台湾出張:マスクと段差とダンサーと
ワークショップの行われる台南に着くと,原付天国(モーターバイク天国)が広がっていた.
さながら市民参加型公道利用レースの様相を呈している.
写真:信号待ち. ポールポジション争いは熾烈を極める.
写真:信号待ちその2.
写真:家族3人乗り.小さい子が一番前.
写真:自転車でもレースに参加可能.
原付運転者の多くは,マスクを着用している.自分の身を排気ガスから守るためだ.
白いマスクはすぐに黒ずんでしまうから,暗い色のマスクが多い.
同じ空気を数日間吸わされると思うと,何だか息が苦しいような気がしてきた.
喉もいがいがする気がする.
んん,いかん,この件については考える事をやめよう.思考停止スイッチオン.
台南の街を少し散歩すると,道端の段差が多い事に気づく.
歩いていると,いちいち躓いたり,踏み外したりするのだ.気をつけないと,アキレス腱を切ってしまう.
段差天国.アンチバリアフリー.
インフラ整備はまだまだのようだ.
実際,後から地元研究者に聞くと,水まわりのインフラが特に貧弱で,
台風などがあると濾過工程が追い付かず,数日間完全断水したりするらしい.
コンビニの飲料水は売り切れるらしいので,そんなときに水を買い占めれば,
ひともうけできるのかもしれない.
別にしたくないけど.
写真:一人一機.ってなんだ?たぶんゲームセンターではなく,何らかの診療所的なところ.
写真:昭和天皇が植えたというガジュマルの木.占領時代の遺物.
現地の食べ物についていえば,
個人的には割と好きなものが多かった.大豆製品が多く,実際豆腐はおいしい.魚もおいしい.
そしてとにかく安い.日本人の感覚からしたら,三分の一から半分くらいの値段で飲み食いができる.
写真:海鮮料理屋.好きな魚を選んで好きな調理法を指定する.
写真:魚を蒸したもの.臭みもなく,淡泊な味わい.
写真:これは魚ではない.勘のいいひとには何だかわかるはず.小骨が多い.
写真:日本ではあまりお目にかからない,臭豆腐.ひとかけら口に含むと,納豆を食べられない外国人の気持ちがわかる.
写真:烏賊のくちばしを揚げたもの.これは誰でもおいしいというはず.
台湾の人々を表現しようとすると,無邪気という言葉がしっくりくる.
市内では毎日,どこかしらで夜市(縁日みたいなもの)が開かれ,たくさんの人が集まる.
台湾在住の日本人は一度経験したらもう十分,というこの夜市に,
地元民は大学生でも喜んで駆けつけるわけである.原付を駆ってスモッグを生成しながら.
朝は朝で,大学キャンパス内に大学生が集まり,集団ダンス(?)に興じている.
すれてしまった日本人の感覚からしたら不安を覚えるくらいに,むしろ暴力的といってよいほどに平和な,
理不尽なまでに健全な,そんな雰囲気が溢れているのである.
人によって感じる事は違うと思うが,個人的にはその健全性が羨ましい.
写真:ダンスというよりヲタ芸.ヲタ芸を知らない人は,自分でググッてください.筆者も詳しくはないので.
そういう国だから,逆に,これからの経済・技術発展に関して大きな可能性を
目の前に突きつけられているような気分にもなる.
例えば台湾の宇宙科学技術開発も,今後ますます伸びていくに違いない.
* * * * *
その台湾宇宙科学(特に観測機器開発・打上げ)の成長過程において,
これから加速的に台-日協力を深めていきましょう,というのが今回のワークショップの主旨である.
その名もTaiwan-Japan Space Instrument Workshop.キックオフ的な集まりであるから,
発表内容そのものというよりは,人的交流が重要である.
私も夕食やポスターセッションを利用して台湾の大学院生と会話した.
ガールフレンドの話から金属メッシュ近傍の電位構造の話まで,いろいろ,だ.
率直に申し上げて,その大学の院生達は自分の院生時代と比べれば
とても優秀であると感じた(もちろん個人差はあるが).
そしてなにより無邪気.
将来はぜひとも日本に来てもらい,専門知識ならびに文化的な交流を深め
たい.
そのためには,アジアの大学院生やポスドクが来日するためのインフラを,
日本側が整備しなければならない.