2015年度 太陽系科学研究系 STPセミナー
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■場所 :A棟5F会議室 (変更の場合は赤字)
■時間 :毎週火曜 16:00-18:00 (変更の場合は赤字)
■連絡先 :藤本研D2 清水 健矢(k.shimizu [AT] stp.isas.jaxa.jp)
■備考 :発表時間は一人当たり45分程度 * 2人
開催日時・場所 | 発表者 (所属・身分) |
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4/21(火) 16:00- 5F 会議室 | 自己紹介 北村(PD),疋島(PD) |
4/28(火) 16:00- 5F 会議室 | 自己紹介 須藤(M1),長谷川(M1),星(M1),奈良(M1) |
5/12(火) 16:00- 6F 会議室 | 自己紹介 小美野(M1),坂本(M1),下川(M1),武藤(M1) |
5/19(火) 16:00- 6F 会議室 | 自己紹介&JpGU発表練習 山田(M2),大石(M2),小川(M2),加藤(M2) |
5/26(火) | JpGUのためお休み |
6/2(火) 16:00- 5F 会議室 | 小美野(M1),松本(PD) |
6/9(火) 16:00- 5F 会議室 | コロラド大学LASP Stefan Eriksson |
6/16(火) 16:00- 5F 会議室 | 伴場(D3),笠原(助教) |
6/23(火) 16:00- 5F 会議室 | 浅村(助教),佐藤(PD) |
6/30(火) 16:00- 5F 会議室 | 今村(准教授) |
7/7(火) 16:00- 5F 会議室 | 飯田(PD),齋藤(准教授) |
7/14(火) 16:00- 5F 会議室 | 清水(准教授),金尾(OD) |
7/21(火) 16:00- 5F 会議室 | 長谷川(助教) |
7/28(火) 16:00- 5F 会議室 | 篠原(准教授),宮本(D3) |
09/08(火) 16:00- 6F 会議室 | Carlos(PD) |
09/15(火) 16:00- 5F 会議室 | 修論中間発表 小川(M2) |
09/24(木) 14:00- 6F 会議室 | 【臨時】修論D論中間発表 |
09/29(火) 16:00- 5F 会議室 | 修論中間発表 加納(M2),川畑(M2),山田(M2) |
10/06(火) 16:00- 5F 会議室 | 中村(教授),Lee(PD) |
10/13(火) 16:00- 6F 会議室 | 岡(UC berkeley),寺本(PD) |
10/19(月) 16:00- 5F 会議室 | 【臨時】D論提出前発表 飯島(D3) |
10/20(火) 16:00- 5F 会議室 | 早川(教授),山崎(助教) |
10/27(火) 16:00- 5F 会議室 | SGEPSS発表練習 星(M1) |
11/03(火) | SGEPSSのためお休み |
11/10(火) 16:00- 6F 会議室 | 修論提出前発表 小川(M2),大石(M2),加藤(M2) |
11/17(火) 16:00- 5F 会議室 | 修論提出前発表 加納(M2),川畑(M2),山田(M2) |
11/24(火) 16:00- 5F 会議室 | 佐藤(教授),石川(PD) |
12/1(火) | 磁気圏シンポジウムのためお休み |
12/8(火) 16:00- 5F 会議室 | 修論提出前発表 庄田(M2),大場(D1) |
12/15(火) | AGUのためお休み |
12/22(火) 16:00- 5F 会議室 | 清水(D2) |
12/29(火) | 年末休み |
01/05(火) | 年始休み |
01/12(火) 16:00- 6F 会議室 | 星(M1),須藤(M1) |
01/26(火) 16:00- 5F 会議室 | 修論発表練習 加納(M2),川畑(M2),山田(M2) |
01/29(金) 16:00- 5F 会議室 | 修論発表練習 小川(M2),大石(M2),加藤(M2) |
02/02(火) 16:00- 5F 会議室 | 下川(M1) |
02/09(火) 16:00- 5F 会議室 | 奈良(M1),武藤(M1),長谷川(M1) |
2/16(火) 16:00- 5F 会議室 | 村上(豪)(PD),坂本(M1),下川(M1) |
02/23(火) | 惑星圏シンポジウムの為お休み |
03/01(火) 16:00- 5F 会議室 | 安藤(PD),村上(真)(PD) |
03/08(火) 17:00- 5F 会議室 | 野村(PD) |
03/15(火) 16:00- 5F 会議室 | 榎本(D2) |
開催日時・場所 | 発表者 (所属・身分) |
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03/15(火) 16:00- 5F会議室 | 榎本(D2) |
偏光観測装置「HONIR」を用いた金星上層雲構造の偏光分光解析 | |
概要: 2012年から行っている可視光での金星の偏光観測により、極域ヘイズの光学的厚さが減少し続けていることがわかってきた。このままさらに減少を続け、0となるのか微小な平衡点に落ち着くのか、それを正確に突き止めることはヘイズや雲の生成維持機構を考える上で重要である。 観測される金星の偏光度にはヘイズのみならず主雲の情報も含まれるため、主雲パラメータの決定精度はヘイズパラメータの決定精度に影響する。これまでヘイズの光学的厚さを推定する際、主雲層のパラメータは先行研究を参照していた。しかしヘイズが光学的に非常に薄くなり観測される偏光度への寄与が小さくなった今、ヘイズパラメータを精度よく決定するには主雲のパラメータも観測に基づき正確に決定する必要がある。 我々は雲とヘイズの光学特性が近赤外線領域(1μm<λ<2.5μm)において特徴的な振る舞いを示すことに着目し、雲のパラメータをヘイズと独立に決定する手法として偏光分光観測を着想した。本発表ではモデル計算による偏光スペクトル(偏光度の波長依存性)のパラメータ感度テスト結果、および2015年5月に行った広島大学東広島天文台「かなた」望遠鏡装着のHONIR装置による観測結果の解釈について述べる。 | |
03/08(火) 17:00- 5F会議室 | 野村(PD) |
太陽風粒子の熱構造発展の解明に向けた超小型磁場観測器の開発研究 | |
概要: 太陽風の温度 T は太陽圏動径方向に沿って断熱的に冷えると考えられていたが,惑星探査機Voyager 2 号の観測によると,断熱変化で得られる予想温度(T=T0?R-4/3)よりも太陽風は温かい(T=~T0?R-1/2)ことがわかっている [Richardson and Paularena, 1995].これは,宇宙空間中における太陽風粒子の加熱を示唆しているが,その加熱物理機構は未だ明らかにされていない.この加熱機構のひとつとしては 太陽風中のプラズマ乱流の散逸が有力視されている.惑星間空間中の太陽風乱流スペクトルはHelios1衛星[Roberts+1987]や Ulysses衛星[Goldstein+1995]によって,地球近傍はCluster衛星[Sahraoui+2007?2010]によって 調べられ,乱流のエネルギーEと波数kの関係(log10(E)〜kA+E0)には,イオンや電子の慣性長に対応するkでのキンクが存在すること が観測されている.これらのキンクは,波動粒子相互作用によって乱流から粒子へエネルギーが受け渡された可能性を示しているが,粒子にエネルギー を渡す役割を持つはずの波動モードがわからない等,物理機構は未解明である. これまでの惑星間空間での観測的研究は単機衛星によるものであったため,時間・空間変化を分離することができず,3次元物理量である波数ベクト ルを導出できなかった.このため波動モード決定に必要な分散関係を明らかにすることができなかった.本研究では,ソーラーセイルミッション(木星 トロヤ群小惑星探査)の大規模な(一辺~50m)薄膜太陽電池パネルの4隅に磁力計を搭載し,波数を計測することを目指して,センサ部と信号処理 部一体型の超小型・軽量, 省電力かつ低ノイズの磁場観測器を開発している.本発表では,回路の各機能部分における性能について,シミュレーション結果を報告する. | |
03/01(火) 16:00- 5F会議室 | 安藤(PD) |
電波掩蔽法による金星下層大気の熱構造に関する観測的研究 | |
概要: 大気科学を理解する上で、気温は最も重要な物理量である。なぜなら、気温は大気循環・熱放射・エネルギーバランスを司るからである。金星では、Pioneer VenusやVenus Expressミッションで実施された光学機器観測によって雲層より上の気温分布は良く分かっている。しかし、金星には全球的に分厚く分布する雲があるために、光学機器によって雲層から下の温度分布を精確に知ることは難しく、過去に実施された探査機やプローブによる直接観測くらいしか気温の観測例がない。この問題を克服する有力な手段の一つが、気温の高度分布を高精度 (温度測定誤差~0.1 K)・高分解能 (高度分解能~1 km) で測定できる電波掩蔽法である。 本研究では、Venus Expressミッションで得られた電波掩蔽観測データを解析し、雲層の下の気温分布を全球的に把握することが目的である。本セミナーではその初期的な解析結果を示し、また過去に実施されたプローブによる直接観測の結果と比べて議論する。 | |
03/01(火) 16:00- 5F会議室 | 村上(真)(PD) |
コンターダイナミクスによるシミュレーション | |
概要: 2次元流体のシミュレーション技法の一つにコンターダイナミクスがある。コンターダイナミクスは、渦度場の渦度コンターを点列で離散化することで、効率良くシミュレーションを行なうことが可能な方法である。今回は、コンターダイナミクスの概要と、筆者が行なってきたシミュレーションコード開発について発表する。 | |
2/16(火) 16:00- 5F会議室 | 村上(豪)(PD) |
次期惑星探査に向けた新型紫外線検出器の開発 | |
概要: 我々はこれまで惑星大気・プラズマ観測における極端紫外線観測技術とその有用 性を実証してきた。一方、従来の装置設計で達成できる性能はすでに上限に達し つつあり、将来の探査計画において新たな突破口が必要であることもわかってき た。本研究では可視光用の画像素子であるCMOSイメージセンサを応用した新型の 極端紫外線検出器を開発し、将来の惑星探査計画に向けて検出器の分解能および ダイナミックレンジを向上させることを目的とする。また試作した検出器に機械 環境試験や熱真空試験、放射線照射試験を実施し、飛翔体への搭載可能性を検証 する。本セミナーでは現在までの開発状況について紹介したい。 | |
2/16(火) 16:00- 5F会議室 | 坂本(M1) |
スポラディック E 層内の電子温度・電子密度構造に関する研究 | |
概要: 下部電離圏に発生するスポラディック E 層の空間構造解明を主目的として 平成 26 年 8 月 17 日 19 時 10 分 00 秒 に宇宙航空開発機構内之浦 宇宙空間観測所より観測ロケット S-520-29 号機が打ち上げられた。 このロケットには高速サンプリングが可能なラングミュアプローブが搭載 されており、且つ新たな解析方法を導入したことによってこれまでの 観測よりも細かな時間(空間)間隔で、スポラディック E 層内の 電子密度・温度の空間構造の推定が可能になった。その結果として、 電子密度が増加するスポラディック E 層内における電子温度の変化が はっきり示され、外部との境界付近から中心に向って温度が次第に 減少していく傾向が明らかになった。 本発表では観測ロケットで得られた電子温度分布がスポラディック E 層内の 熱エネルギー収支に対してどんな示唆を与えるのか、 数値的に検討を行った結果について報告を行う。 | |
2/16(火) 16:00- 5F会議室 | 下川(M1) |
雲微物理計算を用いた金星雲形成シミュレーション | |
概要: 金星は硫酸を主要な構成物質とする雲とCO2が豊富な大気を持つ。前者により 紫外光が雲層より下に届かず、また後者が大きな温室効果を発生させることか ら、雲層 40-70 km の上部では光化学が、下部から地表付近では熱化学がそれぞ れ化学反応の中心となる。硫酸の大気中での循環や凝結の有無に加え、光化学反 応による生成及び熱化学反応による解離を考慮することで、金星における雲形成 の定量的・定性的な理解を深めることが可能である。 本研究は高度方向、緯度方向の2次元における水と硫酸の液体数密度の時間発 展を基礎方程式として解くことで、雲形成の様子を計算することを目的とする。 具体的には、凝結・生成・解離の各量について、雲微物理モデルを用いて計算す る。本発表では、Imamura and Hashimoto, 1998 における算出方法を再現し、そ の結果について議論する。将来的に移流・拡散について対流計算を行い、両モデ ルを組み合わせた計算結果を得ることが目標である。 | |
02/09(火) 16:00- 5F会議室 | 奈良(M1) |
Venus Express VMCの雲画像解析による金星雲頂の微細構造の研究 | |
概要: 金星の雲の低緯度では空間スケールの小さい、乱流のような模様が観察され る。従来、輝度の変化が小さく雲の構造が見にくいとされてきた、可視波長の観 測でもこの低緯度の構造は観察できる。可視波長領域は雲の吸収物質による影響 が少ないため、雲の構造をよく表していると考えられ、さらに太陽放射の大半は 可視波長領域にあるため金星のエネルギー収支にも関わっている。これらの理由 から可視波長で金星の雲の形態を理解することは重要である。 本研究では、欧州の金星探査機Venus Expressに搭載されていた撮像装置VMCに より得られた可視画像を用いて金星の雲の低緯度にある微細な構造について調べ た。輝度の微細な空間変化を強調するために空間差分を行う際に、同時に検出器 の読み出しに伴う筋状の固定ノイズを取り除くよう工夫することにより、輝度の 変化に乏しい可視画像でも雲の動きが明瞭になった。 | |
02/09(火) 16:00- 5F会議室 | 武藤(M1) |
金星polar ovalの形状復元と時間変化 | |
概要: Polar Ovalは可視、紫外の両波長帯で金星の南極域において観測されている環状構造である。今までPolar Ovalは昼面でしか観測されてきておらず全体構造は不明であった。今回Venus Expressに搭載されているVMCの画像を用いてPolar Ovalの全体構造の復元を試みた。また、Polar Ovalの形状の時間変化を追いその変化の周期性について調べた。最後に同じくVenus Expressに搭載されているVIRTISの赤外で撮影した画像との比較を行う。 | |
02/09(火) 16:00- 5F会議室 | 長谷川(M1) |
原始惑星系円盤のダスト沈殿層におけるストリーミング不安定性 | |
概要: 原始惑星系円盤において、固体微粒子のダストから成る微惑星の形成過程は、相 反する2つのモデルが存在する。その内の一つは、円盤中心面へのダスト沈殿が 進むと、ダスト層が自己重力不安定を起こして、キロメートル・サイズの微惑星 が形成されるというものである。重力不安定が生じるためには、円盤の中心面で ダスト沈殿層が非常に薄くなり、ダストの密度が重力不安定の臨界密度を超える 必要がある。 本研究では、動径方向のガスとダストの速度差から生じるダスト沈殿層でのスト リーミング不安定性(Johansen & Youdin 2007)に注目し、ダストガス比が?1の 薄いダスト層のおいて、実現される最大ダスト密度を調べた。 | |
02/02(火) 16:00- 5F会議室 | 下川(M1) |
対流計算モデル及び雲微物理モデルを用いた金星雲形成シミュレーション | |
概要: 金星雲の主構成物質である硫酸は、雲自身の紫外不透明性とCO2温室効果によ り、上層大気では光化学反応で生成し、下層大気では熱化学反応で解離する。ま た温度の急激な高度変化は硫酸の凝結可否を大きく左右し、地球と大きく異なる 雲の形成や動きの様子が表れる。本研究は高度方向、緯度方向の2次元における 水と硫酸の液体数密度の時間発展を基礎方程式として解くことで、雲形成及び移 動のメカニズムを解明することを目的とする。具体的には、基礎方程式中の移流 項と拡散項に木星で用いた対流計算モデル(Sugiyama et al. 2013)を、落下項と 生成消滅項に雲微物理モデル(Imamura and Hashimoto, 1998)を採用する。本発 表では、後者の雲微物理モデルを再現し計算した結果について、物理的な妥当性 を述べる。 | |
01/29(金) 16:00- 5F会議室 | 小川(M2) |
新しい高精度MHDスキームの磁気リコネクションへの応用 | |
概要: 磁気リコネクションは反平行の磁力線が繋ぎ変わることで磁気エネルギーを爆発的に解放する現象であり,太陽フレアや地球磁気圏の大規模な対流駆動等に対して重要な役割を果たす.大規模物理現象の再現に電磁流体力学(MHD)シミュレーションがしばしば用いられる.MHDではプラズマを流体として扱い,個々の粒子の集団的な振る舞いを記述できるため,マクロスケールの物理現象の再現に適しているためである.しかし磁力線が繋ぎ変わる現場である拡散領域では,MHDスケールでは解像できない運動論的効果が重要になる.MHDで磁気リコネクションを再現する場合,拡散領域で発生する異常抵抗を考慮する必要があり,様々なモデルが提案されてきた.本研究ではKawai[2013]により提案されたMHDスキームを用いて磁気リコネクションの再現を試みた.このスキームは,MHDスケールの物理が解像できない場所にのみ人工的な抵抗を加えることにより不連続面を捕らえるという手法であるが,このスキームが磁気リコネクションに適応可能かどうかは明らかではない.そこで本研究では,異なる複数初期条件でシミュレーションを実行し,磁気リコネクションがどのように再現されるかを調べた.まず反平行の対称磁場構造を仮定した.その結果,人工拡散が拡散領域に効果的に働き磁気リコネクションを卓越させた.磁気リコネクションの発生効率を示すリコネクションレートを求めると,粒子計算と同等の高い値を達成することが分かった.また,複数の解像度で計算を行い,リコネクションレートを上昇させる要因について確認した. 次に,より現実的な状況下である地球磁気圏前面を想定した磁気リコネクションを考えた.地球磁気圏前面は非対称磁場構造であり,様々な磁気シア角を持つ.このような磁場構造ではカレントシートの両側でプラズマベータが異なる.粒子シミュレーションでは,磁気シア角とプラズマベータの値の差に依存して磁気リコネクションの発生が抑制されることが示されている.この状況下で磁気リコネクションの振る舞いがどのように変化するか確認すると共に磁気リコネクションの抑制が本MHDスキームでも再現可能か調べた.拡散領域の電流密度の強さは反平行対称磁場と同等の値であったが,人工拡散は小さい値が得られた.よって反平行対称磁場構造の場合と比較するとリコネクションレートは小さい値を示したが,磁気リコネクションを完全に抑制することはできないことが示唆された. | |
