ノルウェー出張記(上) -フィヨルドと太陽風編-

 

シャツ一枚では肌寒い,8月下旬のノルウェー.
フィヨルドの海岸線を縫うように,車は走る.
カーラジオから流れてくるABBAの曲が哀愁を誘う.
ABBAのメンバーのうちの一人は,ノルウェー生まれだ,と,
ハンドルを握るエンジニアのゲイルが教えてくれる.
AKBは全員日本人だ,とかわりに教えてあげようかと思ったが
やめておいた.そのうちノルウェー人が加入するかもしれないし.

 

sheep
写真:ドライブ中にときどき入る,ほのぼのタイム.

 

日本の感覚でいえば,季節は10月下旬といったところだろう.
日本の秋との大きな違いは,太陽の位置である.
沈まぬ太陽,とまではいかないが,深夜でも水平線の向こうには明かりが残る.
夏は白夜,冬は一日中真っ暗になるはず.
極端で過酷な四季なのである.

sunset
写真:夕日.

 

観測ロケットの試験のために訪れたノルウェー.
2週間で噛合せ試験と振動試験をしました.
噛合せ試験では各機器がきちんとロケット構造に設置される事,
そして機器間や機器・ロケット構造間に干渉がない事を確認する.
振動試験では,振動をかけてぶっ壊れない事を確認する.
その前には,機器の取付ネジが外れないよう,おまじないをかけながらしっかり締める.

building
写真:組上げの様子.

vib
写真:振動試験の様子.

 

噛合せ試験はAndoya島で,振動試験は本島のNarvikで,と別々の場所で行われた.
島々の間の移動は車が主要手段である.
片道5時間のドライブ.ドライバーにとってもそれ以外の人にとっても決して楽な移動ではないが,
おかげで大自然の景観を満喫できた. 泣く子も黙るフィヨルドである.

land
写真:空から見た地形.浜の砂は白く,浅瀬が広いため,まるで南国の様なきれいなライトブルーが出る.

 

 

フィヨルド.てなんだっけ?
Wikipediaによれば,
「氷河による浸食作用によって形成された複雑な地形の湾・入り江のこと」
らしい.

 

フィヨルドという言葉の中身を説明できなくても,
北欧といえばフィヨルド,フィヨルドといえば北欧,
みたいな事は脳に刷り込まれている.
初等教育の賜物である.
フィヨルドなんて,普段の生活には登場しないし,
その単語を知っていても何か得があるわけでもないのに.
不思議と響きが頭に残っている.

 

カフェ
写真:休日に行ったカフェ.北欧,って感じ.

デザート
写真:デザート.

bronze
写真:Narvikの街には銅像が点在する.プチ芸術の街だ.

bronze2
写真:手に抱える鉢の中にはかわいい花が.
お賽銭でも入っているのかと覗き込んだ卑しい自分が
情けない.

 

フィヨルドの他にノルウェーといえば,やっぱりオーロラですよね.
現地の人に聞いてみると,この時期,あまり期待はできないが
運が良ければごくまれに見られるとのこと.
空が晴れている事に加え,太陽風速度の上昇や南向き惑星間空間磁場などが鍵である.

 

が,いかんせん晴れの夜が来ない.
ノルウェーのこの時期は曇天模様がほとんどで,雨の夜も多い.
Andoya滞在最終日,待望の快晴で夜を迎え,太陽風モニタに張り付くも,
がっかりな秒速200km台.
オーロラ観賞は次回にお預けとなった.

 

で,太陽風.
Wikipediaによれば,
「太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)のこと」
だ.
これ,初等教育の理科で教えたらいいのにと思う.
太陽から来る風.そのまんまだから,子どもでもなんとなくイメージし易い.
しかもオーロラと深く関係しているので興味も抱きやすい.
たぶん,「フィヨルド」くらいかそれ以上の知名度は勝ち取れるに違いない.

するとオーロラツアーに出かける旅行客が,
何も知らずにただただオーロラを待つ時代は終わる.
太陽風の長期予報を見て計画を練って出かける.
科学の勝利だ.

宇宙利用の幅も広がるかもしれない.
太陽風力発電とか,言いだしたり.
科学の勝利だ.

 

dinner
写真:フランスチームと自炊晩御飯.やつらの手際のよさには舌を巻いた.

 

テストの結果は気持ち悪いくらい良好だった.
何の問題も起きなかった.
が,日本には「勝って兜の緒を締めよ」という言葉がある.
我々の場合は「試験パスしてネジ締めよ」だ.ゎ,うまいなぁ.

 

ice
写真:ノルウェー中のいたる所で見かける絵.
最初に見たのがボーリング場の入り口だったので,
ボーリング協会のマスコットかとしばらく思っていた.
本当はアイスクリームのキャラでした.
黒柳徹子にも見えます.

ice2
写真:若い新キャラもいるようだ.が,出現頻度は低い.

 

次は打上げ,11月末-12月の予定である.
ノルウェーのNy-Alesundが射場だ.
その時期に2週間もいればほぼ間違いなく
はっきりとしたアークオーロラが見えるとのこと.
楽しみです.

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