2008年度 惑星大気・電離圏セミナー


■場所:A棟5階大会議室
■時間:金曜 14時30分 (変更の場合あり)
■連絡先:安藤 紘基 ( hando [AT] isas.jaxa.jp )

 
開催日時・場所 発表者 (所属・身分)
2月23日(月) 10時30分 蜂谷宣人
卒研発表練習
地球電離圏の高緯度帯から伸びる磁力線は磁気圏尾部に結びついている。同一磁 力線内で電離層と磁気圏尾部におけるプラズマの静的圧力を比較すると前者は後 者に比べてはあるかに高いので、電離層中の熱プラズマは磁力線に沿って流れ出 す。このようなプラズマの流れをポーラーウインドとよび、初期の理論によれば イオン流の逸散速度はプラズマの熱速度に近い値を持つはずであった。しかしそ の後、超音速であること、そこから、ポーラーウインドは分極電場によって引き 起こされ、軽いH+が支配的であることなどが議論され、1980年代にはDE1衛星に よってポーラーウインドが超音速であることが観測的に実証された。  1989年2月に打ち上げられた衛星EXOS-D(あけぼの)には thermal (0 25 eV) およびsuprathermal (25 eV 数 keV) のエネルギー領域にあるイオンの分布関 数を測定するため、Suprathermal Ion Mass Spectrometer (SMS)が搭載された。 SMSが観測する、衛星のスピン平面内でのイオン分布関数からH+,He+等のそれぞ れのイオンのドリフト速度、温度、および密度を求めることが出来る。本研究で は、ポーラーウインドにおける分極電場の光電子による寄与について、SMSによ るイオン速度の高度プロファイルと数値計算から得られる熱的電子のみによる分 極電場を考慮したイオン速度の高度プロファイルを比較することで、その可能性 を議論する。
2月2日(月) 14時30分 北野谷有吾・空華智子
修論発表練習
TBD
1月21日(水) 10時00分 空華智子(中村研・M2)
Venus Express/VIRTIS近赤外分光撮像データを用いた金星の雲の粒径分布に関する研究
金星は地球とほぼ同じ大きさでありながら,我々の住む地球とは大きく異なり 地表面では730K,90気圧と高温高圧になっている.この様な金星特有の大気環境 の維持には,高度45〜70kmに存在する全球を覆う分厚い雲が太陽光あるいは下層 からの熱放射を吸収することで大気にもたらす莫大なエネルギーが強く影響して いると考えられている.同時にこのエネルギーは金星での大気力学にも大きく影 響し,現在も未解明である大気が金星の自転を追い越し回転する「スーパーロー テーション」と呼ばれる現象の維持に深く関係していると考えられている.雲が 大気に与える影響の理解には雲層領域の観測が重要である.これまでに行われた 金星の雲層領域の探査は数個の降下プローブによる直接観測が主力であった.そ れによると金星の雲粒子の粒径分布は,Mode1(0.3μm),Mode2(1.2μm),Mode3(3.6 μm)の3つの代表的な粒径を中心として分布していることがわかった.しかしなが ら,プローブによる直接観測は,時間的・空間的に限定されたものであり,観測 された局所的な雲構造が惑星全域の大気運動・熱収支との相互作用を説明するた めには,更なる時間的・空間的に連続的な観測により金星の雲層域の物理を理解 する必要がある. 本研究では,金星の雲構造と熱収支とスーパーローテーション・ハドレイ循環な どの大気力学との相互作用を理解する第1歩として,まだ観測的に不十分な金星の 雲層における光学的厚さと粒径分布を導出することを目標とした.光学的厚さは 大気や雲が光を吸収するそのしやすさの指標となるものであり,得られる値から 雲が金星大気にもたらすエネルギーを知ることができる. 2006年4月より欧州宇宙機関ESAの金星探査機Venus Expressが金星を周回軌道上か ら観測を行っている.Venus Express に搭載されている分光撮像装置(Visible-Infrared Thermal Imaging Spectrometer, VIRTIS) は波長1.05-5.19μmの光を観測することで金星を取り巻く雲の画像を得ており, 本研究では赤外域波長で撮像された雲画像データを基に解析を行った.