01/29(金) 16:00- 5F会議室 | 大石(M2) |
月・惑星探査用飛行時間型質量分析器(リフレクトロン)の開発 | |
概要: 太陽系探査において、質量分析器はその 場での地球磁気圏や月・惑星周辺のプラズマ計測、中性大気計測、同位体計測、揮発性物質計 測等に幅広く用いられている。例えば、2012年に火星のゲールクレーター に着陸したNASAの火星探査車CuriosityのSAMにはQMSが搭載され、ゲールクレーターで揮発性物質や地層の年代をその場で計測した。 このように、月・惑星の表層物質計測を目的とした質量分析器の開発は日本が月・惑星の着陸 探査を進める上で極めて重要であるが、国産の着陸探査用質量分析器が宇宙機に搭載された例はない。また、質量分析器はこの物質計測に加え て、その場年代計測システムの質量分析部としても利用できる。その場での年代計測が可能となれば、月の進化や火星のノアキス代からヘスぺ リア代に起きた気候変動の過程について制約を課すことができる可能性がある。 これまでに東京大学のグループでは地上実験でLIBSとQMSを用いたその場K?Ar年代計測システムの開発を進めており、実験室モデルで約10%の計 測精度を達成している。そこで、本研究では地上実験で用いられる質量分析の手法を基に、月・惑星着陸探査を想定したその場K?Ar年代計測システムに搭載可能な全長200mm、直径100mm程度の小型のTOF-MSを開発した。小型化したTOF-MSでは、年代計測の要求性能を満たすため、寸法と電圧に関する最適 化に加えて、パルス高圧を高い繰り返し周波数で印加する方式を採用した。また、このTOF-MSは年代計測に必要な質量分解能を満たす事をSIMION7.0による計算機シミュレーションで確認している。 このシミュレーションに加えて、小型のTOF-MSの動作と性能を確認するためにTOF-MSの試験モデルを製作し、真空チャンバー内の残留ガス計測の実験に より、質量分析が可能である事を確認した。さらに、この試験モデルの設計を基に、かぐや衛星搭載の粒子計測器MAP-PACE-IMAで培ったTOF計測 の技術を応用して、TOF-MSのフライトモデルの構造について考察し、その質量を1 kg程度と見積もった。 本研 究で開発したTOF-MSは、この年代計測に加えて、表層物質の元素計測や、揮発性 物質計測、更には惑星大気物質計測への用途が期待される。例えば、レーザと質量分析器を組み合わせた小型のLaser Mass Spectrometerは惑星の表層物質計測に役立つ可能性がある。そこで、TOF-MSの試験モデルを利用して、イオンに加えて中性粒子が計測可能なLaser Mass Spectrometerの試験モデルを設計・製作した。さらに、シミュレーションや実験により、小型のTOF-MSを用いた揮発性物質計測や、惑星大気物質計測についても利用でき ることを確認した。 | |
01/29(金) 16:00- 5F会議室 | 加藤(M2) |
月磁気異常による太陽風イオン反射の質量依存性 | |
概要: 月は満月の前後を除いた約8割 の期間で地球磁気圏の外側に位置している。 この期間、月は太陽風中に存在し、月磁気異常領域上空では太陽風イオンの10パー セント程度が磁場によって反射されることが知られている。 しかしイオンの質量は磁気反射の運動を決める重要なパラメーターであるにも関わらず、反射イオンの質量依存性 についてこれまで十分な理解が得られていない。 本研究では月周回衛星「かぐや」搭載イオン観測装置MAP-PACE-IEA,IMAと 磁場観測器MAP-LMAGの観測データを用いて、月磁気異常でのイオン反射過程を定量的に理解することを目的とする。 反射イオンの解析を行った結果、太陽風H+と 太陽風He++の月磁気異常による反射が確認された。 特に反射 He++の 定量的な観測は今回が初となる。 2種類の反射イオンについて、フラックスの反射量および入射太陽風 イオンと比較した反射率を求めた他、速度、密度、温度の比較を行った。 H+とHe++で 共に反射による加熱が確認されたが、He++の方が強く減速しておりフラックス反射率も小さいことが分かった。 次に反射イオンの軌道に制限を与えるため観測角度方向を分割し、反射イオンの方向依存性を調べた。 月表面に対し垂直方向から飛来してきた反射イオンと平行方向からの反射イオンに分けてエネルギースペクトルを 調べたところ、垂直方向イオンが水平方向イオンに比べ低速度になっていることが確認された。 垂直方向で観測された反射イオンの方が低高度まで侵入した反射軌道を取るため、低高度の領域でイオン加熱が行 われ、非断熱的な反射を行うと考えられる。 また反射イオンが高エネルギーであるほど、垂直方向イオンのフラックスの方が水平方向イオンよりも急激に減少 していた。 反射 H+と反射 He++で 高エネルギーイオンのフラックス損失を比較した結果、フラックス損失の傾向にはラーマー半径依存が存在することが分かった。 これらの現象について反射H+と 反射He++の結果を定量的に比較することで、イオン反射の質量依存性を調べた。 月磁気異常領域は太陽系内で最小スケールの天体固有磁場の1つ であり、この領域でのイオン反射メカニズムの解明は月周辺プラズマ環境のみならず、他の天体が持つ多様な環境の理解にも応用できると考え られる。 | |
01/26(火) 16:00- 5F会議室 | 加納(M2) |
Hinode and IRIS Observations of the Solar MHD Waves Propagating from the Photosphere to the Chromosphere | |
概要: エネルギー 太陽彩層やコロナのように熱源から離れたプラズマを加熱するメカニズムとしては、磁力線を伝播する波によりエネルギーを運ぶ「波動加熱説」が有力な候補として考えられている。だが、太陽大気におけるMHD波動のエネルギー収支については未だに観測的な理解が不十分であり、MHD波動が太陽大気の加熱にどれだけ寄与しているのかは定量的に理解されていない。そこで我々はHinode衛星とIRIS衛星を用いて光球と彩層における波のエネルギーを比較することで、伝播の最中に散逸されたエネルギー量を見積もった。 具体的な手順を以下に記す。エネルギー量を見積もるためには、まず初めに波動のモードを同定し、伝播の描像をつかむ必要がある。Hinode衛星により得られた光球における磁場強度、速度場、放射強度の位相関係から、黒点暗部の光球ではSlow-modeの波が上下方向へ伝播していることが明らかになった。同時にIRIS衛星による観測からは、彩層では非線形化された短周期の上向きの波が卓越しているという結果が得られた。これら二つの結果から、「光球で励起されたSlow-mode波の高周波数成分だけが彩層へと伝播し、伝播する際に密度の減少に伴って衝撃波を形成してエネルギーを散逸する」という描像を得ることができた。 次のステップとして、同定された波動の伝播過程をもとに、エネルギーフラックスを計算した。観測量を用いて密度などのパラメータを見積もり光球と彩層における上空方向のエネルギーフラックスを計算したところ、それらの差分は黒点上部の彩層を加熱するために十分なエネルギー量となっていることがわかった。これは、MHD波動が黒点上空の彩層を形成するのに大きな役割を担っていることを示す重要な結果となっている。一方彩層で観測されたエネルギーフラックスはコロナを加熱するのに必要なエネルギーフラックスよりも小さく、コロナの加熱にはナノフレア等の波動以外の加熱機構が重要であることが示唆された。 | |
01/26(火) 16:00- 5F会議室 | 川畑(M2) |
フォースフリー磁場モデリングを用いた四重極磁場構造におけるホモロガスフレアの研究 | |
概要: 太陽フレアは、磁気リコネクションによりコロナ磁場に蓄積された磁気エネルがーが突発的に解放される現象として知られる。太陽フレアには「標準モデル」と呼ばれる CSHKP モデルが存在し、フィラメント放出を伴う eruptive なツーリボンフレアを良く説明する。本研究では CSHKP モデルでは解釈が難しい、4 つの磁極上でフレアリボンが観測されたホモロガスフレアの複雑な 3 次元磁場構造を調べることを目的とした。解析した領域は 2014 年 2 月 2 日に 3 回の M クラスフレアを起こした NOAA AR 11967 である。本研究ではそれぞれフレア 1、フレア 2、フレア 3 と 名付けた。太陽観測衛星「Solar Dynamics Observatory」に搭載された Atmospheric Imaging Assembly によりそれぞれのフレアにおいて 4 つのフレアリボンと 3 つのポストフレアループが観測された。3 つのフレアにおいてこれらのフレアリボンとポストフレアループの形状は酷似しており、ホモロガスフレアと称されるイベントであることが示された。 フレアリボンが現れた 4 つの磁極 (P1、P2、N1、N2) 付近の磁場構造に着目し、 非線形フォースフリー磁場モデリングによって 3 次元磁場構造を調べた。また得られた 3 次元磁場を用いて Titov (1999) で Quasi-separatrix layers (QSLs) の指標として定義されたsquashing factor を計算した。 フォースフリー磁場モデリングにより導出された磁力線の両端の足元は観測されたフレアリボンのカーネルと非常に良く一致したが、観測と一致しない磁場構造も確認され、モデリングの改善の必要性がある。磁気リコネクションが起きたと推定される squashing factor が最も高い領域は光球から 2000?3000km に位置し、比較的低い大気において磁気リコネクションが起こったことが示唆された。フレア 1 の1日前において N1 の領域でフレア直前の QSLs とは異なる構造を持っており、このことはフレア直前の N1 における QSLs が 1 日間の間で形成されたことを示唆してい る。そこで 2014 年 2 月 1 日から 2 月 2 日までの垂直磁場フラックスを測定したところ、N1 の領域で継続的にフラックス増加の傾向が見られた。この浮上磁場もしくは光球磁場フラックスの水平移動がフレアのエネルギー蓄積に貢献していることが推測される。また3 つのフレアに関して、フレアリボンは非常に類似した形状が観測されたが、X 線フラックスの時間発展は異なる振る舞いを見せた。観測からその違いはフレアの前兆現象に原因がある可能性が示唆された。フレア 1 が起こる前には フレア 1 の領域の東側でもう一つのフレアイベントが観測されており、フレア 2 の 30 分前には暗い物質の上昇する動きが観測されている。このことはフレアの前兆現象がエネルギー解放の振る舞いを変える可能性があることを示唆する。 | |
01/26(火) 16:00- 5F会議室 | 山田(M2) |
「ひので」で探る低軌道周回域における高エネルギー粒子の研究 | |
概要: 地球周辺の宇宙空間では高エネルギー粒子が存在し、放射線帯を形成している。放射線帯は太陽の活動を受け、短期的・長期的にプラズマの分布を変える。これらの粒子は人口衛星の故障の原因の1つでもあり、その研究・観測は重要である。 実際に、衛星のCCDイメージセンサでは、高エネルギー粒子の衝突が原因で、ひっかき傷のような信号(以下speckle)が映り込む。 本研究では、ひので/XRTのFLDパトロールイメージを使用し、speckleの検出を行いその変動を調査した。時間分解能は30-60秒であるが、衛星が太陽同期極軌道を取るため、常に同じ高度(約680km)での観測が可能である。2010年から2013年末までのデータの解析を行った。 speckle検出数変動から高エネルギー粒子の増加が、いつどこで起きてるか求め、その有効性を立証する。 太陽プロトンイベント時、GOES(静止軌道衛星)で観測された>60MeVのプロトンフラックスとspeckleは非常に良い相関を持つことがわかった。 また、ハウジングによる遮蔽効果から検出可能な最低エネルギーはおよそ40-50MeVになるという結果が得られた。 しかしspeckleの分布図を作成すると、放射線帯外帯の足元にあたるHorn regionのような構造が見られた。この領域では陽子は非常に少なく、電子に富んだ領域である。 speckleの生成に電子が影響してる可能性があるといえる。 今回は短期的な変動(太陽プロトン現象や地磁気擾乱とspeckleの関係)について具体的に報告する。 | |
01/12(火) 16:00- 6F会議室 | 星(M1) |
THEMIS衛星による昼側磁気圏境界面における磁束ロープの輸送の観測 | |
概要: THEMIS衛星観測データに基づいて、地球磁気圏の昼側境界面における磁束ロープの移動過程を調べた。磁気圏境界面で観測される磁束ロープは、複数のリコネクションポイントを伴う非定常な磁気リコネクションによって形成されるが、地球半径程度の大きな構造のため、多点観測によってその構造や移動過程を明らかにできる。THEMIS衛星は、2015年現在、A機、D機、E機の3機で編隊観測をしている。磁束ロープの特徴として、磁気圏界面の電流層における磁場圧、プラズマ圧の和である全圧の数nPaの上昇、境界面平行方向のイオン流速の極性の逆転、境界面法線方向の磁場成分の逆転などが挙げられる。2015年6月24日にTHEMIS衛星によって観測された低エネルギーイオン及び磁場データから、3機ともこれらの特徴が見いだされた。さらに、上記の特徴から各衛星が磁束ロープの中心付近を観測した時刻を求め、磁束ロープが二次元構造を維持して一定速度で移動していると仮定して、磁束ロープの移動速度を求めた。その結果、本イべントでは朝側に向かって約70km/sで移動していること、磁束ロープの軸はGSM座標のZ軸とほぼ平行であることが分かった。さらに、磁束ロープ内の磁束量の下限値を見積もると、約0.04MWbであった。 | |
01/12(火) 16:00- 6F会議室 | 須藤(M1) |
人工飛翔体搭載用 熱的・超熱的イオン分析器「TSAi」の開発 | |
概要: 地球周辺の内部磁気圏には放射線帯をはじめ、リングカレントやプラズマ圏など異なるプラズマ粒子環境を持つ領域が多様に存在している。 したがって内部磁気圏におけるプラズマ粒子の挙動や加速過程のダイナミクスを理解するためには幅広いエネルギー帯での観測が必要不可欠となる。 現在様々なエネルギー帯の観測に適した粒子分析器が開発され衛星に搭載されているが、熱的・超熱的と呼ばれる極めて低いエネルギー帯の粒子分析器については未だに大きな課題が残されている。 このエネルギー帯の観測においては、衛星本体の帯電が粒子の軌道に大きな影響を与える。したがって観測機器は衛星電位におけるデバイ長より外部に設置することが望ましい。 本研究においては衛星から伸ばしたブーム上に機器を設置し先端に電圧を印加することで、機器周辺の電位を0Vに制御するシステムを考案した。ブーム上への搭載と電位制御容易化のために観測機器は小型化を目指す。 本機器の設計においては、360度に視野を持つ球形トップハット型静電分析器と飛行時間分析型の質量分析器の構造を踏襲した。これらを熱的・超熱的イオン観測に最適化することで設計上では直径10cm程度までの小型化を行った。 本発表では、その概念設計およびシミュレーション結果、現在考案中の構造について述べる。 | |
12/22(火) 16:00- 5F会議室 | 清水(D2) |
圧縮を考慮した分厚い初期電流層におけるLHDIの励起過程 | |
概要: 磁気圏サブストームの成長期には、磁気圏前面での磁気リコネクションによってローブ領域に磁束が注入されることで電流層を圧縮し、単純なHarris型電流層構造から外れて電流層構造をダイナミックに変化させる。これに伴って様々な不安定が励起され、結果、尾部電流層内で磁気リコネクションが起こりサブストームを駆動するとされる。従って、圧縮により電流層構造がどのように変化するか、さらには不安定の励起にどのような影響を与えるかを理解することは磁気リコネクションの励起過程、ひいてはサブストームを理解する上で必要である。特に近年、電流駆動型不安定の一つである低域混成ドリフト不安定(LHDI)の非線形効果による薄く強い電子電流層の形成が、ティアリング不安定の成長率を増加させ磁気リコネクションに貢献することが知られている。本研究では、圧縮の効果を取り入れた2次元(YZ面)粒子シミュレーションを行い電流構造や電流層幅、さらにはLHDIの安定性に圧縮が与える影響を調べた。その結果、圧縮は(1)電流構造を変えるが、イオンに関して電流層を薄くしないこと、(2)密度勾配を増加させ単純なHarris型では不安定化しない厚さの電流層においてもLHDIが不安定化することが分かった。本発表ではこれらを踏まえて磁気リコネクションの励起過程について議論する。 | |
12/8(火) 16:00- 5F会議室 | 庄田(M2) |
高速太陽風中におけるアルフベン波の非線形反射過程 | |
概要: 一次元磁気流体シミュレーションにより、一様場中でアルフベン波が非線形効果 を介して反射する過程について調べた。線形過程に限るとアルフベン波は非一様 な背景場中でのみ反射するが、非線形効果を含めると一様場中でも反射が可能と なる。たとえばparametric decay instabilityがそのような「非線形反射」の一 種である。decay instabilityの素過程の研究では初期条件として単色・円偏光 のアルフベン波を仮定するが、これは現実的ではない。そこで私たちは赤色ノイ ズ・直線偏光のアルフベン波を初期条件とし、その非線形発展を解析した。得ら れたデータに我々が考案した局所特性量解析を用いることで、擾乱を波動ごとに 分解してその挙動を調べることに成功した。この解析を通して、我々は太陽風中 では以下のような過程が非常に効率よく働くことを示した。それは直線偏光アル フベン波の不連続面形成が新たなエネルギー供給ルートを形成し、さらに左向き アルフベン波と左向き音波が三波共鳴を介してエネルギー交換を行うというもの である。この過程は広く知られたdecay instabilityとは異なる、新たに発見さ れ た過程である。さらに得られた結果を観測データと比較することで、我々の 発見 した非線形反射過程が高速太陽風中でdynamical alignmentに反して効率よ く反 射が生じるという観測結果をよく説明することも示した。 | |
12/8(火) 16:00- 5F会議室 | 大場(D1) |
太陽観測から探る、恒星吸収線プロファイルの非対称形成メカニズム | |
