2007年度 宇宙プラズマ研究系セミナー



■場所:A棟5F会議室
■時間:水曜16時(変更の場合あり)
■連絡先:笠原 慧 (e-mail: kshr[at]stp.isas.jaxa.jp)
■備考:- 発表時間は一人当たり45分程度
- 背景知識の有無に拘らず理解できる導入を心がけること

                        
開催日・場所 発表者 (敬称略) 担当チーム
3/19 16時- 5F会議室 浅村 宇宙プラズマ
PSBL での降りこみ電子とオーロラ発光

概要:

これまでの衛星観測により、オーロラ帯の高緯度側境界に 位置する PSBL 域では降りこみ電子と共に地球向きの Poynting flux を持つプラズマ波動が観測されている。 高高度を飛翔する POLARと低高度を飛翔する FAST を比較すると、 FAST の方が電子のエネルギーフラックスが大きく、Poynting flux は小さい (電離層に map した場合)。このため、プラズマ 波動が電子を加速したものと考えられる。 れいめい衛星ではプラズマ波動を計測していないが、FAST と 同様な降りこみ電子構造が高緯度域で見られるため、これを プラズマ波動によって生成されたものとした。 このイベントを、プラズマ粒子と磁力線フットプリントでのオーロ ラ発光層の同時観測が成立したイベントの中から選び、発光層の活動 を調べた。発光強度は弱いものの、対応すると思われるオーロラ 発光層を見つけたので報告する。
3/19 16時- 5F会議室 宮下 宇宙プラズマ
磁気圏近尾部のサブストーム開始に伴う発展

概要:

サブストームの発生機構を解明するために、 Geotail、Polar、GOES衛星のデータを用いて、 磁気圏近尾部のサブストーム開始に伴う発展について統計解析をし た。セミナーでは、その最新の結果と今後の課題についてまとめる。
3/6 15時- 5F会議室 Craig Pollock swri
ENAs Emitted from Low Altitudes

概要:

The Medium (MENA) Energy Neutral Atom (MENA) imager on NASA’s IMAGE satellite observed ring current ENA emissions during the active phase of the IMAGE. These emissions often contained a component emitted from very low altitude. This component appeared to be highly localized and, at times, very bright when observed from high altitude along the IMAGE orbit, though the apparent localization is at least partly due to highly non-isotropic (beaming) emission. During 2003, the IMAGE orbit line of apsides had precessed through low geomagnetic latitudes, offering views of low altitude ENA emission regions from relatively low altitude and high latitude, often sequentially from over the northern and southern poles. From these vantage points we observe low altitude ENA emissions that are in fact strongly peaked in pitch angle, at barely escaping pitch angles near 90 deg the emission point and also strongly peaked in Invariant Latitude distribution. These factors have important implications for our ability to perform global observations of precipitating ions using remote sensing of ENAs. We present a notional concept of Geomagnetic ENA Emission Cones (north and south), within which fluxes of ENAs emitted from low altitude are localized. These cones emanate from bands in the exosphere at the foot points of ion precipitation sources, such as the ring current. We will present these observations, compare them with current thinking on the dynamical interaction at the exosphere/ring current interface, and comment on their geophysical significance.
3/5 16時- 5F会議室 大島 宇宙プラズマ
火星大気の温度擾乱とジオポテンシャルの時間・空間分布

概要:

火星探査機 MGS 搭載の分光計 TES は火星大気の長期間・全球的な データをもたらした。私の修士論文研究では大気運動の活発さの目 安の1つになる温度擾乱(数日程度での大気温度変動 )の空間分布を調べ、冬季北半球の高緯度で温度擾乱が大きいこと、またその空間 分布から傾圧不安定波とプラネタリー波の存在が示唆されることを 示した。そのときには、これらの波が実際にどのような振幅・位相 ・波数で存在し火星大気の構造や運動にどのように寄与しているか を定量的に議論することが残されていた。研究はまだ定量的議論ま で至っていないが、本発表では出発点となるジオポテンシャルの空 間分布を示し、温度擾乱との関係などに踏み込みたい。
2/14 16時- 5F会議室 三津山 宇宙プラズマ
Venus Express地上同時金星観測キャンペーン

概要:

現在金星周回軌道上で観測を行っている金星探査衛星Venus Expressとの同時観測として各国の研究者が金星の地上観測 を行っている。それらの研究結果の共有を目的として、去年の12月 にアムステルダムにおいてVenus Express Ground-based Observation workshopが開催された。多くの地上観測研究者や Venus Express搭載機器の各PIらが参加し、おのおのの成果を 報告した。我々は、同時観測の一環として、2007年7月と10月にハワイの IRTFおよびすばる望遠鏡を利用して、金星の中間赤外線観測を 行った。雲頂付近の大気運動により雲頂温度が変動し、それが 放射される中間赤外線量に表れると考えられている。2時間間隔 の金星雲頂温度構造の画像から有意な時間変動が導出でき、 南北方向の大気変動を示唆する結果がみられた。 本発表では、workshopの概略や、我々の中間赤外線観測 の初期解析の結果について報告する。
1/23 16時- 6F会議室 田中(孝) 宇宙プラズマ
KAGUYA(SELENE)衛星搭載用プラズマ観測器による月由来・重イオン観測の初期結果報告

概要:

月の希薄大気は、1980年代の発見から今日まで幾度と なく地上からの観測が行われてきた。 こうした希薄大気が太陽光によってイオン化されたものや、 地表面から直接放出される重イオンは、太陽風によって "剥ぎ取られ"、月重力圏の外へと輸送される。 こうして輸送された月由来の重イオンは、衛星搭載用の プラズマ観測器によって稀に観測が行われる事があったが、 地上観測から相当量の存在が予想されるNa+、K+などの イオンは、殆ど検出されていなかった。 12月中旬から定常観測に入ったKAGUYA(SELENE)衛星搭載用の MAP-PACE-IMAでは、こうしたNa+やK+などのアルカリイオンが 検出されており、その検出のされ方は太陽風の状態など、 様々な要因によって変化している。 今回のセミナーではIMAによって検出された、重イオンの観測を 紹介するとともに、今後の解析手法などについて議論を行う
1/23 16時- 6F会議室 長谷川さん 宇宙プラズマ
Flux transfer event in a wavy dayside low-latitude boundary layer seen by THEMIS under northward interplanetary magnetic field

概要:

On 8 June 2007, the THEMIS satellites with a string-of-pearls configuration traversed a low-latitude boundary layer (LLBL) at ~16 MLT (magnetic local time) during an extended interval of northward interplanetary magnetic field. Data from the TH-A satellite show quasi-periodic (1-3 min period) entries from the LLBL to the plasma-depletion-layer (PDL) part of the magnetosheath and vice versa, suggestive of a surface wave on the magnetopause. Flux transfer events (FTEs) were identified often when the satellite crossed the wavy boundary from the LLBL to PDL. Grad-Shafranov and MHD reconstructions of the velocity and magnetic fields show that Kelvin-Helmholtz (KH) waves with a length of ~1 Re and width of < 2000 km were propagating tailward along the magnetopause and that a magnetic island was embedded between two KH vortices. We thus infer that FTEs in this particular event are generated by magnetic reconnection initiated at the trailing (subsolar-ward) edge of the KH waves where the magnetopause current sheet, though its magnetic shear being low, can be compressed by vortex flow. The aspect ratio of the vortices suggests that the KH instability (KHI) is not yet in the nonlinear stage, and the vortex width, which is smaller than the LLBL width (~0.5 Re) estimated from the multi-point observations, suggests that dense magnetosheath-like ions in this LLBL is due to capture of solar wind via double cusp reconnection or to diffusive transport rather than to the KHI.
1/16 14時- 5F会議室 西村 東北大小野研
storm, substorm時の内部磁気圏対流電場

概要:

内部磁気圏の対流電場は環電流の発達,プラズマ圏の収縮といった内部磁気圏プラズマの運動を支配する基本的な物理量であり,磁気嵐の発達に本質的な役割を担っている。本研究ではAkebono衛星を用いた磁気嵐時の電場の統計解析結果,およびCRRES衛星を用いた磁気赤道域での電場観測から得られた結果を報告する。磁気嵐時の磁気圏対流の太陽風応答を調べたところ,IMFが南を向いてから2分以内という短い時間で対流電場の増大,背景磁場の減少が起きることが分かった。substormに伴う内部磁気圏対流の変動を調べたところ,onsetと同時に内部磁気圏電場の増大と環電流粒子の加速が見られた。
1/16 14時- 5F会議室 田中健 宇宙プラズマ
爆発的磁気リコネクションプロセスに対する温度非等方性の効果

概要:

