti-correlation is indeed formed with the starspot combination devised in Croll et al. (2014) so that the bolometric energy can be attributed to the evaporation, and discuss ubiquity of such a starspot configuration. Also, I represent the result of data analysis of K2-22b (K2 data), which is claimed to assume same features as KIC 12557548b does (Sanchis-Ojeda et al. (2015)).
5/17(火) 16:00- 5F会議室 須藤(M2)
人工飛翔体搭載用 熱的・超熱的イオン分析器の開発
概要: 地球磁気圏には数eV程度の熱的・超熱的と呼ばれる冷たい粒子から数MeVを超える高エネルギー粒子まで、幅広いエネルギー帯のプラズマ粒子が同時に存在している。これらの粒子は電磁場を介して相互作用し、加速や輸送を経て生成・消滅することで多様なプラズマ環境を形成している。例えば、内部磁気圏には電離圏起源のプラズマが存在することが知られており、磁力線に沿って電離圏プラズマが磁気圏へと流出する現象が衛星観測によっても確認されている。このとき、電離圏では1eVほどであった粒子が高高度では数十eVほどにまで加速されている。しかし、その加速機構は未だ解明されていない。この理由の一つは、数十eV以下の粒子の直接観測を行う場合、衛星の帯電電位が粒子軌道に影響を与えてしまい、観測自体が簡単ではないためである。 衛星電位の影響を抑制する方法として、観測機器を衛星から伸展したブーム上に設置し、観測器の筐体電位を制御することが考えられる。この場合、観測器は小型軽量である必要がある。このため、我々は小型化を重視した熱的・超熱的イオン分析器の開発を行っている。機器設計においては、360度の平面状視野を持つトップハット型静電分析器と飛行時間分析型質量分析器の構造を採用した。小型軽量化に対する適切な設計を行うことで、現設計ではアナライザ部の大きさを100φ×60 mm程度に抑えている。 本発表では、熱的・超熱的イオン分析器の設計結果および現在の開発状況について述べる。
5/10(火) 16:00- 6F会議室 今井(M1)
ティコの超新星残骸の爆発噴出物の分布
概要: 超新星残骸は、超新星爆発をした後に残る構造であり、核反応で作られた様々な元素を放出する。全体が光学的に薄く、爆発により放出された元素自身が輝線を 放つので、元素組成を直接測定することができる。本研究では、「すざく」衛星によるティコの超新星残骸の観測データと複数の次元の異なるIa型超新星爆発 の数値シミュレーションにおける元素の分布と比較した。その結果、FeはSi, S, Caと比べて中心側で多く観測され、Si, SとCa, Feの輝度強度比が数値シミュレーションモデルの質量比と一致した。天球上の2次元的な空間分布を調べると、Siは一方向を除く広い範囲で強く分布し、 Feは一方向の狭い範囲に強く分布していることが分かった。3次元的な数値シミュレーションの結果とは異なる結果が得られた。
5/10(火) 16:00- 6F会議室 長谷川(M1)
SDO/HMIを用いた太陽光球における磁気ヘリシティ入射の測定
概要: 太陽コロナにおいては、磁場は複雑に絡まった配位をしている。フレアやCMEなど、コロナ中の爆発現象のトリガの解明のためには、磁場の複雑さがコロナでどのように蓄えられ、解放されるかを定性的、定量的に理解する必要がある。磁気ヘリシティとは、この「磁力線の複雑さ」を定量化する物理量である。 本研究では、SDO衛星に搭載されている観測機であるHMIで得られた磁場データを用いて、太陽内部から光球面を通過してコロナに入射する磁気ヘリシティ量を見積もり、フレア・CME発生との相関を調べた。
5/10(火) 16:00- 6F会議室 土井(M1)
磁力線の形状と太陽フレアの関係
概要: フレアは太陽大気中で起こる爆発的増光現象である。フレア発生時、電波からガンマ線に至るあらゆる波長域で電磁波の強度が突発的に増加する。また、フレアに伴い、大量のプラズマ噴出が発生する。代表的なものがコロナ質量噴出 (Coronal Mass Ejection, CME)であり、磁気嵐の原因になる。また、フレアやCMEに伴い加速された高エネルギー粒子は短時間で地球に到達し、人工衛星の故障や宇宙飛行士の被ばくの原因となる。 フレアのエネルギー源は黒点近傍に蓄えられた磁気エネルギーであることが分かっている。ゆえに、フレア発生前の活動領域での磁場構造を捉えることはフレアやCMEを予測する上で有用である。フレア発生前に観測されるS字型(or 逆S字型)のコロナループ(=Sigmoid)は、太陽大気中の磁束管のねじれた構造を示唆し、高い磁気エネルギーを持つことが推察される。今回は実際に起こったM1.1フレア(2013/3/15)発生前後コロナループの形状および光球磁場をひので観測データを用いて解析し、双方の形態的関連性およびフレア発生前後での時間発展を考察する。
4/26(火) 16:00- 5F会議室 塩谷(准教授)
系外惑星の精査のための宇宙望遠鏡搭載コロナグラフの開発および関連研究について
概要: これまで注力してきた、系外惑星の精査のための宇宙望遠鏡用コロナグラフ装置の科学目標・開発研究を中心に発表する。ここで系外惑星を志向するのは、究極的にはその大気組成分析等を利用して、地球外の生命兆候を見出し、関連する環境と合わせて多様性、進化などを明らかにすることを大目標としているためである。しかし系外惑星の直接観測においては、主星と惑星とのコントラストが深刻な障壁となる。太陽系を例にとると、地球とのコントラストは可視域で〜10 桁、赤外域でも〜6 桁もある。ここで言うコロナグラフとは、波動光学的な原理によって主星光を選択的に低減し、コントラストを大幅に(何桁も)緩和する光学系のことである。 我々はこれまでに、次世代赤外線天文衛星 SPICA への搭載を想定して、世界初のスペースコロナグラフ観測装置 SCI の開発を進めて来た。その過程で多くの成果を得た (国内の微細加工技術を用いて、コロナグラフマスク単体で 7〜8 桁という世界最高水準のコントラストの実証、コロナグラフ専用に設計されていない望遠鏡にも適用できるマスク設計解の考案、波長によらず適用可能な自立型マスクの開発実証、コロナグラフと併用してコントラストを更に高める極低温波面補正鏡の開発など)。ただし、SCI は最終的に非搭載となった。 発表では、合わせて、関連する開発研究等についても紹介する (大型宇宙望遠鏡を可能にするSiC 系軽量鏡材料開発、鏡面の微細構造、極低温までの超高精度熱膨張測定、トランジット法による系外惑星観測など)。上記の大目標は、最近、注力させて頂いている木星氷衛星探査ミッション (JUICE) 搭載ガニメデレーザー高度計 (GALA) の開発とも整合するものである。






最終更新日 2017.03.14 <編集: 加藤>