概要: 恒星スペクトルでは吸収線に非対称性が見られるが、それは恒星表面(光球)の対流情報を知る重要な手がかりであると考えられている。非対称性は、吸収線プロファイルを等分割する曲線である bisector を用いて評価され、太陽類似恒星では典型的に C-shape を示すことが報告されている(Gray 1986)。 C-shape 形成メカニズムは、次に説明する Dravins et al. (1981) による説明が広く認識されている。まず、光球は内部から熱いガスが上昇する「粒状斑」と、冷却されたガスが下降する「間隙」と呼ばれる2つの構造によって覆われていると考えられる。これらは、それぞれ blue-shift した明るい吸収線プロファイルと red-shift した暗い吸収線プロファイルを形成する。それらの混合により、 C-shape が形成される。一方で、これまでは最も近い恒星である太陽でさえ、粒状斑と間隙の構造を分離しつつ十分な精度のスペクトルを得ることは難しく、その他の恒星においては粒状斑と間隙を分離するのは不可能に近い。そのため、本当に Dravins et al. (1981) で提案されたメカニズムで説明できるのか、疑問が残っている。本研究では、高精度を持つ太陽観測衛星「ひので」を用いることによって、太陽における C-shape 形成メカニズムに迫る。粒状斑と間隙について、対称な吸収線プロファイルでフィッティングした結果から C-shape が再現されるかを検証した。解析の結果、このような対称な吸収線プロファイルの重ね合わせでは、 C-shape が再現できなかった。これは、太陽においては Dravins et al. (1981) 以外の理由で C-shape が形成されていることを示す。一方で、粒状斑と間隙における吸収線プロファイル自身に、強い非対称性が見られた。発表では、このプロファイル自身の非対称性と C-shape 形成について議論する。 | |
11/24(火) 16:00- 5F会議室 | 佐藤(教授) |
あかつきIR2カメラ | |
概要: IR2カメラは金星CO2大気に見られる波長2ミクロン帯「窓」で大気の 中層・下層を「透視する」装置である。1980年代半ばに発見された 波長1.74um, 2.3um窓において金星夜面を観測することで、高温の大 気が発する熱赤外線を背景光源とし、中・下層の雲を可視化するこ とができる。それにより、中・下層大気の運動、雲の生成や消滅、 異なる波長の観測を組合わせて雲粒子サイズの特定などが可能であ る。2.3um窓を細分化すると「透明度の高い2.26um」「CO吸収の影 響の強い2.32um」に分けられ、IR2はこの2種類のフィルターを備え て大気下層COの時空間変動をマップする。さらに2.02umの昼面用 フィルターではCO2吸収強度の空間マッピングにより、雲頂の凹凸 を可視化し、紫外カメラ・中間赤外カメラとの連携により高度70km 付近のダイナミクスを解き明かす。 セミナーでは、IR2カメラの科学目的と要求からブレークダウンさ れた仕様、その開発成果、打ち上げ以降の経緯、そして今年12月に 迫った金星到着後の活躍の見通しについて述べる。 | |
11/24(火) 16:00- 5F会議室 | 石川(PD) |
ロケット実験 FOXSI による太陽活動領域の高感度X線撮像分光観測 | |
概要: 我々は、カリフォルニア大学バークレー校、NASA と共同で、 硬X線望遠鏡と半導体検出器を用いた高感度太陽X線観測ロケット実験 Focusing Optics Solar X-ray Imager (FOXSI) を進めている。 太陽からの硬X線放射(ここでは数 keV 以上のX線放射とする)は、太陽コロナの高温プラズマや非熱的加速粒子からの放射であり、 太陽硬X線観測はコロナの物理状態を精確に理解し、フレア等のエネルギー解放現象の物理過程を理解するために重要である。 しかし、これまで太陽硬X線観測に活躍してきたようこう衛星の硬X線望遠鏡や RHESSI 衛星は非集光型の撮像手法を用いており、 感度が十分でないため静穏領域やフレアを起こしていない活動領域からの放射は検出できず、太陽における高温プラズマや加速粒子の全体像はいまだにわかっていない。 FOXSI では、太陽硬X線観測装置として初めて集光撮像を行い、RHESSI よりも~100倍の感度を達成し、静穏領域や非フレア時の活動領域の観測を行う。 FOXSI はこれまで2012年11月と2014年12月の2回打ち上げが行われ、2回とも観測に成功している。 1回目の打ち上げでは、検出されたのはマイクロフレアのみであり、静穏領域や非フレア時の活動領域からの有意な硬X線放射は検出されず、 これまで考えられてきたよりも硬X線放射がずっと少ないことを明らかにした。 2回目の打ち上げでは、非フレア時の活動領域の検出に成功し、軟X線の観測と比較することにより活動領域の精確な温度分布(Differential Emission Measure)を 見積もることができた。 静穏領域からの放射の検出に向け、さらに感度を向上させた3回目の打ち上げも計画している。 本セミナーでは、FOXSI の観測機器の概要と、開発成果、打ち上げの様子を観測結果を報告する。 | |
11/17(火) 16:00- 5F会議室 | 加納(M2) |
Hinode-IRIS共同観測で探る太陽黒点におけるMHD波動の伝播過程とエネルギー収支 | |
概要: 太陽表面(光球)の上空には、表面よりも温度の高いプラズマが存在している。熱源から遠く離れた場所で温度が高くなっている現象は「大気加熱問題」として知られており、現在も理解が乏しい。 熱源から離れたプラズマを加熱するためには、非熱的過程でエネルギーを上空へ運ぶ必要がある。非熱的なエネルギーの輸送メカニズムとしては、光球から伸びる磁力線を伝わって伝播する波によりエネルギーを運ぶ「波動加熱説」が有力な候補として考えられている。近年は人工衛星を用いた観測によりMHD波動の存在(De pontieu et al. 2007 ; Fujimura & Tsuneta 2009)やエネルギーの散逸過程(Tian et al. 2014a ; Okamoto et al. 2015)が明らかになってきているが、波動の定量的なエネルギー収支、特に大気加熱にとって重要となるエネルギー散逸量については未だに観測的な理解が不十分である。以上の理由から、「波動が伝播する際に散逸するエネルギー量を観測的に見積もる」ということを本研究の目的とした。 散逸したエネルギー量を見積もるためには、まず初めに波動のモードを異なる高度で同定し、伝播の描像をつかむ必要がある。そこで本研究ではHinode衛星による可視光域の偏光分光観測とIRIS衛星による紫外線域の分光観測を高時間分解能で同時に行ったデータを用いて、光球から上空大気(彩層)まで波動がどのように伝播するのかを調査した。Hinode衛星により得られた波動における磁場強度、速度場、放射強度の位相関係から、黒点暗部の光球ではSlow-modeの波が上下方向へ伝播していることが明らかになった。同時にIRIS衛星による観測からは彩層では非線形化された短周期の上向きの波が卓越しているという結果が得られた。これら二つの衛星による観測から、「光球で励起されたSlow-mode波の高周波数成分だけが彩層へと伝播し、伝播する際に密度の減少に伴って衝撃波を形成してエネルギーを散逸する」という描像を得ることができた。 次のステップとして、同定された波動の伝播過程をもとに、散逸したエネルギー量を調査した。観測量を用いて密度などのパラメータを見積もり光球と彩層における上空方向のエネルギーフラックスを見積もったところ、光球から彩層へと伝播するに従って黒点上部の彩層を加熱するために十分な量のエネルギ―フラックスが減衰していることが観測的に明らかになった。これは、波動が黒点上空の彩層を加熱するのに重要な役割を担っていることを示す重要な結果となっている。 しかしながら、観測量から見積もられた光球における密度は、典型値を一桁上回る結果となっていた。この原因は、光球の密度を求める際に用いた観測された磁場の振幅の中に観測高度の変化による見かけの磁場の振動が混じっているためであると考えられる。密度が大きく見積もられるとエネルギーフラックスも大きく見積もられるため、今回見積もられた散逸したエネルギー量はあくまで上限値である。今後厳密な値を見積もるためには、観測高度変化が観測量に及ぼす影響を分離することが重要となっていくことが示唆された。 | |
11/17(火) 16:00- 5F会議室 | 川畑(M2) |
非線形フォースフリー磁場外挿によるホモロガスフレア解析 | |
概要: 太陽フレアは、磁気リコネクションによりコロナ磁場に蓄積された磁気エネル ギーが運動エネルギーや熱エネルギーに突発的に変換される現象として知られ る。太陽フレアの中でも同じ活動領域の同じ場所で、似た形状のフレアループ増 光が確認されるイベントをホモロガスフレアと呼ぶ。複数回類似した形状のフレ アが起こるメカニズムはまだ分かっていない。またそれぞれのホモロガスフレア は、エネルギー蓄積過程や不安定化過程が同じであると考えられ、それぞれのフ レアの前後の磁場構造の時間発展を追えば、太陽フレアにおけるその2つの過程 の理解につながる。 そこで、太陽観測衛星「ひので」で観測された4 重極構造におけるホモロガスフ レアイベントの解析を行った。解析対象として2014 年2 月に複数回のMクラスの ホモロガスフレアを引き起こした活動領域を選んだ。その中の一つのフレアイベ ントを選び、Ca II H の吸収線で観測されるフレアリボンと偏光観測で得られる 光球磁場マップを重ね合わせ、4 つの正負の磁極がフレアに関与していることを 確認した。しかし、これらの磁場の結びつきが明確ではなかったので、光球磁場 を境界条件としてフォースフリー磁場外挿を行い、コロナ磁場の3 次元形状を調 べた。この活動領域は、focused mode と呼ぶ新しい「ひので」観測運用モード で観測され、1週間連続して高空間分解能・高精度の光球磁場データが数時間ご とに得られている。その時系列の磁場データの視野不足を「SDO/HMI」のデータ により補間し、境界条件として用いた。外挿の結果、4 つの磁極はそれぞれつな がりを持ちその中央にnull 点をもつ4 重極構造を形成している事が確認でき た。また3 次元コロナ磁場の時系列変化を見ると、光球面のフローによりループ の足元の位置は変化するものの、グローバルな4 重極構造の形状はホモロガスフ レアが起きた期間内で維持されていることが分かった。さらにsquashing factor という量から3次元的な磁場構造を考察する。 | |
11/17(火) 16:00- 5F会議室 | 山田(M2) |
ひので/XRTから得られた放射線帯環境の変動 | |
概要: 地球周辺の宇宙空間では高エネルギー粒子が存在し、放射線帯を形成している。放射線帯は太陽の活動を受け、短期的・長期的にプラズマの分布を変える。これらの粒子は人口衛星の故障の原因の1つでもあり、その研究・観測は重要である。 実際に、衛星のCCDイメージセンサでは、高エネルギー粒子の衝突が原因で、ひっかき傷のような信号(以下speckle)が映り込む。 本研究では、ひので/XRTのフレアパトロールデータを使用し、speckleの検出を行いその変動を調査した。時間分解能は30-60秒であるが、衛星が太陽同期極軌道を取るため、常に同じ高度(約680km)での観測が可能である。解析は2010年から2013年末まで行った。 複数の太陽プロトンイベントとspeckleの増加から、XRT CCDの場合、粒子に対する感度は約60MeV以上という結果となった。 またspeckleの検出域と時間変動からL-Tmapを作成したところ、内帯・スロット・外帯というelectron特有の構造ではなく、L値の小さいところで密度の高いproton型の構造となっていた。 XRT CCD は60MeV以上の高エネルギーprotonに対する検出器として活用できるといえる。 実際にXRTデータから得たspeckleの時間変動が放射線帯の観測として活用でイルカを確認するため、磁気圏の変動に関係あるパラメータと比較を行い、粒子観測装置を用いた研究との結果の違いについて報告する。 | |
11/10(火) 16:00- 6F会議室 | 小川(M2) |
新しい高精度MHDスキームを用いた高速磁気リコネクションの研究 | |
概要: 磁気リコネクションとは反平行な磁力線が繋ぎ変わることで磁場のエネルギーを爆 発的に解放する現象である。この現象は太陽フレアでの粒子加速や地球磁気圏内の大規模な対流などを駆動する重要な物理過程である。磁気リコネ クション研究の有用な手法には計算機シミュレーションがあるが、その中でも本研究では電磁流体力学(MHD)シ ミュレーションを用いた.MHDはプラズマを流体として扱うため,個々の粒子の集 団的な振る舞いを記述できる.すなわちMHDはマクロスケールの物理現象の再現に適した手法だ と言える.しかし,磁気リコネクションは大規模な物理現象を駆動する過程である一方で,磁力線がつなぎ変わる現場である拡散領域ではMHD近 似が破れ,プラズマ粒子の運動論的効果が重要になる.従って運動論的効果を含まないMHDで は,磁気リコネクションのエネルギー解放効率を示すリコネクションレートが小さくなる(遅いリコネクションと呼ばれる).過去の研究におい て,運動論的効果を含む粒子コードなどの計算では高いリコネクションレートが達成できるのに対し,MHDコー ドによるリコネクションレートは低くなり,MHDでは速いリコネクショ ンが再現できないことが示された[e.g., J. Birn et al., 2001]. 本研究ではS. Kawai[2013]により提案された、新たな高精度MHDス キームを用いて高速磁気リコネクションの再現を試みた.その結果,過去のMHD計算のリコネクション レートよりも高い値が得られた.また,より高解像度で計算を行った場合,より薄い電流層が再現できるため,より爆発的なリコネクションが起こ ることが予想される.結果,高解像度計算ほど磁気島が複数発生し,複数のX-lineができることが 分かった.その中の最もメジャーなX-lineに注目して,ローカルなリコネクションレー トを求めると,各解像度で粒子計算と同等の値に収束することが分かった.これは低解像度でも一定の高速磁気リコネクションが再現できることを 示唆している.さらに,他の様々な条件下で同様の結果が得られるかどうかを確認し,今回用いたコードが今後大規模なスケールのリコネクション の研究に適用可能であるかを検証する. | |
11/10(火) 16:00- 6F会議室 | 大石(M2) |
月・惑星探査用飛行時間型質量分析装置の試験モデル製作 | |
概要: 月・ 惑星探査において、質量分析装置を用いたその場測定は年 代計測、同位体計測、揮発性物質計測など多岐にわたる太陽系探査に貢献している。ISASでは月周辺プラ ズマのイオン質量分析器が開発されたが、月・惑星の岩石を構成する主要元素の測定を目的とした質量分析器は未開発であり、その開発が望まれている。また、質量分析器はこれらの物質計測に加えて、その場K-Ar年代計測のため の質量分析部としても応用できる。 そ こで私はその場K-Ar年代計測のため のTOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質量分析器)の 開発を進めている。 我々 が検討している年代計測システムではLIBS(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起絶縁破壊分光法)に よるK濃度測定とTOF-MSによるAr同位体測定からK-Ar年代を求めるものである。その場K-Ar年代測定が可能となれば、火星の ノアキス代からヘスぺリア代に起きた気候変動や、月の進化の過程について制約を課すことができる可能性がある。そこで我々は、着陸機に搭載可能な直径100[mm]、全長200[mm]程度のTOF-MSを開発 し、イオンを約4keVまで加速することで、質量数40のピークにおいて160程度の質量分解能を得ることを計算機シミュレーションにより確認した。 また、これまでにイオン源とTOF-MSで構成されるK-Ar年代計 測のための試験モデルの製作を行った。イオンを加速もしくは反射させるため、リング状の電極とインシュレーターを交互に結合し、イオンを 自由飛行させるドリフトチューブに取り付けた。また、加速部や反射部では一様な電場を形成するために、リング状の電極とインシュレーター の間を抵抗に繋ぐ必要がある。そこで、抵抗を繋いだユニバーサル基盤に4[kV]の高電圧を印加し、真空中で放電しないことを確認し た。 さらに、この試験モデルでは部品を組み替えることによ り、イオンを直線的に飛行させるリニアモードと、イオンを反射させるリフレクターモードを切り替え、ミッションに合わせた最適な形状を選 ぶことができる。本発表では、TOF-MS試験モデルの製作と今後の実験予定について報告する。 | |
11/10(火) 16:00- 6F会議室 | 加藤(M2) |
太陽風イオンの月磁気異常反射過程におけるイオン種および観測方向依存性 | |
概要: 月表面には磁気異常領域と呼ばれる局所的に強い磁場をもつ空間が存在する。月は固有磁場を持たない衛星であるが、月の地殻の一部は強く磁化しており、その領域周辺は強い磁場が存在する電磁場環境となっている。この月の磁気異常領域に太陽風が侵入すると、太陽風粒子の反射やそれに伴う電場生成などが確認されている。しかしこの荷電粒子の反射現象の理解はまだ乏しく、例えば荷電粒子が磁気異常によって反射される過程でその粒子はどのような物理現象を経るのか、粒子の種類や速度といった粒子のパラメータが異なると反射にどのような違いが出るのか、その違いは電磁場環境にどう影響するのかなどが挙げられる。このような反射粒子の振る舞いと磁気異常上空の空間構造を知るための詳細な解析が待たれている。本研究では月磁気異常と太陽風イオンの相互作用についてイオン種による違い、観測方向による違いの有無について注目し、その原因となる現象の特定を目指す。かぐや衛星に搭載されたイオン観測器MAP-PACE-IEA/IMA、磁場観測器MAP-LMAGを用い、太陽風プロトン(水素イオン)、太陽風アルファ(2価のヘリウムイオン)粒子の磁気異常反射の解析および比較を行った。プロトン、アルファ粒子を研究対象に決定した理由は、ともに太陽風粒子として磁気異常と相互作用すること、また月周辺空間に存在するイオンでそれぞれ1番目2番目に多い粒子であり、比較解析に適しているからである。観測方向の比較については、月表面に対し水平方向からの観測と、垂直方向(つまり月表面方向)からの観測に分け、それぞれ解析、比較を行った。解析の結果、イオン種による観測結果の違い、観測方向による観測結果の違いがそれぞれ存在することを突き止めた。本発表ではそれらの違いについてと、その原因となる現象の特定についての研究結果を報告する。今回の研究結果で提示する、反射過程で作用する物理現象の発見は、磁気異常領域周辺の電磁場環境や、月の固体表面と荷電粒子の相互作用についての理解の一助になることも示唆された。 | |
10/27(火) 16:00- 5F会議室 | 星(M1) |
THEMIS衛星による昼側磁気圏境界面における磁束ロープの運動の観測 | |
概要: THEMIS衛星観測データに基づいて、地球磁気圏の昼側境界面における磁束ロープ の移動過程を調べた。磁気圏境界面で観測される磁束ロープは、 複数のリコネ クションポイントを伴う非定常な磁気リコネクションによって形成されるが、地 球半径程度の大きな構造のため、多点観測によってその構 造や移動過程を明ら かにできる。THEMIS衛星は、2015年現在、A機、D機、E機の3機で編隊観測をして いる。磁束ロープの特徴として、磁 気圏界面の電流層における磁場圧、プラズ マ圧の和である全圧の数nPaの上昇、境界面平行方向のイオン流速の極性の逆 転、境界面法線方向の磁場成 分の逆転などが挙げられる。2015年6月24日に THEMIS衛星によって観測された低エネルギーイオン及び磁場データから、3機と もこれらの 特徴が見いだされた。さらに、上記の特徴から各衛星が磁束ロープ の中心付近を観測した時刻を求め、磁束ロープが二次元構造を維持して一定速度 で移 動していると仮定して、磁束ロープの移動速度を求めた。その結果、本イ ベントでは朝側に向かって約50 km/sで移動していること、磁束ロープの軸はGSM 座標のZ軸とほぼ平行であることが分かった。発表では、観測された磁束ロープ の構造や運動に対する、 IMFの向きや地磁気双極子の傾きの影響についても議論 する。 | |
10/20(火) 16:00- 5F会議室 | 早川(教授) |
ベピコロンボ計画:国際共同水星探査計画 | |
概要: 2011年3月から周回軌道で水星の観測を行っていた米国MESSENGER は本年4月に水星表面に衝突することにより、その観測を終えた。 MESSENGERは数々の発見をすると共に多くの新たな謎を提起した。 BepiColomboは2機の衛星による共同観測、同程度の解像度による 南北両半球の詳細観測などによりそれらの謎の解明を目指している。 MESSENGERの観測の簡単なまとめと、BepiColomboの現状などについて 概説する。 | |
10/20(火) 16:00- 5F会議室 | 山崎(助教) |
Planned observation of interplanetary neutral helium distribution using HISAKI (SPRINT-A) satellite | |
概要: Local InterStellar Medium (LISM) is injected to interplanetary space in heliosphere with the interstellar wind. The helium atom which has high ionization energy travels to the 0.5 A.U. neighborhood of the sun, and gravitates by the sun's gravity to form a high density region with a corn-like shape in the downwind side. The velocity of the interstellar wind the density and the temperature of helium atom in LISM are derived by measuring helium distribution in the corn-like region. >From such studies carried out from the 1970s it is believed that the LISM gas is not variable, but recently it was reported that the speed direction of the interstellar wind changed for several decades (Frisch+13). Observation plan of helium resonance scattering from the interplanetary space using the Hisaki satellite is introduced and the change of the speed direction of the wind between the star is discussed. | |
10/19(月) 16:00- 5F会議室 | 飯島(D3) |
太陽彩層ジェットのコロナ依存性に関する2次元輻射磁気流体シミュレーション | |
概要: 近年の観測技術の発展に伴い、太陽彩層は古典的に言われるような静的な構造ではなく、衝撃波に満たされた非常にダイナミックな構造であることが明らかになった。中でも彩層ジェット構造はコロナホールや静穏領域、活動領域や黒点など太陽表面の様々な領域で観測され、それぞれ異なった特徴を持つ。コロナホールや静穏領域で観測されるスピキュールや活動領域ダイナミックフィブリルは、放物型の軌道という共通点を持ち、形成機構の関連が指摘される。一方でジェットの典型的な長さに数倍程度の違いがあることから、磁場の効果や形成機構の違いも提案されている。Shibata & Suematsu (1982) は、理想化した 1 次元流体計算を用いて、背景成層における遷移層密度の違いがジェットのスケールに大きい影響を与えることを指摘している。本研究では彼らのアイディアに基づき、より現実的な物理過程を取り入れた計算により、彩層ジェットにコロナが与える影響のより定量的な検証を行った。太陽大気のより定量的なモデリングのため、磁気流体方程式に部分電離の効果を考慮した状態方程式、輻射によるエネルギー輸送、および非熱的電子による熱伝導を考慮した新しい輻射磁気流体コードを開発した。各数値スキームは並列計算との親和性と数値的な安定性を基準に選定・開発を行った。特に低ベータ中の強い衝撃波に満たされた彩層中を高解像度で解くために、新たな磁場の多次元補間手法を提案し、それに基づく高解像度磁気流体スキームを開発した。計算領域は対流層上層から下部コロナまでを含む。下部境界からのエンタルピーフラックスの流入により対流運動が起こり、自発的にジェットを含む大気構造が形成された。シミュレーション中のコロナの状態により 3 Mmから最大 8 Mmまで様々な大きさの彩層ジェットが確認された。統計的な解析を行ったところ、彩層ジェット運動の最大上昇速度とコロナ圧力の間のべき関係を得た。コロナの状態により彩層ジェットの軌道も影響を受け、「衝撃波減速モデル」に整合的な運動から「自由落下」までスムーズに移行することを発見した。発表ではこれらの結果の詳細や関連する観測的・数値的研究との比較などを報告する。 | |
10/13(火) 16:00- 6F会議室 | 岡(UC berkeley) |
In-situ evidence of electron energization in the electron diffusion region of magnetic reconnection | |
概要: Explosive phenomena such as solar flares and aurora activities are associated with magnetic energy release in space. While magnetic fields can ‘break’ and ‘reconnect’ in a very small region called the electron diffusion region, there have been conflicting theories as to whether this region can be a place of rapid energization of plasmas. We report a fortuitous encounter of the electron diffusion region in the Earth’s magnetotail where significant heating and demagnetization of electrons were observed. Additional energization was observed on both sides (immediate upstream and downstream) of the electron diffusion region, leading to a total of roughly two-orders of magnitude energization across this region. The results demonstrate that, despite its minuscule size, the electron diffusion region does indeed contribute significantly to the overall process of electron energization via magnetic reconnection. | |
10/13(火) 16:00- 6F会議室 | 寺本(PD) |
Study of Pc5 pulsations with a low azimuthal wave number by multiple satellite | |
概要: The azimuthal wave number (m) of Ultra Low Frequency (ULF) waves in the Pc3-5 frequency band (2-100 mHz) is a useful diagnostic tool of the wave generation mechanism. Low-m (m <10) waves are predominantly toroidal modes resulting from field-line resonances generated by fast mode waves propagating from the outer boundary of the magnetosphere. Although previous studies have presented the spatial distributions of ULF power and occurrence in the inner magnetosphere, the spatial features of azimuthal wavelength in the inner magnetosphere are still unknown well. We investigate the azimuthal extent of low-m ULF waves observed in the inner magnetosphere, using magnetic field data from the multiple satellites, including GOES 13, 15 and Van Allen Probes. From the phase difference of Pc5 pulsations and azimuthal separation between Van Allen Probes A and B, we find m =2.2 with westward propagation. We will discuss the generation mechanisms of this low-m ULF waves. | |
10/06(火) 16:00- 5F会議室 | 中村(教授) |
Venus Orbit Insertion of Akatsuki on December 7th, 2015/07/21 | |
概要: Japan launched Venus Climate Orbiter ‘Akatsuki’ (JAXA’s mission code name: PLANET-C) to observe the dynamics of the Venus atmosphere globally and clarify the mechanism of the atmospheric circulation. The launch was on May 21st , 2010 from the Tanegashima Space Center. The cruise to Venus was smooth, however, the first Venus Orbit Insertion (VOI) trial on December 7th, 2010 tuned out to be a failure. Later Akatsuki has been orbiting the sun. Fortunately we keep the spacecraft in a healthy condition and surprisingly we have found another chance to let this spacecraft to meet Venus in 2015. Next VOI trial will be done on December 7th, 2015. This mission is planed to answer the question described below. The radius of the Earth and Venus are almost the same. In addition the radiation from the sun is also almost the same. The climates of these planets, however, are much different. For example, the strong zonal wind is observed on Venus with the period of 4 days, where Venus rotates westward with the period of 243 days. The wind speed is about 100 m s-1. This is called super rotation. We will investigate from data from Akatsuki what attributes to the difference of the climates between Earth and Venus. AKATSUKI was designed for remote sensing from an equatorial, elliptical orbit to tract the atmospheric motion at different altitudes using 5 cameras (3xIR, UV, Visible) and by the radio occultation technique. The first VOI has failed due to a malfunction of the propulsion system. The check valve between the helium tank and the fuel tank was blocked by an unexpected salt formation during the cruising from the Earth to Venus. As a result the main engine (orbital maneuvering engine, OME) became oxidizer-rich and fuel-poor condition, which led to an abnormal combustion in the engine with high temperature, and finally the engine was broken. We decide to use RCS thrusters for Trajectory Control Maneuvers’ (TCMs) and finally insert Akatsuki into the orbit. Total thrust force of 4 RCS thrusters is 20 % of that of the main thruster and the orbit after VOI-R becomes a larger ellipse (apoapsis altitude will be finally 3.2x106km ) than the original plan in 2010. We have already done major 6 TCMs before July 31st, 2015 to let the spacecraft to meet Venus in December, 2015. | |
10/06(火) 16:00- 5F会議室 | Lee(PD) |
Net thermal flux profile calculation of the Venus atmosphere below the clouds | |
概要: Thermal emission from the 735 K surface temperature of Venus is hidden by its thick atmosphere as seen from space. As the solar radiation would decrease drastically below 60 km due to absorption near the cloud top level, thermal energy would dominate radiative energy distribution over the globe at these low altitudes. Even though this radiative energy would drive a global scale circulation, for example, Hadley circulation, this has been poorly understood due to the limitation on observation. Therefore, I have developed the Venusian atmospheric model to understand thermal energy below the clouds, using recent gaseous absorption database. Several gaseous line parameters, cloud models, and minor gaseous abundances, such as SO2, H2O, etc., are compared. The results show that minor gaseous abundance would affect net thermal flux significantly, but, these do not affect outgoing emission from the planet to space due to a thick cloud layer at 48-70 km above the surface. Since remote observation detects minor gaseous spatial distribution through a few atmospheric window channels, my model calculation results show that such minor spatial distribution of minor gases should be taken into account to understand radiative energy balance below the clouds. | |
09/29(火) 16:00- 5F会議室 | 加納(M2) |
Hinode-IRIS共同観測で探る太陽黒点におけるMHD波動の伝播過程とエネルギー収支 | |
概要: 太陽表面の上空には、表面よりも温度の高いプラズマが存在している。熱源から遠く離れた場所で温度が高くなっている現象は「大気加熱問題」として知られており、現在も理解が乏しい。熱源から離れたプラズマを加熱するためには、熱伝導以外でエネルギーを運ぶ必要がある。エネルギーの輸送メカニズムとしては、太陽表面(光球)から伸びる磁力線を伝わって伝播する波によりエネルギーを運ぶ「波動加熱説」が有力な候補として考えられている。近年は人工衛星を用いた観測によりMHD波動の存在(De pontieu et al. 2007 ; Fujimura & Tsuneta 2009)やエネルギー散逸過程(Okamoto et al. 2015)が明らかになってきているが、波動の伝播過程と定量的なエネルギー収支については未だに観測的な理解が不十分である。 本研究では波動の伝播過程とエネルギー収支に着目し、Hinode衛星による可視光域の偏光分光観測とIRIS衛星による紫外線域の分光観測を同時に行い、黒点を光球から上空大気(彩層)まで同時観測したデータの解析を行った。Hinode衛星により得られた波動における磁場強度、速度場、放射強度の位相関係から、黒点暗部の光球ではSlow-modeの波が上下方向へ伝播していることが明らかになった。同時にIRIS衛星による観測からは彩層では非線形化された短周期の上向きの波が卓越しているという結果が得られた。これら二つの衛星による観測から、「光球で励起されたSlow-mode波の一部だけが上空大気へと伝播し、伝播する際に密度の減少に伴って衝撃波を形成してエネルギーを散逸し大気を加熱する」という描像を得ることができた。また円偏光シグナルの変化をすべて波動に伴う磁場強度の変動が生み出していると仮定すれば、光球における波動の持つエネルギーフラックスは彩層を加熱するために十分な量であることが観測データを用いて定量的に見積もられた。しかしながら観測値から見積もられた光球における密度は理論的な予想を一桁上回る値となっており、定量的な理解のためには波動にともなう磁場強度の変化以外の物理過程が引き起こす円偏光シグナルへの影響を考慮する必要があることが示唆された。 | |
09/29(火) 16:00- 5F会議室 | 川畑(M2) |
非線形フォースフリー磁場外挿によるホモロガスフレア解析 | |
概要: 太陽フレアは、磁気リコネクションによりコロナ磁場に蓄積された磁気エネル ギーが運動エネルギーや熱エネルギーに突発的に変換される現象として知られ る。太陽フレアの中でも同じ活動領域の同じ場所で、似た形状のフレアループ増 光が確認されるイベントをホモロガスフレアと呼ぶ。複数回類似した形状のフレ アが起こるメカニズムはまだ分かっていない。またそれぞれのホモロガスフレア は、エネルギー蓄積過程や不安定化過程が同じであると考えられ、それぞれのフ レアの前後の磁場構造の時間発展を追えば、太陽フレアにおけるその2つの過程 の理解につながる。 そこで、太陽観測衛星「ひので」で観測された4 重極構造におけるホモロガスフ レアイベントの解析を行った。解析対象として2014 年2 月に複数回のMクラスの ホモロガスフレアを引き起こした活動領域を選んだ。その中の一つのフレアイベ ントを選び、Ca II H の吸収線で観測されるフレアリボンと偏光観測で得られる 光球磁場マップを重ね合わせ、4 つの正負の磁極がフレアに関与していることを 確認した。しかし、これらの磁場の結びつきが明確ではなかったので、光球磁場 を境界条件としてフォースフリー磁場外挿を行い、コロナ磁場の3 次元形状を調 べた。この活動領域は、focused mode と呼ぶ新しい「ひので」観測運用モード で観測され、1週間連続して高空間分解能・高精度の光球磁場データが数時間ご とに得られている。その時系列の磁場データの視野不足を「SDO/HMI」のデータ により補間し、境界条件として用いた。外挿の結果、4 つの磁極はそれぞれつな がりを持ちその中央にnull 点をもつ4 重極構造を形成している事が確認でき た。また3 次元コロナ磁場の時系列変化を見ると、光球面のフローによりループ の足元の位置は変化するものの、グローバルな4 重極構造の形状はホモロガスフ レアが起きた期間内で維持されていることが分かった。フレアを引き起こした後 も4 重極構造が変化しない事が、ホモロガスフレアに関係していると考えられる。 | |
09/29(火) 16:00- 5F会議室 | 山田(M2) |
ひので/XRTから得られた放射線帯環境の変動 | |
概要: 衛星に搭載されたCCDイメージセンサには時折、白い傷跡のような信号(以下、Speckle)が発生する。低軌道衛星では特にブラジル異常帯(SAA)でよく見られる。これは、SAAの磁場が周囲に比べて弱く、高エネルギー粒子が流入しやすいためである。これらの粒子は帯電障害、シングルイベント、高高度での被爆の原因であり、その発生や飛来を予測するのは宇宙天気において重要である。 本研究では 撮像データに現れたSpeckleに着目した。これらの生成には、高エネルギー粒子の衝突が関係しているため、その飛来量を知ることができる。 ひので/XRT により取得されたデータを用いて、いつどこでSpeckleが発生しているかを調査した。XRTにはフレアパトロールモードと呼ばれる撮像モードがあり、時間分解能はおよそ30-60秒である。また太陽同期軌道を取るため、常に同じ高度(約680km)の観測ができる。 今回は2010年から2013年末までの解析結果について報告する。 Speckleの増加には太陽プロトンイベント(SPE)と磁気嵐の影響が見られた。 SPE時、Speckleの時間変動は静止軌道衛星で観測されたプロトンフラックスと同様の変動を起こしていた。特に60MeV以上の高いエネルギーを持つプロトンの影響を大きく受けていた。またSpeckleは磁気緯度60度以上の広い領域で増加した。それに対し磁気嵐時は静止軌道衛星ではフラックスの増加は見られず、Speckleの増加も磁気緯度60度前後の狭い領域だけで起きていた。各緯度経度ごとにSpeckleの検出数の平均を見ると磁気緯度60度前後で検出数が周囲に比べ1桁高くなっていた。長期間での変動を見れば、磁気圏プラズマがひのでの軌道高度のプラズマ環境に影響を与えていることを示唆している。 | |
09/24(木) 14:00- 6F会議室 | |
Study of Venus' atmosphere by new radio occultation analysis | |
概要: The radio occultation is one of the important measurements for studying planetary atmosphere. The radio occultation method relies on the measurement of the frequency shift of the received signal caused by the bending of radio waves in the radial gradient of the refractive index in the atmosphere. Temperature profiles of the planetary atmosphere can be derived through the radio occultation technique. The geometrical optics method has long been used for the analysis of radio occultation data. However, this method cannot disentangle multipath rays, which often occur in the temperature inversion region at high latitude, and vertical resolution is limited by the size of the Fresnel zone ( 1 km). Radio holographic methods have been proposed for processing of radio occultation signals in multipath regions and obtaining atmospheric profiles with high resolution. One of them is the Full Spectrum Inversion (FSI), which was recently applied to GPS occultation data of the Earth' s atmosphere. By applying the FSI technique to Venus Express radio occultation data, we demonstrated this technique for Venus' atmosphere. New vertical temperature profiles obtained by FSI technique show the correct temperature structure at multipath region and the high vertical resolution ( 150 m). The presence of sharp temperature minimum at multipath region suggested that the convective region, which is one of the sources of gravity waves, in the cloud layer reached near the cloud top at high latitude. The spectra of the temperature perturbations, which are thought to be manifestations of gravity waves, tend to follow the semi-empirical spectrum of saturated gravity wave at low vertical wave number, but the slope becomes steep at high vertical wave number. We consider that the radiative dumping is effective at high vertical wave number. In this presentation, the FSI technique will be introduced and the results related with the gravity waves will be shown. | |
09/24(木) 14:00- 6F会議室 | 大石(M2) |
月・惑星探査用飛行時間型質量分析装置の試験モデル製作 | |
概要: 月・ 惑星探査において、質量分析装置を用いたその場測定は年 代計測、同位体計測、揮発性物質計測など多岐にわたる太陽系探査に貢献している。ISASでは月周辺プラ ズマのイオン質量分析器が開発されたが、月・惑星の岩石を構成する主要元素の測定を目的とした質量分析器は未開発であり、その開発が望まれている。また、質量分析器はこれらの物質計測に加えて、その場K-Ar年代計測のため の質量分析部としても応用できる。 そ こで私はその場K-Ar年代計測のため のTOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質量分析器)の 開発を進めている。 我々 が検討している年代計測システムではLIBS(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起絶縁破壊分光法)に よるK濃度測定とTOF-MSによるAr同位体測定からK-Ar年代を求めるものである。その場K-Ar年代測定が可能となれば、火星の ノアキス代からヘスぺリア代に起きた気候変動や、月の進化の過程について制約を課すことができる可能性がある。そこで我々は、着陸機に搭載可能な直径100[mm]、全長200[mm]程度のTOF-MSを開発 し、イオンを約4keVまで加速することで、質量数40のピークにおいて160程度の質量分解能を得ることを計算機シミュレーションにより確認した。 また、これまでにイオン源とTOF-MSで構成されるK-Ar年代計 測のための試験モデルの製作を行った。イオンを加速もしくは反射させるため、リング状の電極とインシュレーターを交互に結合し、イオンを 自由飛行させるドリフトチューブに取り付けた。また、加速部や反射部では一様な電場を形成するために、リング状の電極とインシュレーター の間を抵抗に繋ぐ必要がある。そこで、抵抗を繋いだユニバーサル基盤に4[kV]の高電圧を印加し、真空中で放電しないことを確認し た。 さらに、この試験モデルでは部品を組み替えることによ り、イオンを直線的に飛行させるリニアモードと、イオンを反射させるリフレクターモードを切り替え、ミッションに合わせた最適な形状を選 ぶことができる。本発表では、TOF-MS試験モデルの製作と今後の実験予定について報告する。 | |
09/24(木) 14:00- 6F会議室 | 加藤(M2) |
月磁気異常と太陽風イオンとの相互作用のイオン種別比較 | |
概要: 月面と太陽風の相互作用の解明は、月周辺のプラズマ環境の研究における代表的な科学目標である。太陽風イオンはプロトンが主成分であるが、ヘリウムの2 価イオンであるアルファ粒子も数パーセントほど含まれており、またごく微量ながら酸素イオン等も確認されている。月は厚い大気も大局的な磁場も存在しないため、太陽風が月表面まで到達し衝突する。それに対し月の磁気異常と呼ばれる最大数百kmスケールに渡って局所的に強い磁場を持つ領域上空では、太陽風イオン(プロトン)の数十パーセントが磁場によって反射されることが知られている。この磁気異常周辺では多彩な電磁気的現象が確認されており、それらを説明するためにはより詳細な解析と議論を行う必要がある。本研究は太陽風イオンをイオン種で分類し比較することではじめて得られる情報を用いて詳細な議論を行うことで、月表面の磁場構造の把握やその上空の電場構造を含む月周辺環境の理解を進めることを目的としている。月探査衛星かぐやに搭載されたプラズマ・磁場観測装置MAP-PACE, LMAG の観測データを用い、磁気異常上空で反射されたイオンについて質量分析を含めた解析を行った。解析の結果、磁気異常領域上空において、磁気異常によって反射された太陽風イオンのプロトンとアルファ粒子は異なる分布を示すことが明らかとなった。特に反射フラックスの強度と、反射後の減速の度合いが強く異なることが顕著に確認された。さらに太陽風入射方向と反射イオンの観測方向によって分類した解析を進めた。その結果観測方向による減速の仕方とフラックス強度に違いが確認された。この結果は、プロトン/アルファ粒子の月磁気異常との相互作用が起こす特徴の違いによるものと考えられる。以上の解析結果を理解するために、テスト粒子シミュレーションで太陽風入射イオンの磁気異常反射軌道の計算を行った。本発表では、このかぐや衛星観測結果と軌道計算結果の2つの研究手法の経過を報告する。本研究の結果から、月面に衝突するプラズマ粒子は、月の磁気異常磁場構造と粒子種類に関係があることが示めされた。このことは、月周辺空間におけるプラズマ物理学の理解だけでなく、宇宙風化のような固体表面科学にも寄与する情報を得られる事が期待できる。 | |
09/15(火) 16:00- 5F会議室 | 小川(M2) |
新しい高精度MHDスキームを用いた高速 磁気リコネクションの研究 | |
概要: 磁気リコネクションとは反平行な磁力線が繋ぎ変わることで磁場のエネルギーを爆 発的に解放する現象である。この現象は太陽フレアでの粒子加速や地球磁気圏内の大規模な対流などを駆動する重要な物理過程である。磁気リコネ クション研究の有用な手法には計算機シミュレーションがあるが、その中でも本研究では電磁流体力学(MHD)シ ミュレーションを用いた.MHDはプラズマを流体として扱うため,個々の粒子の集 団的な振る舞いを記述できる.すなわちMHDはマクロスケールの物理現象の再現に適した手法だ と言える.しかし,磁気リコネクションは大規模な物理現象を駆動する過程である一方で,磁力線がつなぎ変わる現場である拡散領域ではMHD近 似が破れ,プラズマ粒子の運動論的効果が重要になる.従って運動論的効果を含まないMHDで は,磁気リコネクションのエネルギー解放効率を示すリコネクションレートが小さくなる(遅いリコネクションと呼ばれる).過去の研究におい て,運動論的効果を含む粒子コードなどの計算では高いリコネクションレートが達成できるのに対し,MHDコー ドによるリコネクションレートは低くなり,MHDでは速いリコネクショ ンが再現できないことが示された[e.g., J. Birn et al., 2001]. 本研究ではS. Kawai[2013]により提案された、新たな高精度MHDス キームを用いて高速磁気リコネクションの再現を試みた.その結果,過去のMHD計算のリコネクション レートよりも高い値が得られた.また,より高解像度で計算を行った場合,より薄い電流層が再現できるため,より爆発的なリコネクションが起こ ることが予想される.結果,高解像度計算ほど磁気島が複数発生し,複数のX-lineができることが 分かった.その中の最もメジャーなX-lineに注目して,ローカルなリコネクションレー トを求めると,各解像度で粒子計算と同等の値に収束することが分かった.これは低解像度でも一定の高速磁気リコネクションが再現できることを 示唆している.さらに,他の様々な条件下で同様の結果が得られるかどうかを確認し,今回用いたコードが今後大規模なスケールのリコネクション の研究に適用可能であるかを検証する. | |
09/08(火) 16:00- 6F会議室 | Carlos(PD) |
Basics on the inversion of Spectropolarimetric data | |
概要: I plan to introduce the basics related to the analysis of Spectropolarimetric data from modern facilities using inversion codes. I will introduce the concepts of polarimetry, Zeeman effect, and inversion of Stokes profiles. After that, I will show some examples of the applicability of the inversion technique on Hinode/SP data as the goodness and limitations of this analysis. Finally, I will explain the possibilities of this technique for future solar missions. | |
7/28(火) 16:00- 5F会議室 | 篠原(准教授) |
Are non-active flow reversals signature of magnetotail reconnection? | |
概要: Geotail observation over 20 years in magnetotail provides us with about 200 rapid flow reversal events where tailward flow (<-500 km/s) turns to earthward flow (>+300 km/s) within 10 minutes. We have selected 30 active X-line crossing events. Active X-line events show electron acceleration during flow reversals and existence of ion-electron decoupling region. These features are consistent with the collisionless reconnection model demonstrated by recent full kinetic numerical simulations. In contrast, other 16 flow reversal events do not present any of them. No visible ion-electron decoupling is found in these non-Active flow reversal events. In this presentation, we will discuss physical meaning of the difference between active X-line and non-active flow reversal events. | |
7/28(火) 16:00- 5F会議室 | 宮本(D3) |
Full Spectrum Inversion (FSI) of radio occultation signals for the Venus atmosphere | |
概要: Gravity waves with vertical wavelengths from a few tens of meters to kilometers have been observed in the Earth’s atmosphere by radiosondes and radars. Also in the atmospheres of other planets, gravity waves are observed by various methods including radio occultation. The radio occultation method relies on the measurement of the frequency shift of the received signal caused by the bending of radio waves in the radial gradient of the refractive index in the atmosphere. The geometrical optics method has long been used for the analysis of radio occultation data. However, this method cannot disentangle multipath rays and vertical resolution is limited by the size of the Fresnel zone (~ 1 km). Because of this limitation, only a limited part of the gravity wave spectrum has been covered, and thus the propagation and dissipation mechanisms of the gravity waves in other planets are poorly understood. Radio holographic methods have been proposed for processing of radio occultation signals in multipath regions and obtaining atmospheric profiles with high resolution. One of them is the Full Spectrum Inversion (FSI), which was recently applied to GPS occultation data of the Earth’s atmosphere. By applying this technique to Venus Express radio occultation data, we derived temperature profiles with high vertical resolution. In this presentation, I'll show the vertical wave number spectra and static stability of gravity waves for discussing about propagation and dissipation of the gravity waves. | |
7/21(火) 16:00- 5F会議室 | 長谷川(助教) |
A review of magnetopause and boundary layer studes in 2013-2015 | |
概要: The presentation will review advances made for the last two years in our understanding of planetary magnetopauses, their boundary layers, their roles, and the processes occurring there. The topics to be covered include, but are not limited to, current sheet structures, magnetic reconnection, Kelvin-Helmholtz instability, ULF and high-frequency wave excitation, plasma heating, cold ion effects on magnetopause reconnection, polar cusps, plasma depletion layers, heliopause crossing by Voyager-1, and the prospects for the Magnetospheric Multi-Scale (MMS) mission that was successfully launched on 12 March 2015. This is an extended and more informative version of my presentation that was given in the IAGA Division III reporter review session at the IUGG 2015 meeting. | |
7/14(火) 16:00- 5F会議室 | 清水(准教授) |
Solar physics in heliophysics: the community strategic plan | |
概要: The outer atmosphere of the Sun produces a various kind of dynamics and heating and provides us attractive topics for exploring physical mechanisms occuring in solar plasma. Since the Sun controls the environment in the heliosphere, it should be more encouraged to promote interdisciplinary research including solar physics for understanding how the Sun is associated with the environment in the solar system. The solar physics community has a research roadmap including Solar-C for coming 10-20 years after community-wide discussions. I will use this seminar opportunity to share the roadmap (science mainly) with seminar participants, I hope to discuss any ideas for interdisciplinary resarch. | |
7/14(火) 16:00- 5F会議室 | 金尾(OD) |
Transitを利用した金星大気観測研究 | |
概要: 金星日面通過は、金星が太陽リムに差し掛かる 第 1次接触から第 2次接触までの時間帯の間に、ポーラーカラーよりも内側の極渦付近の緯度帯の 100 km高度付近に見られる細く短いアーチ状の光でよく知られている。この現象は、第3次接触から第4次接触までの間にも観測される。 2012年6月5日から6日にかけてひので衛星に搭載されたSOT望遠鏡が金星日面通過を捉えた観測画像を用いた研究を行っている。雲頂よりも高高度を透過した太陽放射(アーチ状の光)の解釈を行った。BFIを用いたフィルター観測で、波長は668nmから388nmまで、空間分解能は0.3AUの距離からおよそ10kmである。 大気中の分子密度モデルと、主にエアロゾルのミー散乱による金星大気の透過率鉛直変化とを仮定する。高度100km付近を透過した太陽放射を観測していることが明らかになった。金星に対する太陽位置の時間変化に伴い、屈折角度が減少しより高高度の大気の透過した太陽放射が画像で観測された。この画像に大気掩蔽手法を適用しスケールハイトを算出した。大気透過率から金星雲頂高度も合わせて示す。 アーチ状の光の高度分布に見られる散乱光について、雲頂よりも高高度の二酸化炭素分子によるレイリー散乱と考えている。以上の内容を報告したい。 (This presentation will be shown in Japanese.) | |
7/7(火) 16:00- 5F会議室 | 飯田(PD) |
Investigation of magnetic field transport by convection on the solarsurface and its implication on the solar cycle | |
概要: The magnetic field transport by convection on the solar surface is thought to be one of the key processes for solar dynamo theory. It is treated as a diffusion term in the induction equation for several decades from the suggestion by Leighton in 1965. However, this treatment is found to be inconsistent with recent observational results of the motion of the magnetic elements, which is revealed by the high resolution observation. In the last years' seminar, I showed the analysis of the magnetic elements' motion in the longest time scale ever. Sub-diffusion scaling is newly found there and it is discussed that this scaling has an impact to change the basic view of the surface transport. However, the mechanism of sub-diffusion scaling is not understood so far both from the observation and the magneto-convection theory. It is necessary to construct a new theoretical modeling of magnetic field transport including the interactions of magnetic elements. In this presentation, I will show the primitive results from the theoretical modeling and 3D-MHD simulation with an aim of understanding the mechanism of sub-diffusion transport. | |
7/7(火) 16:00- 5F会議室 | 齋藤(准教授) |
Low Energy Charged Particle Spectrometers for High Time Resolution Measurements | |
概要: Time resolution required for the low energy charged particle measurements is becoming higher and higher due to the demand for resolving electron scale phenomena. There exist several items that should be developed in order to realize time resolution to acquire 3-D phase space density higher than 10 msec. The 3-D phase space density measurement should be made independent of the spacecraft spin motion. The sensitivity of the analyzer should be high in order to secure good enough counting statistics with short sampling time especially for measuring tenuous plasmas, for example, in the Earth’s magnetotail. The charged particle detector should be fast enough to accept high count rate generated by high sensitivity analyzer. | |
6/30(火) 16:00- 5F会議室 | 今村(准教授) |
Major issues on Martian meteorology and possibility of remote observations from high orbits | |
概要: Water cycle and dust meteorology are key processes controlling the Martian climate. Although many spacecraft have been sent to Mars to explore the surface and atmospheric environment, the knowledge about the diurnal cycles of these processes is limited. On planets with tenuous atmospheres like Mars, diurnal cycle is very large, and thus high-temporal resolution observations with wide local-time coverage are required for fully understanding key processes. Here we examine a possibility of continuously observing the Martian meteorology from high, equatorial orbits. Even a limited number of light-weight instruments can obtain a unique dataset capturing the diurnal variations of surface/atmosphere processes. | |
6/23(火) 16:00- 5F会議室 | 浅村(助教) |
オーロラ探査編隊飛行観測衛星計画について | |
概要: 2000年代になり、オーロラ帯中に微細なプラズマ粒子・波動構造が 存在していることが FAST 衛星やれいめい衛星によって観測的に分かって きた。これは数10ms 程度の高時間分解能観測が実現されたことによる。 また、れいめい衛星では、全ピッチ角をカバーしたプラズマ粒子観測と 同時に、衛星の磁力線フットプリントを視野内に捉えたオーロラ発光層 の撮像観測が実現された。これは、単一衛星による観測でありながら プラズマ空間構造を推測する手がかりを得られる観測であった。しかし、 れいめい衛星にはプラズマ波動に関する観測器が搭載されなかったため、 実際にはプラズマ空間構造の推測は困難であった。一方、FAST 衛星は プラズマ波動観測、プラズマ粒子観測とも行っているものの、オーロラ撮像 観測を行っていない。オーロラ帯はオーロラ発光を用いてプラズマ空間構造 を推定できる可能性がある領域であり、プラズマ粒子・プラズマ波動観測と 同時にオーロラ撮像観測を実現しプラズマ加速現象の理解につなげて ゆきたいと考えている。オーロラ帯探査を目的とした衛星計画について議論 する。 | |
6/23(火) 16:00- 5F会議室 | 佐藤(PD) |
Migrating tides in the Martian lower atmosphere inferred from MEX/PFStemperature data | |
概要: Thermal tides play an important role in determining the general circulation, thermal structure, and vertical coupling between the lower and the upper atmospheres of terrestrial planets. They are expected to be stronger on Mars than on Earth, because the Martian atmosphere is only about 0.6% as thick as the Earth's atmosphere. The characteristics of migrating tides in the Martian atmosphere have been investigated mainly by GCM studies. The comprehensive temperature observations by MGS/TES and MRO/MCS have been conducted mainly from the sun-synchronous orbit, which means the characteristics of migrating tides still remain to be investigated. Planetary Fourier Spectrometer (PFS) onboard Mars Express (MEX) has observed atmospheric temperatures in the Martian lower atmosphere since the end of MY26. These data enable us to investigate the migrating tides in the lower atmosphere because the orbit of MEX is non sun-synchronous. In this presentation, I will briefly summarize the current knowledge of migrating tides in the Martian atmosphere and show some preliminary results. | |
6/16(火) 16:00- 5F会議室 | 伴場(D3) |
太陽フレアの発現メカニズムに関する観測的研究 | |
概要: 太陽フレアは、活動領域上空のコロナ中に蓄積された磁場のエネルギーが、プラズマの運動エネルギーと熱エネルギーとして爆発的に解放される現象である。多くの先行研究により、フレアの磁気エネルギー解放機構として磁気リコネクションが重要な役割を果たすことなど、フレアの概観が解明されつつある。しかし、「フレアがいつ・どこで・どの程度の規模で発生するのか」という、フレアのトリガ機構に関する基本的課題の理解は依然進んでいない。 我々はこれまでに、ひので衛星によって観測された太陽フレアのデータ解析から、複数の大規模フレアの直接的トリガとなった微細な磁場構造「トリガ磁場」を発見した(Bamba et al. 2013)。これらのトリガ磁場およびフレアに至る磁場構造の変化は、我々のグループの提案するフレア発生の数値シミュレーション(Kusano et al. 2012)とよく一致し、理論モデルを観測的に一部実証した例として注目されている。さらに我々は、ひので衛星・SDO衛星など複数の衛星データを組み合わせたフレアの詳細な解析より、フレア発生にとって重要な観測量を新たに提案し、数値シミュレーションのパラメータとして組み込むことで、フレア発生メカニズムの解明を目指している。 本発表では、これまでにひので衛星・SDO衛星を用いて行った、大規模フレアのトリガ磁場特定に関する研究のレビューを行う。また、2014年10月末に出現した巨大黒点における連続Xクラスフレアのトリガに関する最新成果についても紹介したい。 | |
6/16(火) 16:00- 5F会議室 | 笠原(助教) |
Development of medium-energy electron analyser for ERG | |
概要: ERG (Exploration of energization and Radiation in Geospace) is geospace exploration spacecraft, which is planned to be launched in FY2016. The mission goal is to unveil the physics behind the drastic radiation belt variability during space storms. One of key observations is the measurement of electrons in medium-energy range (10-100 keV), since these particles excite whistler waves, which are theoretically suggested to play significant roles in the relativistic electron acceleration and loss. In previous space missions, however, the medium-energy range has been the missing region due to the limitation of conventional particle instruments. Here I will review unique techniques, which are essential to challenge this difficult energy range. | |
6/9(火) 16:00- 5F会議室 | Stefan Eriksson |
On Multiple Reconnection X-lines and Tripolar Guide-Magnetic Field Perturbations in a Strong Guide Field | |
概要: We report multi-spacecraft Cluster observations of tripolar guide-magnetic field perturbations at a solar wind reconnection exhaust in the presence of a guide field BM which is almost four times as strong as the reversing field BL. The novel tripolar field consists of two narrow regions of depressed guide-field, with an observed 7-14% ΔBM magnitude relative to the external field, which are found adjacent to a wide region of enhanced guide-field within the exhaust. A stronger reversing field is associated with each guide-field depression. A kinetic reconnection simulation for realistic solar wind conditions and the observed strong guide field reveals that tripolar magnetic fields preferentially form across current sheets in the presence of multiple X-lines as magnetic islands approach one another and merge into fewer and larger islands. The simulated ΔBM/ΔXN over the normal width ΔXN between a BM minimum and the edge of the external region agree with the normalized values observed by Cluster. We propose that a tripolar guide-field perturbation may be used to identify candidate regions containing multiple X-lines and interacting magnetic islands at individual solar wind current sheets with a strong guide-field. Finally, I will discuss some possible implications of this study on the suggested presence of magnetic islands in the heliosheath as proposed by Swisdak et al. (ApJLett, 2013). | |
6/2(火) 16:00- 5F会議室 | 小美野(M1) |
氷衛星エウロパの内部海の化学組成 〜ジャイアントインパクトによる水素の散逸と硫酸の起源〜 | |
概要: 氷衛星として知られる木星の第二衛星エウロパは、軌道共鳴の状態にあるため強い潮汐力の変動にさらされている。その潮汐力で発生する熱により表面の氷層の下では氷が融け、内部に液体の海が存在していると考えられている。エウロパの液体+氷の層の形成に関する著名なモデルはエウロパの内部海における硫酸塩の存在を主張している。実際、ガリレオ探査機によって得られたエウロパ表面の近赤外線スペクトルでは硫酸の存在が確認されている。しかし、どのモデルにおいてもエウロパの形成途中での岩石と水の反応により水素が生成され、内部海は還元的になるため、硫酸が安定に存在することができない。したがって、硫酸が形成されるためには水素の散逸が必要である。今回の演習ではエウロパ形成末期におけるジャイアントインパクトによってその水素の散逸を引き起こせないかと考え、いくつかの仮定のもと数値計算を行った。 | |
6/2(火) 16:00- 5F会議室 | 松本(PD) |
コロナ加熱・太陽風駆動の数値的研究 | |
概要: コロナ加熱・太陽風駆動問題は太陽物理学における難問の一つである。 高温コロナや太陽風が発見されて以来、様々な研究がなされてきた。 本発表ではまず、過去の理論的な研究を大雑把にレビューする。 その後、発表者自身の2次元MHD計算を基にして、太陽大気がどのような 加熱機構で加熱されているのかを紹介する。 | |
5/19(火) 16:00- 6F会議室 | 山田(M2) |
人工衛星画像の speckle 検出による太陽環境との統計的解析の研究 | |
概要: 太陽フレアやコロナ質量放出 (CME) により加速された太陽高エネルギー粒子 (SEP) や地球磁気圏内に捕捉さたプラズマ粒子は、人工衛星に搭載されたCCDに対して観測由来ではない信号を生成する。撮像画像上で傷跡に似た軌跡や小さな斑点状の形状を持つこれらの「偽」信号を本研究ではSpeckleと呼んでいる。Speckleは衛星軌道上にどの程度SEPが流入してきたかの指標になり、周辺の宇宙天気環境を探る上で重要な情報を与える。本研究では「ひので」X線望遠鏡(XRT)撮像データを用いて画像の解析を行った。 解析結果からSpeckleの検出数が極端に増加しているイベントがあった。この増加や継続時間、量について太陽活動や軌道情報を交え考察を行っていく。 | |
5/19(火) 16:00- 6F会議室 | 大石(M2) |
その場年代測定のための飛行時間型質量分析装置の開発 | |
概要: 月惑星探査におけるその場年代測定が可能となれば、太陽系進化史の解明に大き な役割を果たす。我々はLIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザー 誘起絶縁破壊分光装置)と、TOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometry :飛行 時間型質量分析器)からなるその場K-Ar年代測定装置を開発している。K-Ar年代 測定法はの放射壊変を利用した年代測定法である。この手法ではLIBSによるK濃 度測定とTOF-MSによるAr同位体測定からK-Ar年代を求める。本発表ではAr同位体 計測用のTOF-MSの開発状況を報告する。 惑星着陸機搭載用のTOF-MSは重量、サイズ、電力の面で制約があり、その条件下 でAr同位体測定が可能な質量分解能を達成するように設計する必要がある。ま ず、TOF-MSで高い質量分解能を得るためには計測するイオンのTOF-MSに於ける初 期位置や初期エネルギーのばらつきを抑える必要がある。そこで我々はイオン を反射させる二段リフレクター方式のTOF-MSを採用し、飛行時間における初期位 置のばらつきに関する一次と二次の微分がともにゼロとなる解析解から装置の 寸法や印加する電圧等のパラメータを設定した。これらのパラメータを基にシ ミュレーションを行い、直径10[cm]、全長20[cm]程度のサイズ、数[kV]の印加 電圧でAr同位体計測に必要な質量分解能が達成可能である事を確認した。 また、Ar同位体測定のためには少量のを定量する必要もある。TOF-MSの前段にあ るLIBS部分を経て、TOF-MSまで到達するの量を推定 したところ、十分な検出数 を得るためには計測するイオンの検出器への到達率を数10%以上、計測の繰り返 し周波数を数[kHz]以上とする必要が あることが明らかとなった。そこでイオン を1次元のビーム状にTOF-MSへ導入することで効率を向上させ、同時にイオンの 初期位置のばらつきを 抑えるようにした。これにより、計算機シミュレーショ ンでは、数10%以上の到達率が達成できている。また、TOF-MSの加速部をパルス 電位と 定常電位の2段階にしてパルス電源の負荷を小さくすることで、TOF-MS計 測の繰り返し周波数を数[kHz]まで向上させることもできるようにした。 | |
5/19(火) 16:00- 6F会議室 | 小川(M2) |
高精度MHD計算を用いた高速磁気 リコネクションの研究 | |
概要: 磁気リコネクションとは反平行な磁力線が繋ぎ変わることで磁場のエネルギー を爆 発的に解放する現象である。この現象は太陽フレアでの粒子加速や地球磁 気圏内の大規模な対流などを駆動する重要な物理過程である。磁気リコネ ク ション研究の有用な手法には計算機シミュレーションがあるが、その中でも本研 究では電磁流体力学(MHD)シ ミュレーションを用いた.MHDはプラズマを流体と して扱うため,個々の粒子の集 団的な振る舞いを記述できる.すなわちMHDはマ クロスケールの物理現象の再現に適した手法だ と言える.しかし,磁気リコネ クションは大規模な物理現象を駆動する過程である一方で,磁力線がつなぎ変わ る現場である拡散領域ではMHD近 似が破れ,プラズマ粒子の運動論的効果が重要 になる.従って運動論的効果を含まないMHDで は,磁気リコネクションのエネル ギー解放効率を示すリコネクションレートが小さくなる(遅いリコネクションと 呼ばれる).過去の研究におい て,運動論的効果を含む粒子コードなどの計算 では高いリコネクションレートが達成できるのに対し,MHDコー ドによるリコネ クションレートは低くなり,MHDでは速いリコネクショ ンが再現できないことが 示された[e.g., J. Birn et al., 2001]. 本研究ではS. Kawai[2013]により提案された、新たな高精度MHDス キームを用 いて高速磁気リコネクションの再現を試みた.その結果,過去のMHD計算のリコ ネクション レートよりも高い値が得られた.またリコネクションレートが解像 度に依存するかどうかを確かめた.解像度が良くなると,より薄い電流層が再現 できるため,より爆発的なリコネクションが起こり,リコネクションレートが高 くなると予想される.結果として,グローバルなリコネクション レートは解像 度に比例して高くなる傾向が見られた.しかし同時に,精度の良い計算ほど磁気 島が複数発生し,複数のX-lineが できることが分かった.つまり,解像度に比 例したグローバルなリコネクションレートの増加は複数のX-lineの 影響を反映 したものである.しかし,その中の1つのX-lineに 注目して,ローカルなリコネ クションレートを求めると,どの解像度でも粒子計算と同等の値に収束すること が分かった.このことは低解像度でも 一定の高速磁気リコネクションが再現で きることを示しており,今後大規模なスケールのリコネクションの研究に今回用 いたコードが適用できるこ とを示唆している. | |
5/19(火) 16:00- 6F会議室 | 加藤(M2) |
月磁気異常上空における太陽風プロトンとアルファ粒子の観測 | |
概要: 月には厚い大気も大局的な固有磁場も存在しないため、月面は太陽風の影響を直 接受ける。しかしながら、月面には局所的に磁気異常と呼ばれる磁場の 強い領 域が存在し、月表面の強い磁気異常の存在によって、太陽風は月面に衝突するこ とを妨げられる。太陽風と月磁気異常の相互作用に関する研究 は、月表面の磁 気異常領域が発見された1960年代以降、人工衛星による観測や計算機シミュレー ション、実験室の再現実験などで研究が行われてい る。磁気異常は太陽風や月 周辺プラズマの挙動と密接に関連するため、磁気異常上空におけるプラズマ環境 の解析は重要な意味を持つ。 通常、月へ飛来してくる太陽風イオンの主成分はプロトンであり、次いでアル ファ粒子が数%程度含まれている。月の磁気異常領域上空では、太陽風イ オン の数十%程度が磁場によって反射されることが知られている。しかし、月磁気異 常による太陽風イオンの反射について、イオンを種類別に分類して の議論はこ れまで行われていない。太陽風イオンは主成分のプロトンの割合が9割であるこ とから、磁気異常と太陽風イオンの相互関係についてのこれ までの知見は、プ ロトンの振る舞いに大きく依存した結果であると言える。すなわち、プロトン以 外の太陽風イオンでは既存の研究結果と一致する振る 舞いをしているかは不明 である。特にアルファ粒子は、入射太陽風イオン中に存在することは明確に確認 できるが、プロトンとは異なり、反射イオンを 観測した場合には明確には存在 の確認がなされていない。したがって、プロトンだけでなくアルファ粒子につい てもその有無を含めて解析を行うこと は、月磁気異常上空におけるプラズマ構 造のより詳細な理解へとつながることが期待できる。 本研究では、月探査衛星「かぐや」に搭載された低エネルギーイオン質量分析器 MAP-PACE-IMAによって観測されたデータを用い、磁気異常 上空で反射されたイ オンについて質量分析データの解析を行った。解析の結果、磁気異常領域上空に おいて、磁気異常によって反射されたプロトンとア ルファ粒子は異なる分布を 示すことが明らかとなった。磁気異常によって反射されるイオンは多くの場合、 運動エネルギーを少し失って加熱されるが、 プロトンと比べてアルファ粒子は 運動エネルギーの減少量が大きいことが分かった。またアルファ粒子の入射粒子 フラックス強度に対する反射粒子フ ラックス強度の比率は、プロトンの入射粒 子フラックス強度に対する反射粒子フラックス強度の比率に比べても小さいこと が明らかとなった。従来の解 析で反射されたアルファ粒子の確認が困難であっ たのは、1)強い減速により観測されるE/q (E:運動エネルギー, q:電荷)が入射太 陽風アルファ粒子と反射アルファ粒子で大きく変化すること、2)反射されたアル ファ粒子のフラックス強度が小さいことが原因と結論づけ られる。これらの結 果は、月磁気異常による太陽風イオンの反射が理想的な磁気ミラー反射ではな く、非断熱的変化を伴った反射であることを示してい る。 | |
5/12(火) 16:00- 6F会議室 | 小美野(M1) |
氷衛生エウロパの内部海の化学組成 〜ジャイアントインパクトによる水素の散逸と硫酸の起源〜 | |
概要: 氷衛生として知られる木星の第二衛星エウロパは、軌道共鳴の状態にあるため強い潮汐力の変動にさらされている。その潮汐力で発生する熱により表面の氷層の下では氷が融け、内部に液体の海が存在していると考えられている。エウロパの液体+氷の層の形成に関する著名なモデルはエウロパの内部海における硫酸塩の存在を主張している。実際、ガリレオ探査機によって得られたエウロパ表面の近赤外線スペクトルでは硫酸の存在が確認されている。しかし、どのモデルにおいてもエウロパの形成途中での岩石と水の反応により水素が生成され、内部海は還元的になるため、硫酸が安定に存在することができない。したがって、硫酸が形成されるためには水素の散逸が必要である。今回の演習ではエウロパ形成末期におけるジャイアントインパクトによってその水素の散逸を引き起こせないかと考え、いくつかの仮定のもと数値計算を行った。 | |
5/12(火) 16:00- 6F会議室 | 坂本(M1) |
観測ロケット搭載ラングミュアプローブにより観測されたスポラディックE層の空間構造と新たな解析方法の導入 | |
概要: スポラディックE層(以下Es層)の観測・研究は古くからなされており,その生成機構についてはwind-shear理論が一般に受け入れられている.しかし,この理論は電子密度の集積過程を説明するにとどまり,Es層付近の熱収支についてはほとんど情報を与えない.熱収支を議論する上で,電子温度は重要なパラメータの一つであるが,Es層内での正確な電子温度観測の例は極めて少ないうえに古いものが多く,かつ信頼性に乏しい.また,Es層内での電子密度観測については報告例が多数あるが,データ点数が粗く,詳細空間構造を議論する上で十分ではない.したがって,高速でサンプリングが可能な測定器による,信頼性のある観測が求められている. このような問題を解決すべく,下部電離圏に発生するEs層の空間構造解明を主目的として平成26年8月17日19時10分00秒(JST)に宇宙航空開発機構内之浦宇宙空間観測所より観測ロケット(S-520-29号機)が打ち上げられた.本研究の目的は観測ロケットに搭載されるラングミュアプローブがロケット軌道上で取得するデータを用いて,電離圏の高度90〜243 km領域での電子温度および電子密度を推定し,上昇時Es層内の詳細空間構造を理解することにある. その結果,電圧掃引時間内に変化しているEs層内の電子密度・温度を,スプライン補間を用いた新たな解析方法を導入することで正確に求めることに成功した. | |
5/12(火) 16:00- 6F会議室 | 下川(M1) |
走査型SIMSを用いた小腸の広領域同位体イメージング手法の開発 | |
概要: 二次イオン質量分析計SIMSに搭載された同位体顕微鏡システムSCAPSは、隕石の分析による太陽系形成過程の解明や、はやぶさ試料がイトカワから持ち帰ったものであることの証明など、宇宙化学分野の貢献に大きく寄与した。近年ではエレクトロニクス分野や生命科学分野といった様々な学問領域においてもSCAPSの活用が期待されており、実際にマウス小腸におけるグルコース吸収動態の観察などが行われているが、試料のスケールが大きくなったことでSCAPSのみの分析では効率が悪くなってしまった。本研究では走査型SIMSを用いた広領域での同位体イメージング手法を開発し、評価することで、分析効率の向上を図った。 | |
5/12(火) 16:00- 6F会議室 | 武藤(M1) |
VMCの画像を用いた金星のPolar ovalの解析 | |
概要: Polar ovalは金星において可視、紫外の両波長帯で南極域に確認されている環状構造 である。近赤外領域での観測によって同じく南極域にはダイポール構造が存在するこ とが知られているがPolar ovalとの関係性についてはよくわかっていない。これまで Polar ovalは可視、紫外での観測であるため昼面でしか撮像されていない。故に全体 形状は不明であり、Ovalを形成するメカニズムも不明である。今回はVenus Express に搭載されているVMCのデータを使用し、金星の4日周期のスーパーローテーション を利用することによりPolar ovalの全体形状の復元を試み、また形状の時間変化を調 べた。 | |
4/28(火) 16:00- 5F会議室 | 須藤(M1) |
人工衛星で検知された地震先行的な電磁波強度変動の統計的解析とメカニズム 検討 | |
概要: 地震に関連する電磁気現象として大気圏および電離圏擾乱は1980年代後半ごろ か ら指摘されてきた。 これらの現象は短期地震予測への利用が期待されるが、変動が非常に微少であ る ことやマグニチュードの大きな地震に対してのみ観測されることから、 大 量な イベント収集による統計的な解析が不可欠とされる。 地球上の無数の地点で発生する地震に対してこれらの現象を効果的に収集する 手 段として衛星観測が挙げられる。 特に近年は2004年6月にフランスCNESによって地震電磁気衛星DEMETERが打ち上 げ られ、地震に先行する夜間VLF帯電磁波強度減少現 象が統計的結果として 得られ ている。 NemecらはDEMETERによって得られた2.5年間分の電場データを解析し、地震発 生 前4時間以内の夜間に震央上空で観測したVLF帯電磁 波強度が通常に比べ4? 6 dBほど減少するという規則性を指摘した。 本研究においては彼らの使用したアルゴリズムを再構築することで、DEMETER の 観測した全データ(6.5年間)による本現象の検証を行った。 その結果、 Nemecら の報告した地震先行的な電磁波強度減少は統計的に検証することがで きた。 さらに本現象を検知したと思われる数軌道のデータを抽出し、時系列解析を行 う ことで、地震への接近にしたがって強度減少が起きている事例を直接確 認 する ことができた。 本現象が観測された電磁波は落雷を起源とするVLF帯電磁波がホイスラーモー ド で衛星高度まで伝播してきたものと考えられるが、以上の現象は同時 刻に おけ る全球落雷数との相関が見られなかった。 したがって本現象は、電磁波発生後の伝搬過程での減衰が原因であると考えら れ る。減少の見られた周波数帯から、本現象のメカニズムとして地震先行 的 な導 波管モードのカットオフ周波数上昇が考えられる。 | |
4/28(火) 16:00- 5F会議室 | 長谷川(M1) |
星間衝撃波の数値計算 | |
概要: 星間空間での一般的な現象として、超音速のガス流体が減速する際には衝撃波が 発生する。衝撃波が発生すると、星間ガスを圧縮し物理量を変化させるため、衝 撃波は星間ガスの構造に深く関係している。 そこで本研究では、星間衝撃波の数値計算を行い、衝撃波の通過による物理量の 変化を調べた。星間衝撃波はJ-shockとC-shock の2種類あり、これら2つの衝撃波 について、数値計算を行った。 | |
4/28(火) 16:00- 5F会議室 | 星(M1) |
あけぼの衛星サウンダー観測データに基づく電離圏電子密度構造の研究 | |
概要: 極域電離圏の電子密度構造は、磁気圏・電離圏結合過程の結果として生じるプラ ズマ対流による輸送過程と、太陽紫外線ならびに磁気圏由来の高エネル ギー電 子の降込みに起因した電離生成過程、および解離再結合をはじめとする消滅過程 とのバランスにより、多様な時間・空間変動を示すことが明らか となってい る。本研究では、あけぼの(EXOS-D)衛星搭載サウンダーの観測データに基づい て、電離圏トラフの電子密度および電子、イオン温度 の高度分布を調べた。 あけぼの衛星には、電離圏電子密度の高度プロファイル遠隔探査を目的として Plasma Wave detectors and Sounder (PWS)が搭載されている。そのサブシステ ムであるStimulated Plasma Wave experiments (SPW) は、0.3 MHz から 11.4 MHz まで周波数を掃引しながらパルス波を送信して、電離圏からのエコーならび に衛星周辺で生じるプラズマ共鳴を計測する[Oya et al., 1990]。SPWによって 32 秒毎に取得されるイオノグラムから、エコーの周波数と遅延時間を読み取 り、電離圏各高度でこれらに合致するような電磁波の群速度を求めることによっ て、電 離圏プラズマ密度の高度分布が得られる。本研究では特にEISCATレー ダーのあるトロムセー(69.58°N、19.23°E)上空付近を通過 する軌道で得られた イオノグラムに着目して解析を行った。その結果、電子密度が局所的に50 %以上 減少する電離圏トラフを2例同定した。1995年2月28日に(65°N、15°E)で観測さ れた例をイベント1、1995年3月1日に (70°N、35°E)で観測された例をイベン ト2と呼ぶ。同時刻のEISCAT UHF レーダーの観測データから下部電離圏では電 子密度が減少していないことが確認された。 次に本研究では、同定された2例のイベントについて解析を行い、イオノグラ ムから電子密度の高度プロファイルを導出し、スケールハイトを算出し た。解 析の結果、密度減少領域では周囲と比べてスケールハイトが20%前後小さくなっ ていることが示された。両極性拡散による拡散平衡を仮定して 500km高度でのイ オンと電子の温度の和を見積もると、イベント1ではトラフ外では5730 Kである のに対しトラフ内では3730 K、イベント2ではトラフ外では3290 Kであるのに対 しトラフ内では2940 Kに減少していた。電離圏トラフにおける電子密度の減少を 生じさせる物理過程としては、過去の研究では温度上昇による解離再結合の促進 が指摘されている [e.g., Williams and Jain, 1986]。一方,本研究で同定した イベントでは温度はむしろ減少しており、典型的な電離圏トラフとは異なる形成 過程の寄与が示唆される。但しイベント1 に関しては、トラフが観測された地 方時においてIRI-2012モデルから得られる電離圏温度が約3000 Kであることか ら、解離再結合が促進され、電子密度減少領域が現れた可能性が指摘される。本 発表では、上記の同定されたイベントとその解析結果を示すと共 にスケールハ イトの相違が温度以外の要因(イオン組成等)もしくは温度の時間変化(地磁気 活動等)に依存している可能性についても議論する。 | |
4/28(火) 16:00- 5F会議室 | 奈良(M1) |
学部4年の演習で行ったことの紹介 | |
概要: 4年の前期では、Venus ExpressのVMCの可視画像を用いて金星の低緯度の雲画像 の解析を行った。可視波長領域は太陽光スペクトルのピークにあたるため、金星の エネルギー収支に大きな影響がある。可視波長で見る金星は輝度の変化に乏しく、 補正を行うことで雲の構造を抽出できた。今後の研究生活ではより長時間のデータ を用いて金星の雲の構造を明らかにしていきたい。 後期では、ひさき衛星の観測機EXCEEDの観測を用いて金星大気の極端紫外線領域の スペクトルの同定を行った。これまでにいくつかの金星の極端紫外線観測は行われ てきたが、20日間の長時間の積分によってそれらでは見られなかった分子帯や原子 線が見えた。いまだいくつかの正体不明な輝線があり、現在探索中である。 | |
4/21(火) 16:00- 5F会議室 | 北村(PD) |
地球からのイオン流出 | |
概要: 地球の電離圏からはプラズマが流出し、磁気圏へと供給されている。特に地球起源の重イオンはリコネクションや磁気嵐等のさまざまな磁気圏現象に大きな影響を与えているといわれている。まず、イオン流出過程の中で最も基礎的で極冠域でみられるポーラーウインドについて、電離圏が日照状態にあるとき電離圏から流出する光電子がイオンを引き上げる効果がどのような影響を与えるかについてFAST衛星の長期観測データを解析した結果を報告する。太陽活動度の変動によって電離圏から流出しようとする光電子のフラックスが変動するため、その増減を利用し光電子の果たす役割を評価した。ポーラーウインドのイオンフラックスはそのエネルギーの低さのため正確な直接観測が難しいが、沿磁力線電流が弱い部分に着目し、電子の正味の流出フラックスとイオンのフラックスが釣り合っているという特性を用いてイオンのフラックスを推定した。その結果、ポーラーウインドが支配的となる地磁気静穏時においては極域高高度にやや大きな沿磁力線方向の電位差(10-25 V)が発達し、光電子の大部分を電離圏に反射し、反射されずに流出する光電子のフラックス(=ポーラーウインドイオンのフラックス)は変化しないという事が明らかになった。さらに、あけぼの衛星の熱的エネルギーイオンの観測の統計解析からイオンのフラックスは水素イオンが担っている事が示された。これらの描像を総合すると、ポーラーウインドのフラックスは電離圏上部における水素イオンの生成率で決定され、それと電子のフラックスが釣り合うようにやや大きな電場が高高度で生成し、電子を電離圏に向けて跳ね返してしまっている系になっていると考えられる。今回のあけぼの衛星の観測結果からはたとえ日照であっても酸素イオンはポーラーウインドの過程だけではほとんど流出しないと考えられ、流出するためにはオーロラ等による加熱が重要と考えられる。次に行ったFAST衛星の遠地点付近(~4000 km)のオーロラ帯における観測の統計解析では日照日陰の違いが流出イオン(>10 eV)の組成に大きく影響を与えている事が明らかになった。さらに、日照領域のこの高度で捉えられた酸素イオンの大部分は磁力線垂直方向に加熱されたものであった。これらの結果は、日照領域における磁力線垂直方向の加熱過程が今後酸素イオン流出、さらには磁気圏への酸素イオンの供給過程をより詳細に理解するために最も注目すべきポイントであるということを示している。 | |
4/21(火) 16:00- 5F会議室 | 疋島(PD) |
Simulation of whistler-mode chorus waves in the inner magnetosphere and Wave-Particle Interaction Analyzer (WPIA) onboard the ERG satellite | |
概要: By using simulation results of whistler-mode chorus generation, we study the onboard data processing necessary to realize Wave-Particle Interaction Analyzer (WPIA) on board the ERG satellite. The WPIA measures resonant interactions between plasma waves and charged particles in space plasmas, which will be installed as a software function in the ERG satellite (Exploration of energization and Radiation in Geospace). The WPIA uses the wave field vector and velocity vector of each electron which are measured by wave and particle instruments onboard spacecraft with time precision of microsecond. With accurate calculation of the quantity of energy transfer "W" in the WPIA, we need to obtain exact phase variation of whistler-mode chorus waves with the onboard processing. We evaluate the processing of waveform data in the simulation study. | |