イオンスケールを超える分厚い電流層中に於ける, 3次元爆発的磁気リコネクションプロセスに対する, 初期温度非等方性の効果が3次元粒子計算を用いて調べられた. 初期温度非等方性αjがαj = (磁場に垂直な温度) / (磁場に平行な温度) で与えられ, j = i, eである. 初期電子非温度等方性のみが考慮される (αe= 2) 時,電子温度非等方性が非常な初期段階に於ける小規模スケールの磁気島多発に費やされ,最終段階に於けるリコネクションフラックス増加に関与しない. 一方, 初期イオン・電子温度非等方性が同時に考慮される (αi = αe = 2)時, イオン温度非等方性の長時間維持がリコネクションフラックスの飽和レベルを爆発的に増加させ, 結果的な磁気島がローブ領域まで拡大, 成熟する.
12/21 15時- 5F会議室 徳田 東大岩上研
金星上層大気中のHClの定量とその半球分布

概要:

化学的に安定なHClはClOx の貯留種で、金星大気の化学反応に大きな役割を果たしていると考えられている。過去のHCl混合比に関する研究はいずれも全球平均値であり、雲上で0.6ppm、高度10−40kmでは 0.5ppmという値である。またVenus Express搭載のSOIRからは雲上で0.1〜0.17ppmと導かれている。我々の研究グループは2007年5月から6月にかけてハワイ島マウナケア山にある望遠鏡IRTFを用いて金星の昼面分光観測を行った。観測波長は1.7μmで、金星の硫酸の雲で反射された太陽反射光の中に金星大気中のHClの吸収線が見えた。本発表ではこの吸収線の深さから導いたHClの混合比と上層大気における半球分布について定量的な議論を試みる。
12/21 15時- 5F会議室 平井 東大星野研
磁気圏尾部における非熱的粒子の生成過程

概要:

磁気圏尾部においては、Maxwell 分布からはずれた非熱的粒子がしばしば観測されており、その生成メカニズムとして磁気リコネクションや乱流加速などが提案されているが、どの過程が生成を担っているのかは明らかになっていない。本研究では、GEOTAIL 衛星で観測された速度分布関数をMaxwell 分布をベースとして高エネルギー粒子がべき乗則に従うκ分布に当てはめることで、プラズマの密度、速度、温度、およびベキ指数を求め、磁気圏尾部における非熱的粒子の生成について統計解析を行った。近尾部において非熱的粒子のエネルギー密度に朝夕非対称性が見られること、および、遠尾部でより非熱的粒子が卓越する結果が得られた。本セミナーでは、統計解析結果と合わせて高速流が観測されたときのイベントスタディも踏まえて、非熱的粒子の生成過程を議論する。
12/19 15時- 5F会議室 三村 東大横山研
 コロナループ振動ダンピングの物理機構

概要:

1998年TRACE衛星によってコロナループ振動が初めて撮像観測された。この振動は3周期程度の非常に短い時間で減衰しているが、その物理機構については未だ解明されていない。そこで、本研究ではMHDシミュレーションを用い、ループ振動の減衰機構を調べた。結果、2次元シミュレーションと3次元シミュレーションでは減衰の振る舞いが違うこと、減衰は共鳴吸収によるループ表面での運動エネルギーの熱化が原因であること、ループの長さ/太さの比が大きくなると、Rayleigh-Taylor不安定が起こっていることがわかった。本セミナーではこれらシミュレーションから得られた結果について議論する。
12/19 15時- 5F会議室 村上 東大吉川研
 「人工衛星による撮像から明らかにするプラズマ圏の変動」

概要:

プラズマ圏の形状や運動は太陽風が運ぶ惑星間空間磁場間に大きく影響されている。プラズマ圏内のイオンによる極端紫外領域の共鳴散乱光を撮像すれば、プラズマ圏の時・空間変動をそれぞれ分離して捉えることができる。私は画像解析によるプラズマ圏の太陽風に対する応答に関する研究および極端紫外光によるプラズマ圏撮像器の開発を行っている。本セミナーでは以下の2つのテーマについて発表する。1. グローバルイメージが明らかにした太陽風に対するプラズマ圏の応答  2000年から2001年における16イベントについて、IMAGE衛星EUV撮像器が捉えたプラズマ圏の画像から対流電場の時間発展を見積もり太陽風電場との相関を求めた。その結果、プラズマ圏が太陽風の変動に対して10-30分で応答することを明らかにした。この応答時間は太陽風電場が電離圏を経由して内部磁気圏へ伝播している可能性を示唆している。 2.極端紫外光検出器の位置分解能向上に関する研究  プラズマ圏撮像器は電子増倍部(MCP)と2次元位置検出部(レジスティブアノード)から構成される。MCPの利得が高くかつ一定に近いほど検出器の位置分解能は高くなる。私は2段と3段のMCPを組み合わせた検出器を試作し性能を評価した。その結果、MCP間に逆向き電圧を印加することで利得のばらつきを制御でき、位置分解能を従来の4倍に向上させられることを確認した。
12/5 16時- 5F会議室 神山徹 宇宙プラズマ
「金星雲頂高度における風速分布の波動構造とそれに伴う運動量輸送について」

概要:

 金星では様々な時間・空間スケールの波動の伝播が大気中の角運動量を輸送し、上層大気に蓄積することでスーパーローテーションに代表される大気循環を生成・維持していると考えられている。本発表では、誤差の見積もりを改良した手法を用いて大気中を伝播する波動の解析をし定量的な見積もりを行った結果を報告する。解析には、Galileo探査衛星が1990年2月に金星をフライバイした際に撮像した雲頂高度の雲画像を用いた。解析の結果、雲頂高度では太陽光加熱により励起された熱潮汐波がもたらす風速分布が見られた。また平均的な風速分布を取り除くことにより、赤道域に赤道ケルビン波と思われる構造が卓越していることが分かった。これらの解析結果を報告すると共に、金星大気中を伝播する波動について考察する。
12/5 16時- 5F会議室 鈴木一成 宇宙プラズマ
「サブストーム開始時の磁気圏尾部における地球方向の高速プラズマ流と双極子化」

概要:

 サブストームはオーロラブレイクアップなどを引き起こす地球磁気圏のエネルギー解放現象であり、衛星でin-situ観測される代表的な非定常現象である。この現象を説明するために多くのモデルが提唱されているが、現在ではNENL(Near-Earth Neutral Line)モデル[Hones, 1976;Baker et al., 1996; Shiokawa et al.,1997]、CD(Current Disruption)モデル[Lui, 1996]の2つのモデルが主に論じられている。この2つのモデルの大きな違いは物理現象の伝播方向の違いであり、NENLモデルは尾部の磁気リコネクションから地球方向の高速プラズマ流が生まれ、その結果として磁場の双極子化(dipolarization)が起こるが、CDモデルでは磁場の双極子化が先に起こり、それにより生じた希薄波(rarefaction wave)が尾部方向に伝播して磁気リコネクションを引き起こすと説明されている。したがって、観測データからサブストームの2つのモデルを議論する際に高速プラズマ流と磁場の双極子化は非常に重要な物理現象と考えられる。過去の研究では、サブストーム開始時前後において磁気圏尾部どのように変化するのかをまとめた統計解析が行われている[Machida et al., 2000; Miyashita et al., 2003]。その結果、サブストーム開始時前後の磁気圏尾部の様相は明らかになりつつある。本研究では、このような統計解析を背景として1996-2005年のGEOTAIL衛星、2000-2005年のCluster衛星のデータを用いて、高速プラズマ流と磁場の双極子化についてより詳細なイベントごとの解析を行い、以下の4つの結果を得た。(1)地球方向の高速プラズマ流に伴う磁場変動は、サブストーム開始を基準とした時刻と位置によって一時的な増加(Transient Enhancement)と双極子化の2種類のタイプにわかれる。(2)磁場の双極子化に伴う高速プラズマ流には地球方向の成分だけではなく尾部方向の成分も観測されるイベントが存在する。(3)磁場の双極子化に伴う地球方向のプラズマ流の速度は地球に近づくほど遅くなっている。これはFlow Braking[Shiokawa et al., 1997]が起きていることを示唆している(4)高速プラズマ流と磁場の双極子化の結果から、双極子化領域が尾部に広がる速度は200km/sec程度である。
11/28 16時- 5F会議室 空華智子 宇宙プラズマ

概要:

金星の大気科学については、スーパーローテーションや熱収支など興味深い謎がまだまだ多く存在する。現在までにこれらの現象に関しては様々なメカニズムが提案されているが、検証に必要な情報、特に雲層内部の物理量が不足しているために未だ解明には至っていないが、金星の全球を覆っている硫酸雲が、金星特有の現象に重要な役割を果たしていると考えられている。過去の金星探査においては、プローブ投下による直接的な温度・圧力測定や、周回衛星による可視光や紫外光による観測により様々な物理量を決定しようと試みられてきた。プローブによる観測は、金星大気の情報取得に重要な役割を担ったが、観測領域が一部に限定されており、また、周回衛星による観測では雲の内部を見ることはできなかった。しかしその後、赤外光により雲層内部をみることが可能であることがわかった。そこで、本研究では、昨年ESAによって打ち上げられたVIRTIS/Venus Expressの高解像度の赤外線分光撮像装置によって得られたデータを用いて雲構造を解明する。その第一歩として、今回は、赤外線域の大気の窓領域である1.7μmと2.3μmの2波長を用いて、雲粒の大きさが場所によりどのようになっているかを評価した。
11/28 16時- 5F会議室 伊藤裕子 宇宙プラズマ
「火星大気中のダスト分布の変動 」