本研究は ,VIRTIS から得られる分光撮像データの内,近赤外領域の「大気の窓」と呼ばれる波長域 (2.30μm,1.74μm)のデータを用いることで雲層内部の物理科学を探査するこ とを試みた.大気の窓波長の光は,下層大気からの熱放射の中でも金星のCO2大気 により吸収されずに雲層を通りぬけ宇宙空間に漏れ出すことができる.また,こ の光が雲層を通過する際,雲粒子から吸収・散乱を受ける.この時,雲粒子の散 乱特性は粒径ごとに異なる波長依存性を持っているため,複数の波長で撮像され た雲画像から雲層における光の輸送過程を探ることにより,雲粒子の粒径分布を 知ることが可能である.本研究ではVIRTIS による大気の窓領域の2波長の分光撮像データから得られる輝度と,惑星の縁に 行くに従い徐々に輝度値が減少する周縁減光を主要な情報源として,雲層での吸 収・散乱・出射を含む放射伝達計算を基にこの輝度値と周縁減光の傾きの値を満 たす雲層モデルを構築することを目指す.この目的を成すために本研究ではまず ,ある瞬間の金星ディスク上の1 地点(1ピクセル)において3つのモードの雲粒 子がもたらす光学的厚みの比率を求める方法を開発した.また,本解析手法を用 いて得られた結果の妥当性についても検証した.
1月16日(金) 14時30分 北野谷有吾(阿部研・M2)
極冠域における局所的プラズマ密度上昇について
一般に電離圏中の電子密度は高度とともに減少するが、極冠域においては特に密 度が小さいためラングミューアプローブなど熱的電子による電流を直接測定する ような測定器では高高度で信頼性の高い測定を行うことは難しいとされている。 例えば、太陽活動極大時において高度3000 kmでの平均的な電子密度は約 1000/cm^3 以下で、単純なプローブ特性から電子密度や温度を求めることは容易 ではない。 これに対して、科学衛星あけぼの(EXOS-D)に搭載された熱的電子エネルギー分 布計測器(TED)による長期の観測データを解析した結果、極域冠電離圏におい て通常では密度が低すぎて観測が難しいとされる高度3000km以上の領域におい て、局所的にプラズマ密度が上昇している電子密度が約1000/cm^3 を大きくこえ るような高密度のプラズマが観測される場合のあることが明らかになった。また このような高い高度における電子温度は通常は8000 K以上であるのに対し、観測 された高密度域の電子温度は通常よりも数千K低い値を示している。このような 高高度におけるプラズマ密度上昇は地磁気活動度が活発な状態で、極冠域内の不 特定な場所に局所的に出現するという解析結果が得られている。さらに、熱的お よび非熱的イオン質量エネルギー分析器(SMS)の観測からは、これらの高い電 子密度領域ではH+の沿磁力線上向き速度が平均的な値よりも数km/s遅いことがわ かった。また低エネルギー粒子測定器(LEP)の観測データからは、この領域内 でエネルギーが50eV以下の下向き電子フラックスが減少するという結果が得られ た。  また極冠域の高度約850kmの低高度を通過するDMSP衛星のイオンドリフト観測 から、TEDで局所的なプラズマ密度上昇を観測された時間帯において、約1km/sの 反太陽方向の対流が観測されており、またDMSP衛星のイオン密度観測から、低高 度でもプラズマ密度の局所的な上昇が発生していることがわかった。  さらにGPS衛星の全電子数(TEC)観測から、TEDで局所的なプラズマ密度上昇 を観測された時間帯において、SEDと呼ばれるプラズマ圏からのプラズマの輸送 現象が観測された。 これらの観測結果から局所的プラズマ密度上昇の発生メカニズム案として、地磁 気活動の活発化に伴って、プラズマ圏からプラズマがカスプ領域に輸送され、さ らに反太陽方向の対流によってプラズマ圏のプラズマがより高緯度の極冠域に輸 送した、その結果、極冠域の高度3000 km以上の高高度で高密度のプラズマとし て観測された可能性が高いと考えられる。
1月9日(金) 14時30分 大月祥子(研究員)
論文紹介
TBD
12月26日(金) 14時30分 安藤紘基(中村研・M1)
かぐや電波科学を用いた月の電離層の観測
