スタッフ出張報告

2015年6月14日-21日 GEM Summer Workshop @Snowmass
北村 成寿

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GEM Workshop 会場のホテル

 

6月14日から21日にかけて、アメリカ合衆国コロラド州スノーマスビレッジで開催された The Geospace Environment Modeling (GEM) 2015 Summer Workshopに参加させていただいて来ました。 このワークショップは毎年大きめのホテルで開催され、合宿のような感じになっています。 磁気圏物理の様々なテーマについて5年間のワーキンググループが作られ発表や情報交換を行いながら 研究が進められていくというスタイルで行われています。

4年半前にGEMという研究集会を紹介された 直後にThe Ionospheric Source of Magnetospheric Plasmaというワーキンググループが始まるところで、 当時、東北大学大学院で学生として研究を進めていたテーマでゆっくり議論を進められる場所があると いうことで、単独で乗り込んだのが最初でした。そこから5回目、ついに最後の5年目まで全て参加する事ができました。

地球からの大気(イオン)流出は、極域から顕著に見られると考えられていますが、近年次々と極軌道の衛星が引退して、 イオン流出の衛星観測データの解析は若手がほとんどいないという状況でした。一方、コンピュータの発達によって シミュレーションは盛んに行われており、いかにシミュレーションと観測を合わせて理解を深めていくのかが課題となって いました。観測の観点ではついに、26年にわたって観測を続けていた日本のあけぼの衛星まで引退してしまい、 極域の衛星観測はより厳しい状況になってしまっています。

行きは成田からデンバー経由でアスペンに行き、ホテルのシャトルでスノーマスへ移動。さすがに疲労で到着後すぐ 寝てしまい、0時ごろ目覚めるという典型的な時差ボケのパターンに。よく晴れていたので少し外へ出て、 星空の写真を撮ったりして、再度頑張って寝る。

初日の月曜日は学生の頃からの共同研究者の西村さん(UCLA)と、 Alex Glocerさん(NASA)の全体向けチュートリアル講演からスタート。正直なところ朝8時15分開始というのは なかなか早いといつも感じます。今回は自分にとって最も重要なThe Ionospheric Source of Magnetospheric Plasmaの ワーキンググループの日がほとんど初日で着いてすぐ一番の山場でした。時差ボケの中必死で発表にコメントしたり 招待講演をしたりしました。あけぼの衛星の新しい解析結果は特に多くの参加者に興味をもってもらえたように思えます。

火曜日は、昼間はワーキンググループのまとめのセッションに参加し、夕方は午後6時から9時までポスター発表でした。 朝8時過ぎから夜9時というのはまさに合宿な感じです。

水曜日は今年打ち上げられたMMS衛星群を含めた地上衛星連携観測の セッションでGeotail衛星の現状の報告、木曜日はあけぼの衛星の解析結果の詳細をポスター発表、最終日は会議への参加、 ロサンゼルス経由で日曜早朝に羽田へとあっという間でした。

今まで1回の学会や研究集会で4回も発表をした事はありませんでしたが、せっかく遠くまで行くのだからできる限り有効に と必死で頑張りました。The Ionospheric Source of Magnetospheric Plasma のワーキンググループのは終了しますが、 継続的な参加によって5年間でシミュレーションの方々との連携は大きく深まったので、今後はこれを生かしてイオン流出、 磁気圏のプラズマ物理のさらなる解明へと進んでいきたいと考えています。まだまだ意見の不一致はありますが、 新たな観測の重要性はかなり認識が広まったと感じており、将来の極域衛星探査をどのように進めるのが最も良いか、 検討を進めていかなければと感じました。

 スノーマスは自然が美しく素敵なところですが、標高が2500 mもあって気圧が750 hPa (約75%)とものすごく低く、 息苦しさはかなりあり、火曜日ぐらいまでは高山病気味でかなりきつかったです。GEMは2, 3年に1度ぐらいスノーマスで 行われますが、もうちょっと標高は控えめな方がありがたいと感じます。

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スノーマスから見た天の川

 

編集:浜田恵美子 2015/07/22