スタッフ出張報告
ヨーロッパのハワイへ行く
藤本 正樹
カナリア諸島というものがある。モロッコ沖にあるスペインの火山諸島で、その気候といいセッティングといい、ハワイのそのものである。そのうちテネリフェ島でClusterWSが開催され、ベッピの仲間でもある主催者からしつこくしつこくしつこく招待されたので参加した。
院生笠原に晩メシを一回奢ることでグラーツに売り飛ばしたあと、マドリッド経由でテネリフェへ行く。マドリッドは、アメリカの都市に似た、退屈な都市だと思った。プエルト・デル・ソルの近所のバルで、
●海老のオリーブオイル煮ニンニク風味(いわゆるタパスの定番)
をリオハの赤ワインと食したのが唯一の思い出である。テネリフェでは、空港から1万円近く叩いて飛ばしたタクシーで到着した会場のリゾート・ホテルに泊まる。どうせ近所には何もないと思って full board (3食付)で予約したのだが、これが失敗であることに気づく。ホテル内は、英独のお年寄りばかりで、ビュッフェの食事はスペイン風にほど遠いものであった。たまらず、昼食は外で食べ、結果的には、
●マッシュルームのオリーブオイル煮ニンニク風味
●海老の鉄板塩焼き
●スペインオムレツ
●イカ墨ご飯
●たこのガリシア風
●生ハム、サラミ
と、食べるべきものは食べられたように思う。また、朝食では、ベイクド・ビーンズにベイコンに目玉焼きにトーストに紅茶という純英国風の英老夫婦の隣で、チュロスをどろどろチョコソースに浸して食べることにこだわり続けたのだった。それでも、10分おきにハワイにいると勘違いしている自分気づく様であった。
会議そのものは、欧州独特のまったりした中に、おっと思う話が混じるというやつで、情報収集のほか、例によって外交を忙しく展開した。話をするたびにSCOPE・Cross-Scaleへの全世界からの興味の高まりを感じ、だからこそ、そのコアであるSCOPEは絶対に成し遂げなければいけないという思いは強くなる一方である。それに加えて、SCOPE中間報告書を執筆期間でもあったので、自由時間は海岸を30分程度散歩する他は、部屋でいそいそとPCに向かっており、SCOPE週間だったという印象だ。一方、ネットがきわめて不安定で、いろいろと日本においてあるべき動きがないのにどうしようも出来ず、いらいらする日々でもあった。
帰り、マドリッドに向かう機中でもSCOPE中間報告書の作業をする。ふと、目を上げると、なんとジブラルタル海峡がはっきりと見える。ほんとうに狭いと思った。
今、マドリッド空港近くのホテルに、乗り継ぎのためだけに宿泊している。ホテルの食堂のメニューがひどかったので近所をぶらぶらしていたら、レアル・マドリーの試合を中継しているバルがあったので入る。他の客は全員ローカル住民で、これぞ、本物の現場に潜入というやつだ。うるさい。煙い。がさつ。柄が悪い。全員がTV画面を食い入るように見つめている。顔が怖い。誰と誰が話しているのかがわからない。そもそも、会話なのか?文句ばっかり言っているように見える。対戦相手のデポルティヴォがオウン・ゴールで得点(相手の速いクロスに、つい、DFが足を出してディフレクトってやつです)した時も、シ〜ンとなるかと思いきや、投げやりに手を叩く奴までいて、それはリーグ戦でバルサに対して勝ち点8でリードしている余裕か。それとも先週CLでローマに負けたことが尾を引いているのか。最後までレアルは惜しいシュートすら打つことなく終わった。途中出場のロビーニョも爆発せず。結果は0−1、試合終了とともに大半の客は出て行った。ケーブルTVの契約をする代わりに、飲み物代を払って週末はここに通うということらしい。プレースキッカーの出来が悪かったぞ、というのが個人的印象。セルヴェーサに生ハムやらサラミやら鰯を焼いたやつが載ったパン切れが付き、3杯で5ユーロ。最後の最後に本物のスペインを経験したことになるのか?結局、頭の中で、アランフェス協奏曲やカルメンの前奏曲が鳴り出すような場面は一度もなかったのだが…。
今、マドリッドからの機中。相変わらずSCOPE報告書を編集中。朝6時にホテルを出るとき、カフェのTVはメルボルンF1の生中継を流していた。アロンソも不発?
<藤本 正樹 / 編集: 伊藤 祐毅>