1950年代の電波天体を用いた月近傍での電波の屈折の観測や1960年代のLuna Missionによる観測結果から月の電離層の存在(電子密度はおよそ1000/cc)が示唆された。しかし太陽風の影響や大気の稀薄さ故に理論値は1/ccであり、また過去の観測結果を否定する観測もある。しかし月の電離層についての決定的な結論が未だに出ていない事も事実である。かぐや電波科学ではこの問題に決着を付ける事を目的としている。今発表ではこれまで行ってきた観測の手法や解析結果を述べると共に、現在考案中の電離層の生成メカニズムや今後の課題と展望について論じる。
12月26日(金) 14時30分 麻生直希(中村研・M1)
共鳴散乱光による散逸イオン観測
1960年代、地球電離圏で生成された水素イオン、ヘリウムイオン、電子は極域で は磁力線が開いているため、圧力勾配によって電離圏から磁気圏へ散逸すると理 論的に考えられていた。1980年代、1990年代になると、Dynamic Explorers や Akebonoといった極軌道衛星のその場観測により、これらの散逸プラズマの存在 が実証された。一方で、質量が重たいため散逸量が限られると考えられていた酸 素イオンも多量に散逸されていることがわかった。酸素イオンの散逸過程はいま だ解明されておらず、その手がかりとして撮像観測が期待されている。 本発表では、月周回衛星SELENE(かぐや)に搭載されている超高層大気プラズマ イメージャー(Upper-Atmosphere and Plasma Imager - Telescope of Extreme ultraviolet : UPI-TEX)の撮像している物理量についての説明とそのデータを用 いた解析手法について提案した。
12月12日(金) 14時30分 麻生、安藤、北野谷、神山、三津山、大島
研究進捗報告会
TBD
12月4日(木) 15時30分 神山徹(中村研・D1)
黄道光観測報告
夜空が非常に暗い地域では日の出前や日没後に地平線から天球上の黄道に沿って光る 淡い光の帯を見ることができる。この光の帯を「黄道光」と言う。黄道光は惑星 間空間に浮かぶ数マイクロメートル程度のダストが太陽光を散乱(ミー散乱)することから見え る光である。このダストは太陽系にある小惑星の破片や短周期彗星の塵によってもたらされる と考えられている。地球近傍にあるダストは太陽光動圧の影響からおよそ1億年以内に太陽に落下す ることが分かっており、現在も黄道光が見えることから惑星間空間には常にダストの供給が行われていな ければならないが、存在するダストの量を説明できるほどにはその供給源は突き止められていない。 本発表では2006年11月にマウナケア山頂で行った黄道光の観測について報告する。 観測は黄道光の対称面を観測し黄道光をもたらすダストの公転面を探ることで ダストの起源天体を推測することを目標に行われた。また発表ではプラネットCでの黄道光観測の計画についても簡単に紹介する。
11月28日(金) 14時30分 三津山和朗(中村研・D2)
TBD
TBD
11月14日(金) 16時00分 佐藤毅彦(教授)
TBD
TBD
10月24日(金) 14時30分 阿部琢美 (准教授)
超高層大気領域の特徴と研究意義
宇宙科学の中での電離圏研究の位置づけと特徴についての発表を 行う。 電離圏は下層大気や磁気圏と異なり、中性大気と電離大気が共存する 領域であり、またそのために大気粒子は複雑な運動を行っている。 電離圏を含む超高層大気領域は太陽輻射エネルギーを受け、様々な形 で外部領域と運動量・物質の輸送を行ない、特徴的な影響を与える。 最近の研究からは、太陽活動に強く依存して変化する電離圏の病像が いろいろな観測によって明らかにされている。 発表では、こうした観測例をいくつか紹介するとともに、観測ロケッ トを用いた超高層大気領域に関する研究の現状をまとめる。
10月3日(金) 14時30分 大島亮 (中村研・D2)
火星大気の進行波とSalby法による初期結果