概要:

ダストは火星大気中に常時存在しており、大気の構造と密接に関係していると考えられている。また、火星大気中において、地球と同様に、全球的な南北の温度差による擾乱が発達することが知られており、大気擾乱によって物質が輸送されると考えられている。そこで火星大気中のダスト分布の時間変動に着目し、大気中の波動に伴いダストが輸送される様子をとらえることで、ダストの輸送と大気擾乱の関連を明らかにしたいと考えた。 本研究では火星探査機 Mars Global Surveyorに搭載されている、赤外分光計 Thermal Emission Spectrometerから得られたダストの光学的厚さと温度のデータを約3火星年(1999年2月〜2004年4月)解析した。各緯度帯における東西の帯状平均からの差分を求め、時系列に並べたホフメラー図を作成し、ダストと温度分布の時間変動について調べた。その結果、夏の南緯70〜80度の緯度帯では、3火星年全てにおいてダスト分布が、波数1〜2で準周期的に変動することが明らかになった。この準周期的な変動においては、東経270°付近でダストが繰り返し増加し、続いてそれらが西向きに約3m/sで移動する。ホフメラー図において、経度に固定された構造はダストと温度で似た傾向がある。しかし、時間変化する準周期的な構造は温度分布では見られるとは限らない。本発表ではこれらの現象についての考察を行い、ダストと温度構造の関係について議論する。
11/21 16時- 5F会議室 伊藤祐毅 宇宙プラズマ
Inertial Alfven waveによるオーロラ微細構造形成:れいめい観測

概要:

オーロラ発光は,地上光学観測から100m以下の微細構造をもつことが知られている.これまで,単一の衛星で~2kmの微細な空間スケールにおける降下粒子とオーロラ発光の同時観測が行われた例はなく,れいめい衛星が初である.れいめい衛星にはこのオーロラ微細構造の解明のために,高時間・空間分解能を有する多波長オーロラカメラ(MAC)とオーロラ粒子観測器(ESA/ISA)が搭載されおり,高度650kmで同時観測を行っている.また最近の研究で,FAST衛星の観測とMHDシミュレーションからInertial Alfven waveが電離層でオーロラ微細構造を作り出すことができると考えられている.そして,Alfven waveの加速メカニズムによって電子のenergy time dispersionが生成されると考えられている.本研究では観測された画像・粒子データを用い,その同時観測データから電子のE-t図上に表れるInertial Alfven waveの電子加速により加速されたと考えられる電子のtime dispersionとオーロラアークのflowとの対応を統計的に調べた.この結果,time dispersionがある領域とオーロラアークのflowとの対応が高い確率であることがわかった.
11/21 16時- 5F会議室 湯村翼 宇宙プラズマ
磁気島合体を経由する磁気リコネクションでの電子加速

概要:

惑星磁気圏,太陽,パルサー磁気圏などの宇宙プラズマ中で発生する磁気リコネクションは宇宙に存在する非熱的粒子の生成源として注目される.近年ではシミュレーションを用いた研究が発展し,磁気リコネクションによる電子加速のメカニズムがしだいに明らかにされつつある.しかし, それらのシミュレーションの多くは初めから単一な X-line が形成されるモデルで行われていた.人工衛星による地球磁気圏尾部のその場観測では複数のX-lineと磁気島の存在が示唆されており,先のモデルでは現実の磁気リコネクションでも存在しうる磁気島の効果が反映されていない.本研究では磁気島と磁気島合体が電子加速メカニズムに与える効果の解明を目的とし,初期に複数の X-line が形成されるモデルでシミュレーションを行った.初期 X-line 数 8 の計算では磁気島の合体過程が 2 段階に分かれ,磁気島数が 8 から 2, 2 から 1 となるような合体が起こった.これに対応して X-line 付近での誘導電場による加速が 2 段階に分かれ,加速された電子は磁気島を取り囲む 2 重リング状の空間分布を形成した.磁気島合体領域では, 磁気島によって反平行磁場が押されるため強い駆動型リコネクションが発生し電子が加速された.
11/14 16時- 5F会議室 岡部勝臣 宇宙プラズマ
温度異方性スローショックによる遠尾部プラズマシートの加熱機構:GEOTAIL observation

概要:

地球磁気圏における重要な未解決問題の1つに、プラズマシートの粒子加熱機構がある。プラズマシートのプラズマの温度は数千万Kにも及び、この温度は何らかの加速、加熱機構が働いていないと説明が出来ない。この加熱機構として、プラズマシート、ローブ境界に存在するスローショックによる加熱が考えられており、実際、地球磁気圏遠尾部でのスローショックはGEOTAILによる観測等から解析されている[e.g., Saito et al.,1995]。しかし従来までのスローショック解析では、シートローブ境界のうちスローショックと解析されたものは1割程度にとどまっており、スローショックによるプラズマシート加熱モデルはまだ確実とは言えない。これらの解析では温度等方性を仮定しているが、地球磁気圏尾部でプラズマは温度非等方性を持つことが知られており、特に地球磁気圏尾部では磁場に平行方向の温度(Tparallel) は磁場に垂直方向の温度(T perpendicular)よりも高くなっている。プラズマの温度非等方性は、加速機構や等方化のプロセスなど、微視的なプラズマの運動を反映しており、宇宙プラズマ物理における重要なキーワードである。今回の研究では、まず温度非等方性仮定Rankine-Hugoniot  の式を解き、T parallel >T perpendicularの温度非等方性を考慮すると、温度等方的場合に比べて下流磁場は上昇、下流密度、速度、温度は下降することが分った。これはT parallel>T perpendicular の温度異方性を仮定すると、スローショックは弱くなる性質があることを示している。また、速いshock speed、低い上流β、高いshock angle をもつショックほど、温度非等方性を持ちやすいことが分った。これらの結果を用いて、GEOTAILのデータを用いて地球磁気圏遠尾部でのシートローブ境界を再解析した結果、温度非等方性を考慮するとシートローブ境界の50%がスローショックとなっていることを発見。リコネクションとスローショックの対応を調べ、リコネクションに伴ってスローショックが形成されることを示した。時間が余れば、温度非等方性仮定で現れるNew type MHD shockと、その存在可能性についても議論したい。
11/14 16- 5F会議室 内田大祐 宇宙プラズマ

概要:

次期太陽活動極大期にむけ内部磁気圏探査ミッションERGが計画されている.ERG衛星の主な探査対象であるring currentは,静穏時にはH+がおもな構成要素であるが,磁気嵐主相においてはO+のfluxが顕著に増加することが知られている.このO+は太陽風にはほとんど含まれておらず,その起源は主に電離圏であると考えられるが,そのエネルギーは1 eV以下であり,ring currentにおける典型的なエネルギー(10-100keV)には程遠い.このようにどのような経路・機構によって低エネルギーから中間エネルギーへと輸送・加速されるかについてはよくわかっておらず,これらを理解するためには,低エネルギーion観測が非常に重要である.また,磁気嵐回復相においてはring current の減衰が起こる.その要因としては,荷電交換,magnetopauseからの流出,ピッチ角散乱による電離圏への降込みなどが考えられているが,どの機構がどれほど寄与しているかは不明である.Ebihara and Ejiri(2003)によると,電荷交換による消失効率は低エネルギーではO+の方が高く,中間エネルギーではH+の方が高いという結果が出ている.このように,消失の時定数は 粒子種やエネルギーによって大きく異なる.従って,低エネルギーから中間エネルギーにわたってionのエネルギー・質量を分析することで,各消失機構のring current減衰への寄与を論じることが可能になる.今回はこれらの話と,低エネルギー観測器(LEP-i)の原理,また内部磁気圏において観測する上で重要となる,高エネルギー粒子によるノイズ及びその対策の話を合わせて発表する.
11/7 16:00- 5F会議室 井筒智彦 宇宙プラズマ
地球磁気圏近尾部の電流層構造とプラズマ流の関係

概要:

磁気圏尾部のプラズマシートでは、質量・エネルギー・磁場フラックスを輸送する高速のプラズマ流がしばしば観測される。高速プラズマ流生成のメカニズムは磁気リコネクションが有力であると考えられているが、どのようにして(トリガーの条件)どのような(single/multiple X-line? patchy/large scale?)X-lineが形成され高速プラズマ流をつくるのかは未だに解明されていない。またこれまでの多くの観測はほとんどが単一衛星によるものであり、磁気リコネクションを考える上で重要な空間スケール(電流層の厚さ)を捕らえることができないという問題点があった。そこで本研究では、多点観測衛星群Clusterのデータを用い、空間スケールを把握しながら高速プラズマ流のプロパティを調べることで、上述の謎に迫ろうと考えた。2001年7月〜10月に観測された高速プラズマ流をその速度の大きさと磁場データから算出した電流層の厚さによって5つに分類し、電流層の厚さ・磁場・密度・温度・圧力などを調べた。その結果、特に電流層の厚さに特徴的な時間変化の傾向があることがわかった。今回はその結果をもとに、電流層の時間・空間発展を議論したい。
11/7 16:00- 5F会議室 原田昌朋 宇宙プラズマ
ICI-2観測ロケットによるカスプ領域での低エネルギー電子計測

概要:

過去の研究によると、地球磁気圏カスプ領域においてHF帯電波の散乱されることが報告されている.Baker et al[1995]また、Moen et al[2002]は地上レーダとNIMS衛星の観測を用いてそういったHF帯電波の散乱境界と電離層での630.0nmのオーロラ発光を引き起こす粒子の降下境界とがよい相関を示していることを報告した. しかし、電離圏カスプ領域においてのHF帯電波散乱の物理的なメカニズムについては未だ明らかでない!Moen et al[2002]はそういったメカニズムの解明に当たって、観測ロケットによる高空間分解能な観測が一つの手段であることを提言し、2003年の冬にICI-1ロケット(Investigation of Cusp Irregularities)をノルウェイのアンドーヤロケット射場より打ち上げた. そして2008年12月に再びICI-2を打ち上げる計画が進行中である.JAXA/ISAS側は低エネルギー電子計測器(LEP-ESA)の開発を担当することが2007年7月に正式に決定し、現在2008年の打ち上げを目指して設計/開発/性能試験等を進めている状況である.また今回の観測ロケット実験で使用するマルチアノードは水星探査用MMO-MIAにも用いられるため、フライトテストを事前に行うという点からもこの実験は大きな意味を持つ.今回の発表では過去の研究成果や粒子計測の基本的知識について触れ、現在設計中の機器についても紹介したい.
11/2 16:00- 7F会議室 簑島敬 宇宙プラズマ
Studies on Variability of Non-thermal Emissions in Solar Flares

概要:

太陽フレアに伴って、数十keV〜MeVの非熱的電子が生成されている。しかしながら、これら非熱的電子の生成・輸送・消滅過程は未だ十分な理解がされていない。本研究では観測的・数値的手法により、太陽フレアにおける非熱的電子の物理量に言及する。フレアの非熱的電子の観測手段として、硬X線と電波が挙げられるが、両者は放射機構が異なるため、しばしば異なる特徴を示すことがある。この原因として考えられるのが、放射電子のエネルギーの違いである。ゆえにこの不一致の原因を理解することが、非熱的電子の理解に繋がる。そこで本研究ではまず、RHESSI衛星及び野辺山電波へリオグラフを用いて、太陽フレアの非熱的放射の観測を行った。次に、観測された放射の特徴を説明する注入電子について、輸送モデルを数値的に取り扱うことで、その分布(エネルギー・ピッチ角)に言及する。
10/30 16:00- 5F会議室 天野孝伸 宇宙プラズマ
Nonthermal Particle Acceleration in Collisionless Shock Waves

概要:

地球磁気圏を始めとした宇宙・天体プラズマではしばしば熱的エネルギーを遥かに越えた非熱的粒子を作ることが良く知られている。これら非熱的粒子の最も重要な例は宇宙線であろう。現在では1970年代後半に提唱された1次Fermi加速が超新星残骸衝撃波における宇宙線加速の標準理論として考えられているが、未だ多くの理論的困難が残されている。その中でも最も重要な問題は注入問題と呼ばれるものである。つまり熱的エネルギーからFermi加速が効率的になるエネルギー帯まであらかじめ粒子を加速する他のメカニズムが必要となる。特に電子の注入に関してはこれまで理論的には非常に難しいとされてきた。本研究では無衝突衝撃波の1次元粒子シミュレーションの結果に基づき、新しい電子の注入メカニズムを議論する。シミュレーション結果から、マッハ数の大きな準垂直衝撃波においては上流の熱的電子の一部が衝撃波遷移層におけるサーフィン加速、ドリフト加速と呼ばれる2つのメカニズムを介してFermi加速に必要なエネルギーまで加速されることが分かった。さらにこの加速メカニズムをモデル化することによって超新星残骸衝撃波の電子注入効率が定量的に説明可能であることを示す。
10/24 16:00- 5F会議室 齋藤実穂 宇宙プラズマ
電磁流体波の解析を用いたサブストーム研究:磁気圏近尾部赤道面の観測

概要:

サブストームは、成長相から爆発相にかけて数分という時間スケールで磁気圏の状態を大きく変える磁気圏の代表的な擾乱現象である。このサブストーム開始時の物理は、磁気圏での擾乱開始の位置、オーロラ空間構造との対応関係が観測的に未解明なため、多くの異なるモデルが存在するもののよく理解されていない。そこで、サブストーム開始時を詳細に調べることで既存の理論、モデルを検証できないか考えた。磁気圏近尾部は、オーロラ爆発と磁力線で対応する領域と考えられており、サブストーム開始に伴い、磁場の双極子化という構造変化をする。人工衛星で観測すると、磁場の双極子化が起きる数分前から電磁流体波とみられる。これを既存のモデルを用いて解釈すれば、モデルごとに異なるモード、役割を持つと解釈できる。本研究では、電磁流体波の性質から、既存のモデルや理論を検証する。電磁流体波のモード、波数ベクトルなどを観測から定量的に推定することができる手法を開発し、モード特定を行った。これは磁場とイオンの観測を組み合わせることで、ドップラーシフトを補正することで、複数のモードを同定することが可能になった。結果、オーロラ爆発と直接対応関係があると考えられるFast波、オーロラの空間構造や開始機構に寄与すると考えられているDrift波を初めて同定することができた。Fast波は、オーロラ爆発の開始と時間的対応がいい。しかし、解析からこのFast波は、既存のサブストーム開始モデルで考えられているRarefaction waveのように尾部へ伝播する波ではないことが示唆される。観測されたFast波が、磁場変動にShear成分を伴うこと、観測確率が低いことから、surface waveと解釈できる。 Drift波は、バルーニング不安定で理解される特徴を示した。Drift波(ballooning mode)は、サブストーム開始の数分前から表れ、近尾部真夜中付近のみで観測された。Drift波(ballooning mode)が観測されるときの近尾部プラズマシートの状態を調べると、通常より磁場が小さい、イオンの温度が低いという二つの傾向があることがわかった。地球磁気圏近尾部では、限られた場合しかバルーニング不安定が起こらないことが示唆される。
10/18 16:00- 5F会議室 関 克隆 宇宙プラズマ
非定常準垂直衝撃波における電子ダイナミクスの観測的研究

概要:

本研究の目的は、多点観測衛星CLUSTER-Uのデータを解析することにより、衝撃波遷移層の時間的・空間的変化が粒子の加速・加熱機構に与える影響を観測的に理解することである。 今回のセミナーでは、2つのイベントについて議論したい。 1.衝撃波角〜80度付近の衝撃波面の時間変化(リフォーメーション)の同定、 及び1D-PICシミュレーション結果との比較 2.衝撃波角〜50度付近の衝撃波面の構造、2D-PICシミュレーション結果との比較 ############# 以下、詳細 ############## 1.衝撃波角〜80度イベント:4衛星観測と1DのPICシミュレーションを用いて衝撃波構造を調べた。これらの観測結果から、理論・数値実験で提唱されていたリフォーメーションを、初めて詳細に同定した。Clusterによって衝撃波遷移層で観測された波も、シミュレーションで観測された波(MTSI)の特徴と矛盾のない結果が得られた。 2.衝撃波角〜50度:2時間の間に、Cluster衛星が3回衝撃波を観測した イベントがあった。観測された3つのイベントは、衝撃波の構造がすべて異なっており、これらの観測事実を解釈するためにβ値に着目してシミュレーションを行った。我々は、β値の異なる2つの2Dシミュレーションを行った結果、衝撃波上流のβ値により、ショック上流に伝播する波の振幅が異なることがわかった。上流の波の振幅が大きい場合は、衝撃波面との相互作用により衝撃波面が非定常構造となり、衝撃波面に沿った場所で衝撃波角が変わり、結果として衝撃波上流で密度非一様性が起こることがわかった。
10/10 16:00- 5F会議室 高田拓 宇宙プラズマ
多点衛星観測による磁場の双極子化と高速流の関係

概要:

オーロラサブストームは、地球磁気圏全体に影響を与えるエネルギー現象であるが、そのトリガーメカニズムは未だ完全には理解されていない。この現象の鍵となるのが夜側磁気圏尾部で見られるプラズマの高速流(BBF)とより地球側で見られる磁場の双極子化現象(dipolarization)である。これら二つの現象の因果関係は既存のサブストームモデルの差異でもあり、その関係を理解することはサブストームの本質に迫ることになる。今回は、(1)Cluster・DoubleStar衛星による同時観測に加えて、静止軌道上の衛星観測も比較しながら、BBFとdipolarizationの統計的関係を議論する。時間があれば(2)BBFに伴う境界層での電流構造と電離層での結合関係、についてのその後も紹介する。
10/3 16:00- 5F会議室 西野真木 宇宙プラズマ
低密度太陽風のときのバウショックとショック下流の性質

概要:

低密度太陽風に関して、レビューおよび最新の成果を報告する。太陽風の密度は通常は5〜10/cc程度であるが、まれに1/ccよりも低くなることがある。このような低密度太陽風は発生頻度は少ないものの、ひとたび発生すれば磁気圏の形状に大きな影響を与えたり、地球磁気圏の前面のバウショックの位置が太陽方向に大きく移動したりする。また、太陽風密度が低下するとアルフヴェン速度が大きくなり、アルフヴェン・マッハ数(VA)が低下するため、バウショックはfast-mode shockとしては弱くなるが、ランキン・ユゴニオ関係式から下流側の面白い性質が導かれる。今回は、低密度太陽風のときのバウショック下流のジオテイルによる観測を示す。さらに、このときの磁気圏の全体構造を調べるためにグローバル・シミュレーションを行い、バウショック下流全体の様子や磁気圏全体の形状について新たな知見が得られつつある。
10/3 16:00- 5F会議室 亀田真吾 宇宙プラズマ
水星ナトリウム大気光カメラMSASI

概要:

水星磁気圏探査機に搭載しナトリウム大気の散乱光を捉えるMSASIという観測器について紹介します.MSASIはファブリペロー干渉計を用いることで波長分解能100,000の達成を目指し、高速読み出し可能なCMOSと光量増大用のイメージインテンシファイヤを組み合わせた検出器を持つことが主な特徴として挙げられます.今回は現状報告ではなくこれまで5年間の経緯をまとめてお話ししてみようと思います.また時間があればファブリペロー干渉計の今後の開発計画についても紹介します
9/19 16:00- 5F会議室 中村琢磨 宇宙プラズマ
昼側磁気圏境界におけるFTEsと見られる磁場変動について

概要:

Dungey(1961)は、IMFが南向き時に昼側の磁気圏境界で磁気リコネクションが発 生することで太陽風プラズマが磁気圏内部へ運ばれることを予想したが、前面の 磁気圏境界で定常的な磁気リコネクションを観測することは少ない。一方、磁気 圏境界では頻繁に磁場のパルス的な変動が見られる。Russell and Elphic(1978) は、この磁場変動は一時的な磁気リコネクションがもたらした磁束の移動による ものだと予想した。その後この磁場変動を説明するモデルが多く提唱されたがま だ解決されていない。本研究では、Geotailの7年分のデータをACEの太陽風デー タと比較することでどのような条件の元でこの磁場変動が観測されるかを統計的 に解析した。次に、2次元2流体シミュレーションを行い理論的にどのような条 件の時に磁場変動が形成されるかを確かめたところ、観測結果とのよい整合が見 られた。具体的には、シース領域(太陽風領域)に流れがある状態で磁気リコネ クションが起こると磁気圏側で磁場変動が観測されることが分かった。この結果 は、昼側の磁気圏境界では定常的な磁気リコネクションよりも動的な磁気リコネ クションが頻繁に起きていることを示唆している。
9/12 16:00- 5F会議室 松岡彩子 宇宙プラズマ
BepiColombo MMO 搭載磁力計の検討

概要:

日欧共同水星探査プロジェクトBepiColomboの主目的に、水星の持つ固有磁場の詳細計測、水星の磁気圏におけるプラズマの物理プロセスの解明がある。これらの目的を達成するために、BepiColomboを構成する2機の探査機のうちの1機、Mercury Magnetospheric Orbiter (MMO)搭載磁力計の設計を進めている。MMOには、日本のグループが製作する MGF-I とヨーロッパのグループが製作する MGF-O の2台の磁力計が搭載される。MGF-Iの基本設計は、これまで多くの衛星に搭載されてきた、アナログフラックスゲート方式である。これまでの磁力計に対して新しい点は、耐放射線性を持った、ディスクリートΔΣアナログ−デジタル変換を用い、20ビットのアナログ−デジタル変換を行っていることである。また、日本の従来のフラックスゲート磁力計に比べて、軽量、省電力、対放射線性、広い温度範囲での性能に優れている。ブレッドボードモデルによって得られた、特性・性能の結果を紹介する。
9/12 16:00- 5F会議室 笠原慧 宇宙プラズマ
Single-sided strip SSDによる中間エネルギーイオン計測

概要:

我々は,ERG,X-scaleといった機会をいかして,過去に類を見ない 感度・時間分解能で磁気圏の中間energy ion分析(10-200 keV/q)を行うため, これまでに新型静電分析器(ESA)とそれに付随する質量分析器(ToF unit)を 開発してきた.これらESA+ToFの組み合わせに固体検出器(SSD)を 加える事で,noiseの除去効率を上げると同時に,ionの荷電状態まで 決定する事ができるようになる.我々はこの用途に向け,高energy物理や X線天文の分野で開発が進められてきたstrip typeのSSDを初めて 宇宙plasma観測に応用する事を考えている. この型のSSDは,strip毎に信号を 読み出すことでnoiseを抑える事ができるのが特徴である.今回,このSSDの試験を 行ったところ,noiseが6keV程度である事,不感層の厚みが300nm程度である事が わかった.Energy分解能は,40-200 keV/qの範囲内でHe, Oといったionの電荷を 決定するのに十分である事も確認できた.
9/5 16:00- 5F会議室 浅村和史 宇宙プラズマ
オーロラ帯で観測される上向き電子流

概要:

真夜中付近のオーロラ帯では沿磁力線上向き電子流が観測される。 この電子流のピッチ角は数度以内に収束しており、エネルギーは 10eV以下から数keV まで広がっている。 FAST 衛星などの観測によって、この電子流 (AEF) は高度 1000km 程度から観測され始め、高度が上がるにしたがって観測確率が増大 することがわかっている。 今回、高度 620-680 kmでも AEF が観測された。 衛星より下部で加速が起こっている必要があるため、これは狭い 領域で加速が起こっていることを示す結果である。 また、AEF はブラックオーロラとの関連が指摘されている。 限られた例しか得られていないが、ブラックオーロラとの明白 な関連は見つからなかった。
9/5 16:00- 5F会議室 斉藤義文 宇宙プラズマ
打ち上げ間近:SELENE(かぐや)搭載プラズマ観測装置MAP-PACEの概要とデー タ処理計画

概要:

1960年代から1970年代にかけて、月周辺空間における低エネルギー 荷電粒子の観測が精力的に行われ、この間月周辺プラズマ環境についての多く の新しい発見がなされた。しかし、その後月の探査を行う人工衛星はいくつか あるもののそれらの殆どは月表面のマッピングを目的としており、米国の Lunar Prospector衛星による100km以下の低高度における低エネルギー電子の 測定結果、米国のWIND衛星による月フライバイ時に得られた月wake領域のプラ ズマデータ以外には、月近傍の低エネルギー荷電粒子に関する新しい情報は殆 ど得られていない。PACEは、月の周りの電子を計測する電子分析器2台 (ESA-S1とESA-S2)、太陽風イオンを計測するイオン分析器1台(IEA-S)そして 月周辺のイオンを計測するイオン質量分析器1台(IMA-S)で構成されている。 ESA-S1とESA-S2は17keV以下の低エネルギー電子の3次元分布関数を計測し、 IMA-SとIEA-Sは28keV/q以下の低エネルギーイオンの3次元分布関数(IMAは質 量分析も行います)を計測する。PACEの科学目的は、1)月表面や月大気から (スパッタリングなどで)生成されるイオンを計測すること、 2)ESAと磁 力計とを電子反射計として同時に用いて月面上の磁気異常を探査すること、 3)月-太陽風相互作用を明らかにすること、4)月-地球磁気圏相互作用を明 らかにすること、5)月軌道60Reの位置の地球磁気圏尾部を観測すること等で ある。ここ数年、Lunar Prospectorの低エネルギー電子データの解析が進み、 いくつかの新しい結果が得られている。これらの結果のいくつかを紹介すると 共に、SELENE-MAP-PACEのデータを解析する際のデータセット及びそれらの作 成予定等について話す。
8/8 16:00- 5F会議室 三谷 烈史 固体惑星
CdTe半導体を用いたガンマ線検出器の開発

概要:

月や惑星表面の元素組成は、その起源・進化を論じる上で、 重要な情報を提供してくれる。この元素同定のために、 宇宙線による核反応で放出される元素固有のガンマ線を 観測する手法がある。精度よく元素を同定するためには、 このガンマ線を高いエネルギー分解能と高い検出効率で 観測することが必要不可欠である。そして、惑星探査機では 小型であることも重要な要素となる。 こうした観測装置を目指し、テルル化カドミウム半導体という 比較的新しい半導体を用いた、ガンマ線検出器の開発を進めている。 本発表では、テルル化カドミウム半導体の紹介と実際の観測装置を 目指した開発の現状を発表する。
8/8 16:00- 5F会議室 三津山 和朗 宇宙プラズマ
地上観測による金星雲頂高度での大気運動の研究

概要:

金星には、大気が地面の回転速度の数十倍もの速さで惑星を循環する 超回転と呼ばれる現象が存在する。この超回転の生成・維持のメカニズムには 諸説あるが、その決着をつけるためには運動量輸送の鍵となる風速最大の雲頂 付近の大気運動の情報が不可欠である。 我々の研究グループでは、中間赤外線を用いて金星雲頂付近の大気変動を観測的 に導出する研究を行っている。2005年12月に、ハワイにあるすばる望遠鏡を用い て行った観測の結果によると、雲頂高度に水平スケール300km程度、高度変動200m 程度の様々な微細な雲構造が発見された。この構造は雲頂付近に存在する大気 変動に関連があると考えられるが、時系列データの不足からその時間的性質は 議論できていない。 そこで我々は2007年7月に、日中にも観測が行え金星の長時間観測に適した ハワイにある赤外天文望遠鏡IRTFを用いて、微細構造の時間変動導出を目的とした 観測を行った。本発表では、取得データの初期解析の結果の紹介を行う。
7/25 16:00- 5F会議室 山崎敦 宇宙プラズマ
SELENE(かぐや)衛星搭載のUPIによるイオンアウトフローの観測

概要:

地球極域電離圏から酸素イオンがプロトンに匹敵するほど大量に散逸しているこ と発見されて10数年がたっている。南向きIMF、高地磁気活動度時に散逸量が 増大することは観測的に実証されており、高度1000km以下で何らかの加速・加熱 メカニズムが働いて質量の大きな酸素イオンが重力を振り切って散逸すると理解 されている。しかしながらそのメカニズムは依然不明な点が多い。 今夏打ち上げ予定の月周回衛星SELENE(かぐや)は、「月の科学」「月での科学」 「月からの科学」の3大テーマで科学観測を行う。そのうち「月からの科学」を 担う超高層大気プラズマイメージャ(UPI)は、月軌道から共役オーロラ、大気光、 プラズマ圏、イオンアウトフローをリモートセンシング観測し、その大局的分布 を観測する。本発表では地球極域電離圏から酸素イオンの撮像観測を中心に科学 目的と期待される観測像について議論する。
7/18 16:00- 5F会議室 長谷川洋 宇宙プラズマ
Magnetic reconnection triggered by Kelvin-Helmholtz instability at the magnetopause

概要:

We present observations on 20 November 2001 by the Cluster spacecraft at the Earth's dusk-flank magnetopause which show evidence of magnetic reconnection triggered by nonlinear growth of Kelvin-Helmholtz instability (KHI). Identified reconnection signatures consist of outflow jet inside a bifurcated current sheet whose full width is a few times ion inertia length, magnetic field component normal to the current sheet, and field-aligned electron beam with polarity consistent with acceleration by reconnection electric field. Those are found at the hyperbolic point in a rolled-up vortex where the current sheet is highly pinched by vortex flow. The magnetic shear at the magnetopause (~60 deg.) should have resulted from the three-dimensional (3D) KHI development that can deform initially non-sheared field lines into a sheared configuration. The results suggest that KHI-driven reconnection is responsible for plasma transport across the magnetopause under the condition when standard high field-shear reconnection cannot occur.
7/18 16:00- 5F会議室 田中孝明 宇宙プラズマ
SELENE(かぐや)衛星搭載のIMAによる重イオンの質量分析

概要:

月は固有の磁場を持たず、また固有の大気を持たない天体であり、 周辺のプラズマ環境として、月面由来の重イオンが存在すると 考えられている。重イオンの発生のメカニズムとしては月面と太陽風 あるいは太陽光との相互作用によって、直接生成されるものと、 月周辺の希薄大気が光電離することによって発生するものがあると考え られている。今夏打ち上げ予定の月周回衛星SELENE(かぐや)は、 こうした月面由来の重イオンの観測を月面から高度100kmで行うことを 一つの目的としているが、太陽風の(ExV)電場によって輸送される イオンはこの高度では、完全に加速されることはなく、1keV以下の エネルギーで観測されることになる。このエネルギーでの、重イオンの 質量分解を行うためにはSELENE搭載用の質量分析器(IMA)の マススペクトルを、実験や数値シミュレーションなどを元に再現し、 データをデコンボルブする必要がある。今回、これらの解析のために 現在行っている、室内実験の報告とともにIMAで観測可能な科学対象に 関して議論を行う。
7/11 16:00- 5F会議室 大島亮 宇宙プラズマ
火星大気温度の1日毎の分布の解析の初期報告

概要:

火星は数ある惑星の中でも特に地球に似た惑星である。とりわけ 、固体表面の上に(地面が見える程度に)希薄な大気を持つこと、自 転周期が地球とほぼ同じであることから、火星大気の運動は基本的 には地球大気と同じ方程式で表せると考えられる。一方で、火星に は海が無いこと、大気の主成分が二酸化炭素であること、常に大量 のダストが浮遊していること、成層圏が存在しないことなど、地球 と大きく異なる側面も持ち合わせている。  このような特徴を持つ火星でどのような大気現象が起こっている のか。本研究ではその理解の一端を目指し、火星探査機の観測した 大気温度の時間・空間分布の解析を行った。  アメリカの火星探査機 Mars Global Surveyor (MGS) に搭載され た赤外干渉分光計 Thermal Emission Spectrometer (TES) は 1999 〜 2006 年に渡って火星の大気を観測した。半年前の修士論文での 研究では、この大気温度データを60日毎にまとめ、火星全体での温 度擾乱の空間分布を調べた。その結果、北半球の冬季高緯度で擾乱 が大きくなることがわかった。またその空間分布から、擾乱が大き くなるのは傾圧不安定波と強制プラネタリー波が原因であることが 示唆された。  今回の研究では1日毎の火星大気の温度の空間分布の解析から、 実際に傾圧不安定波や強制プラネタリー波のような波動が励起され 伝播しているのかどうかを明らかにしたいと考えている。しかし現 状ではそこまで解析が進んでいないため、今回の発表では1日毎の 温度の空間分布と以前出した擾乱の空間分布を比較し議論していき たい。
7/11 16:00- 5F会議室 横田勝一郎 宇宙プラズマ
Magnetospheric Multiscale (MMS)Fast Plasma Instrument (FPI) Dual Ion Sensors (DIS) の開発

概要:

MMSは2014年打ち上げ予定の地球磁気圏探査衛星計画で、磁気圏及び太陽風との境界層での リコネクションの解明を目標としている。 MMSは同一の4台の衛星で構成され、それぞれが粒子とフィールドの計測器を持つ。 そのうちのFPIは、電子とイオンの計測器(DES、DIS)から成り、1-30k eVの電子と1-40k eVの イオンの分布関数を、25msと150msの時間分解能で計測する。 DESとDISはそれぞれ2つの頭部を持ち、各衛星に4台ずつ搭載される。 一度に8方向の視野を持つことと、視野を掃引することで高時間分解能を実現する。 DISの開発をを日本のグループで担当することになったため、今回設計を行った。 そのことについて報告する。
7/4 16:00- 5F会議室 田中健太郎 宇宙プラズマ
磁気圏境界層的な状況に於けるより複雑な磁気リコネクションのトリガーと大規模発展

概要:

Cluster-II 衛星による磁気圏境界面のクロッシングイベント (Retino et al. [2006], GRL)の報告によると,これまでにない高解像度の電子分布関数が磁気圏 境界面内セパラトリクス領域で取得された.セパラトリクス領域では非常にダイ ナミックな電子ダイナミクスが詳 細に観測されている.地球磁気圏側のセパラ トリクスでは,電子密度の急激な ディップ構造が現れる.ディップ構造のすぐ 内側領域では,大きなイオンアウト リコネクションジェットが観測されている. これまで,磁気圏境界面を模した粒子シミュレーションは,これまで1例しかな い.しかも非常にローカルな部分だけを注目した物だった. 本調査は上記観測結果に触発されて,初期 に密度の非対称性(=高密度領域・ 低密度領域)を持たせた2次元PICシミュ レーションを用いて観測結果を再現出 来るかどうかを確かめる. その後,計算規模を最強に大きくすることによって初めて現れる,二次的磁気島 の発生,ガイド磁場存在下におけるX-lineのスライドについて,試験的計算結果 を紹介する.この驚くべき事実が,より複雑なリコネクション過程で新しく見え て来た,新しい世界観を我々に提出する.
7/4 16:00- 5F会議室 齋藤実穂 宇宙プラズマ
磁場の双極子化前に観測されるMHD波について

概要:

近尾部プラズマシートの磁場の双極子化は、サブストームを特徴付ける現象の一つである。双極子化がおこる数分前から、様々な種類のMHD波が存在することが観測からわかってきた。MHD波の性質は、サブストームオンセットに伴う物理を反映し、磁場の双極子化を起こす原因を探ることができる。本研究ではこれまで、新しい解析手法を開発することで、このMHD波の性質を調べてきた。そして、アルフベン波、ドリフト波が両方存在することで、観測を説明することがわかってきた。特に、ドリフト波の周波数は、バルーニング不安定の理論予想と一致し、プラズマβが高いところのみで観測されるという点も理論と一致する。この結果は、バルーニング不安定が、磁場の双極子化と関係深いことを示唆する。しかし、ドリフト波らしいものが観測されない場合でも、磁場の双極子化、サブストームが起こる場合もあるため、必要条件であるかは不明である。セミナーでは、(1)サブストームと近尾部のMHD波、(2)ドリフト波と磁場の双極子化の関係、(3)今後(現在?)の課題(研究計画)、について議論したい。
6/27 16:00- 5F会議室 笠原慧 宇宙プラズマ
Cluster/RAPIDを用いたring current電子に関する研究

概要:

内部磁気圏(L<~8)における相対論的電子の生成(加速)機構に関する研究が,世界的な大流行を見せている.多くの人々が支持する加速のあらすじは以下の通り:(1)尾部から注入された1-100 keV電子によりwhistler chorusが励起され,(2)whistler chorusによって>300keV電子がMeVにまで加速される.特に,1990年代後半に構築された(2)の加速機構に関して,data解析・数値計算による検証が目覚しい勢いで進んでいる.しかしながら,whistler chorusの生成機構や, 種とも呼ぶべき被加速電子(200-400keV)の生成・輸送過程には不明な点が多い.それらに対し,Cluster衛星のdataを中心とした解析によってaproachした結果と,今後の予定について発表する.
6/27 16:00- 5F会議室 宮下幸長 宇宙プラズマ
サブストーム開始と磁気圏尾部の高速流に対する電離圏対流の応答GeotailとSuperDARNの観測

概要:

サブストーム開始や尾部の高速流に対して電離圏対流がどう変化するかは、磁気圏と電離圏の結合を考える上で一つの重要な問題である。今回は、2001年5月1日の2つの小さいサブストームについて、Geotail衛星とSuperDARNレーダーのデータを用いて詳細に調べた。本発表では、その解析結果を紹介する。
6/20 16:00- 5F会議室 神山徹 中村研
金星雲頂高度における風速場解析

概要:

金星には、スーパーローテーションに代表される地球とは異なった大気循環システムが存在している。様々な時間・空間スケールの波動の伝播が大気中の角運動量を輸送し蓄積することで、金星における大気循環を生成・維持していると考えられている。しかし金星大気中を伝播する波動については観測データが限られていることなどから現在もよく分かっていない。本研究では、相互相関法を用いた雲の特徴追跡により算出した風速場から、大気中を伝播する波動の解析を行うことを目的とした。解析には、Galileo探査衛星が1990年2月に金星をフライバイした際に紫外波長で撮像した雲頂高度の雲画像を用いた。解析の結果、雲頂高度では太陽光加熱により励起された波がもたらす風速分布が見られた。また平均的な風速分布を取り除くことにより、日々変動する風速成分を算出した。これらの解析結果を発表すると共に、金星大気中を伝播する波動について考察する。
6/20 16:00- 5F会議室 湯村翼 宇宙プラズマ
磁気島合体を経由する磁気リコネクションでの高エネルギー電子の生成と分布

概要:

磁気リコネクションによる高エネルギー粒子生成は, 惑星磁気圏や太陽フレア等の太陽系プラズマから活動銀河核やパルサー磁気圏といった高エネルギー天体プラズマに至るまで宇宙プラズマの世界において重要な役割を担っている. 地球磁気圏に存在する高エネルギー電子の成因の一部は尾部のリコネクションで説明できることが人工衛星観測やシミュレーションによって示唆されているが,加速メカニズムを完全に解明するまでには至っていない. 本研究では, 大規模な磁気リコネクション構造が形成される過程では複数回の磁気島合体を経由すると考え, 磁気リコネクションの過程で起こる磁気島の合体に着目した. 磁気島合体が磁気リコネクションでの 電子加速メカニズムに与える効果を調べるため, 任意の初期擾乱で生成した磁気島の合体を経由する磁気リコネクションの2 次元粒子シミュレーションを行った. シミュレーションの結果, 高エネルギー電子の生成は磁気島の合体の位相に応じていた. 加速された高エネルギー電子の分布を調べると, 過去の研究では磁気島の周りに単一リング状に分布することが知られていたが, 今回のシミュレーションでは多段階の合体相に対応して多重リング状の分布が形成された. 本発表では, 複数のシミュレーション結果の比較によってリング状分布の生成と電子加速メカニズムに迫る.
6/13 16:00- 5F会議室 伊藤裕子 中村研
火星大気中のダスト分布の変動

概要:

火星大気では、常時存在するダストと大気の構造は密接に関係していると考えられている。ダスト分布の時間変動に関して、ダストストームの発達などの大規模な現象についての研究は行われている。しかし、大気中の波動に伴う数日以下の時間スケールでの変動はわかっていない。そこで、ダストストーム時のみでなく1年を通して解析する事により、平常時の大気中の波動に伴ってダストにどのような影響があるのか調査し、ダストの輸送と大気擾乱の関連を明らかにしたいと考えた。本研究では火星探査機 Mars Global Surveyorに搭載されている、赤外分光計Thermal Emission Spectrometerから得られたダストの光学的厚さのデータを用い、3火星年分のホフメラー解析(経度-時間図を作成)よりダスト分布の時間変動について調べた。また比較のために同様の解析を温度においても行った。解析より、3火星年全ての夏の南半球高緯度地方において、火星大気中に数日周期の移動する構造が発見された。ダストと温度を比較すると、時間と共に変化しない部分では似た傾向があるが、時間変化する構造では必ずしも見られるとは限らない。これらの現象についての考察を行い、ダストと温度構造の関係について議論する。
6/13 16:00- 5F会議室 鈴木一成 宇宙プラズマ
極冠粒子フラックス増加領域の高緯度磁気圏における発展:Cluster観測

概要:

Θオーロラは極冠に現れる太陽方向にのびるオーロラで、1980年代DE−1によって初めて全体像が明らかになった。その後もΘオーロラは、あけぼの衛星、POLAR衛星、IMAGE衛星などによって観測・研究が行われてきた。このΘオーロラはMHDシミュレーションなどによってプラズマシートのローブ領域を分断する、いわゆるBifurcated PlasmaSheet によって生成されると考えられている。このBifurcated Plasma Sheet はIMF が長時間北向きでBy 成分が変化した時に出現すると提唱されてきた。しかし、これまでの研究では、Θオーロラの構造の源となる極冠粒子フラックスについてはあけぼの衛星、POLAR衛星 IMAGE衛星などの観測があるのみで、Bifurcated Plasma Sheet に相当する磁気圏側の領域の十分な観測はなされていない。特に、極冠粒子フラックス領域が磁気圏内でどのように時間発展しているのかを探るための同時多点観測は今までに例がなく、磁気圏側の観測から、このようなΘオーロラの生成モデルの是非は論じられてこなかった。そこで本研究ではClusterによる極冠粒子フラックスの観測からΘオーロラ生成への理解を深めていく。まず編隊飛行衛星Cluster を用いて、この極冠粒子フラックスが高緯度磁気圏どのような空間構造をもち、時間発展するのかを解析し、Global Imagerによって撮影された電離圏の描像と比較して、電離圏と磁気圏の対応を確認する。さらにイベントの統計解析を行うことにより、IMFと極冠粒子フラックス増加領域の関係を明らかにしていく。
6/6 16:00- 5F会議室 金尾美穂 宇宙プラズマ

概要:

火星プラズマはダイポールの固有磁場がないために太陽風と直接相互作用している。近年Mars Express (MEX)による観測によって火星電離大気と太陽風領域の間にはbow shockやその内側にinduced magnetosphere boundary (IMB) といった境界層が存在することが明らかにされてきた。IMBは数百eV以上と高エネルギーのイオンの密度が、高度が低くなるにつれて減少する火星電離大気とマグトシースとの間の境界領域である。この境界領域は太陽風や太陽風磁場(IMF)、これらによる太陽風対流電場による影響を受けていると予想される。 さらに、IMFや、IMFと太陽風速度によって誘導される太陽風対流電場が火星周辺のプラズマ分布に及ぼす影響をしらべるために、MEXと同時期にMars Global Surveyorが観測した磁場データを用いて、IMFのクロックアングルを計算した。 2006年6月中の夜側のIMB crossingの数例では、太陽風対流電場が下向きの領域では シャープな密度勾配のIMBが観測されている一方、上向きの領域ではIMBの内側で、イオンエネルギーの減少が観測されている。 太陽風やIMF、太陽風対流電場とIMBの位置の相関を調べることで、火星プラズマの境界層における物理について考察し、報告する。

6/6 16:00- 5F会議室 関克隆 宇宙プラズマ
衝撃波遷移層での粒子加速・加熱機構の観測的研究

概要:

本研究の目的は、多点観測衛星CLUSTER-Uのデータを解析することにより、衝撃波遷移層の時間的・空間的変化が粒子の加速・加熱機構に与える影響を観測的に理解することである。 今回のセミナーでは、過去のin-situ観測・大規模数値実験による研究から理解 されている衝撃波における粒子加速・加熱機構をレビューするとともに、最近発見した衝撃波角〜50度付近の衝撃波面の時間的・空間的変化に関しての議論をしたい。太陽風プラズマは、その密度が非常に希薄なため構成する粒子間のクーロン衝突がほとんど無視できる無衝突プラズマである。無衝突プラズマ中では、粒子の分布関数はMaxwell分布であるとは限らず、平均的な運動量を逸脱した非熱的粒子が生成されることがある。このような非熱的粒子の生成は、無衝突衝撃波における散逸機構と密接に関係していると考えられている。近年の大規模数値実験の結果より、衝撃波の散逸機構を理解するためには、衝撃波面の非定常性がイオン・電子の振る舞いに与える影響を考慮することが非常に重要であることがわかってきた。しかし、過去の磁気圏観測衛星では、一点観測である・時間分解能が足りない等の観測的な限界により、これらの問題を十分に議論することは難しかった。2000年にESAによって打ち上げられたCLUSTER-U衛星は、4機によって四面体を構成し磁気圏を観測することができる編隊観測衛星であり、一点観測では不可能であった空間・時間変化の分離をすることが可能であり、時間分解能もよいことから、衝撃波面の非定常性と粒子加速・加熱機構との関係を議論することが可能である。

5/30 16:00- 5F会議室 久保田康文 宇宙プラズマ
火星電離層からテールへの重イオンの流出量

概要:

火星は全球的な固有磁場はほとんどなく、太陽風は電離層と直接相互作用している。 火星探査衛星MarsExpressのイオン観測では、火星の尾部でO+、O2+、CO2+などの重イオンの流出を観測している。 O+は火星から太陽風領域まで広がっているOコロナのピックアップとして説明できるが、O2+、CO2+は主に電離層の下層で生成されるため、太陽風が電離層に深く侵入しないとピックアップされない。一方、シミュレーションの研究から火星電離層は太陽風の全圧力に対して、速度場が吹き出す場合と吸い込む場合があることが示されている。今回のセミナーでは詳細な電離層モデルを考慮した3次元MHDシミュレーションを用いて、(1)太陽風の全圧力に対して(2)太陽風磁場に対して、定常状態まで計算し、尾部へ出て行く流線上でO2+の生成消滅を積分し流出量を計算した結果について紹介する。
5/16 16:00- 5F会議室 亀田真吾 宇宙プラズマ
水星ナトリウム大気光の観測

概要:

水星大気は非常に希薄であるが、その成分の1つであるナトリウムは太陽光を共鳴散乱することで明るく輝いており地上望遠鏡で観測できる。過去の研究から水星大気は太陽光脱離、太陽風スパッタリング、隕石衝突  によって地表から放出されると考えられている。しかし今までに観測された分布を説明できるような放出メカニズムは未解明のままであり、どの放出過程が支配的であるかさえ分かっていないという状況である。この原因の1つとしては水星が太陽に近い惑星であるため観測が難しいということが挙げられる。本セミナーでは私が行なった・日中の水星大気光観測・ファブリペロー干渉計を用いた広視野観測について紹介する。(時間があれば今後のナトリウム光観測についても触れる予定です)
5/16 16:00- 5F会議室 高田拓 宇宙プラズマ
夜側磁気圏における高速流・磁場の双極子化の関係

概要:

オーロラサブストームは、地球磁気圏全体に影響を与えるエネルギー現象であるが、そのトリガーメカニズムは未だ完全には理解されていない。この現象の鍵となるのが夜側磁気圏尾部で見られるプラズマの高速流(BBF)とより地球側で見られる磁場の双極子化現象(dipolarization)である。これら二つの現象の因果関係は既存のサブストームモデルの差異でもあり、その関係を理解することはサブストームの本質に迫ることになる。今回は、Cluster・Double Star衛星による同時観測を利用して、(1)BBFとdipolarizationの統計的関係、(2)プラズマシート振動がdipolarization及びオーロラの発達に与える影響、(3)BBFに伴う境界層での電流構造と電離層での結合関係、について紹介する。
5/9 16:00- 5F会議室 西野真木 宇宙プラズマ
夕方側の冷たいプラズマシートにおける温度非等方性の観測

 

5/9 16:00- 5F会議室 中村琢磨 宇宙プラズマ
宇宙プラズマ中に発生するケルビン・ヘルムホルツ渦の可能性:電子とイオンの2流体シミュレーション
概要:

ケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定は、速度の違う流体が接する境界で発生するよく知られた流体力学的な不安定である。KH不安定が発展したKH渦は、渦内部において接していた流体同士の混合を効率良く促す性質がある。一方、宇宙プラズマ中では、プラズマが電離しているため渦の構造は流体的ではなく電磁場によって支配される。電磁場による渦構造への影響は不安定の発展の仕方に対してだけでなく、磁気リコネクションとの非線形結合といった形でも現れる。この非線形結合は渦構造を破壊することもあれば逆に渦の成長を促進されることもあり大変興味深いものである。また、リコネクションとの結合によって渦内部にプラズマの混合を引き起こす場合があり、磁気圏わき腹領域で観測される プラズマ混合を説明できる可能性がある。セミナーでは、これらのようなKH渦に対する電磁場の影響について電子とイオンの2流体シミュレーションを行った結果を紹介する。

5/2 16:00- 5F会議室 原田,空華,井筒 宇宙プラズマ,中村研
卒業研究の紹介
 
4/25 16:00- 5F会議室 内田,伊藤,岡部 宇宙プラズマ
卒業研究の紹介
 
4/18 16:00- 5F会議室 清水 愛媛大
自発的三次元高速磁気再結合過程におけるプラズモイドのランダム生成

概要:
MHDシミュレーションによって、電流駆動型異常抵抗による二次元高速磁気再結合は三次元的な 摂動により不安定化することがわかった。その不安定性は従来から知られているプラズモイド(磁気ループ) に発生するピンチ効果(磁気レイリーテイラー不安定性)よりもはるかに非線形で強い不安定性であることが示される。 結果としてランダムに生じる三次元プラズモイドの構造のバリエーションと規則性について説明し、 太陽フレアや地球磁気圏尾部で起こりうる高速磁気再結合過程の様子について考察する。

キーワード:
FKRテアリング理論。PetschekとSweet-Parkerのモデル、外部駆動型モデルと自発的モデル。 MHDシミュレーション、MHD理論による磁気再結合過程の研究。二次元モデルから三次元モデルへの発展。

4/18 16:00- 5F会議室 東北大
木星沿磁力線電流の自転周期変動について

概要:

高速自転している木星では、磁気圏の主要なエネルギー源は木星自身の自転エネルギーであり、このエネル ギーが、電離圏・熱圏領域の中性大気・プラズマを介して磁気圏へと供給される。このエネルギー過程が磁気圏 の諸現象や太陽風との相互作用の様相を支配していると考えられており、その結合過程は大変興味深い。現在、私たちは、電離圏電気伝導度・沿磁力線電流・磁気圏プラズマ回転速度を緯度・磁気圏動径方向の1次元で同時に解くモデルを用い、オーロラ構造を決めるパラメータや観測されるオーロラ発光強度変動の要因を探っている。今回のセミナーでは、太陽紫外線による電離圏電気伝導度変動、固有磁場分布、および磁気圏磁場構造が沿磁力線電流構造に与える影響を調べ、観測されたオーロラ発光強度変動と比較した結果・考察を紹介する。

4/12 16:00- 5F会議室 中村(正) 中村研
これからの日本の惑星探査 (Keynote Speech)
 
4/12 16:00- 5F会議室 藤本 宇宙プラズマ
これからの20年 (Keynote Speech)