火星大気では、自転の速さから傾圧不安定などの不安定性が、また惑星スケ ールの地形の起伏の大きさからプラネタリー波などの波動が、重要と考えられ ている。これらの波動については理論・観測の両面から様々な研究がなされ、 特に観測面では Banfield et al. (2003, 2004) による研究で、東西波数1〜4 程度の定常波と進行波の網羅的な分析がなされている。しかし、様々な波同士 がどのような関係にあるかは、あまり言及されていない。 私はこれまでの研究で、火星探査機 Mars Global Surveyor 搭載の赤外干渉 分光計 Thermal Emission Spectrometer が取得した火星大気の温度データの 解析を進めてきた。今回、地球大気のデータ解析で発達してきた手法である Salby法を火星大気の温度データに用いて、火星大気中の波動の波数空間の分 布を求めた。この分布から、様々な波動の相互関係を明らかにすることを目指 している。 今回の発表では、研究の原点となった Banfield et al. (2004) の概要を紹 介すると共に、Salby法による解析の初期結果をお話ししたい。
9月26日(金) 14時30分 大月祥子 (研究員)
金星OH夜間大気光の観測 論文紹介と観測計画
大気光は金星上層大気の熱収支や組成を支配する力学・化学過程を理解する上 で重要な情報源である。Venus Expressに搭載された赤外分光器VIRTISは、 地球以外の惑星で初めてのOH大気光の検出に成功した。これは、金星上層大気 の化学において重要な分子であるH, OH, O3への観測的制限を与える。 本発表では、金星OHの発見論文"First detection of hydroxyl in the atmosphere of Venus" (Piccioni et al, 2008. A&A 483, L29-L33)を紹介し、金星大気光 の関わる化学について解説する。また、現在VIRTISチームと計画中であるOH, O2 大気光の衛星-地上同時観測計画の具体的な方法を議論する。
9月19日(金) 13時30分 今村剛 (准教授)
金星の雲物理
金星の濃硫酸の雲は光化学と大気力学によって駆動される複雑な系である。一般 に、雲層上部は光化学で作られるエアロゾル層で、雲層下部は雲の下に溜まって いる硫酸蒸気が大気運動によって運び上げられて凝結したものと考えられている 。金星大気のエネルギーバランスと物質循環を理解する上で、この雲システムを 解明することが欠かせないが、化学にも力学にも多くの未解決問題がある。雲層 の平均的な鉛直構造は鉛直1次元モデルで説明されてきたが、そこでは輸送過程が ある意味恣意的に与えられており正しく理解されたとはいえない。Imamura & Hashimoto (1998, 2001)は子午面循環が全球的な雲構造を支配することを論じた。McGouldrick & Toon (2007)は、雲層の放射収支から決まる大気安定度に依存してモデル内の鉛直拡散係数を 変化させ、雲が下層大気からの赤外放射を吸収することで生じる熱対流が雲自ら を維持することを初めて示した。
7月11日(金) 16時30分 空華智子 (M2)
近赤外画像解析により金星雲の異なるモード粒子の 比率を決定する新しい手法の開発
金星の雲の放射や力学に対する寄与を知るためには、 大粒子から小粒子までの雲粒それぞれの、時間・空間変 化を調べる必要がある。本研究は、limb-darkeningを主要 な情報源として、Venus Express/VIRTISから得られる窓波 長2.30μm、1.74μm、1.18μmの画像データの解析と、雲 層での吸収、散乱、出射を含む放射伝達計算とのフィッテ ィングにより、雲層モデルを構築することを目指している。 今回は、ある時間での金星の雲層において、Mode1、2、3 粒子の比率を同時に導出したので、その結果を報告する。
6月27日(金) 16時30分 高橋文穂 (研究員)
GOSATの校正と検証
来年1月に打ち上げが予定されている温室効果ガス観測技術衛星GOSAT の研究公募RA(Research Announcement) の締め切りが7/7に迫っているが、このRAで期待される5つの研究分野の中で、JAXAが担当する「校正(Calibrarion)」と環境研が担当する「検証(Validation)」 計画の概要について、紹介します。
6月13日(金) 16時30分 黒田さん
タイトル未定
概要:
5月16日(金) 16時30分 北野谷有吾
連合大会の発表練習
概要: