スタッフ出張報告

成田に向けて離陸2時間後、シカゴへ引き返す
藤本 正樹

 

9月のニューハンプシャへの出張は、厳しい内容のものだった。現地での議論に加えて、行き帰りもツラいものであった。

ボストンには前日入り、翌日午後にバルチモアからニューアーク経由で到着する斎藤さんと待ち合わせをする。掲示板でon time の到着となっていることを確認して、ボストン・クラムチャウダーとフィッシュ&チップスの昼食をとる。食べ終わって、そろそろかなと掲示板に戻ると、1時間遅れ、となっている。ま、ニューアークならそういうこともあるよね、と文庫本(プロジェクト伊藤「ハーモニー」)を読み始める。で、1時間後に、また1時間遅れ。む。で、むむ。むむむ。むむむむ。結局、飛行時間そのものは、1時間弱のところを、全部で4時間半遅れ!文庫本をかなり読み進め、自分がボストンで何をしているのかを忘れかけた頃に、斎藤さんは到着した。聞いたところ、滑走路で走り始めてから急停止し、もたもたしつつゲートに戻り、一度は機内から降ろされて、じりじりして、ようやく再出発ということだった。そのまま離陸してたら、どうなってたんでしょうね?

ボストンでは車を借り、ニューハンプシャまで1時間強のドライヴとなる。小型車を予約していたのに、出てきたのは大型SUV。機上の席がこうであれば大歓迎だが、運転するとなると・・・。車のサイズ問題に加え、ドライヴ担当の斎藤先生はあまりロータリー(経路上、ボストン市内に一か所あった)の対応がうまくなく、往復とも同じ場所で、助手席からちょっと大きめの声を出すことになった。

さて、辛い内容ではありつつも友好的な雰囲気でどうにか乗り切った会合&ディナーの翌日、ボストンからシカゴ、そして成田へと向かう。二人とも、帰国日翌日にスウェーデンでの会合へと出発するという、詰まった日程である。

シカゴから離陸して2時間、食事も終わった頃、「乗客に医者はいないか?」というアナウンスが流れた。これは時々あることで、処置をすれば済むのか、これまでの経験では、そのまま何もない。が、今回はしばらくすると「血糖値を測る道具を持っているひとはいないか?」とのアナウンスが流れた。おやおや、と思っていると、やたら元気よく「機長はシカゴに引き返すことにしました」。おいおい。だが、「引き返して乗組員を交換し、すぐに再出発します」。藤本は海外出張回数の多いほうだが、これは初めての経験である。やれやれ。でも、欧州行きには影響はなさそうだ。まわりはどういう気分なのかわからないが、それほど動揺した様子はない。シカゴに引き返す際には、翼の燃料タンクから余分の燃料が放出される様子を見る(「燃料が重すぎると着陸できないので、こうしています、心配無いです」とアナウンスがあった)などして過ごした。

到着。まずは、「救急隊員の邪魔をしないで」とのアナウンス。そうだよね。

で。しばらくすると、「交換できる乗組員がいないので、24時間後に再出発、以上。」というアナウンスが、これまた、やたらと元気よく流れた。さすがに不満の声が漏れる。こちらは、欧州行きをどうするかをすぐに考え始める。

飛行機を降りてサーヴィス・カウンターに行き、宿泊券を貰う。前のほうに座っていた(エコノミーですが)ので早く手続きを終えることができたが、自分が終わってから後ろを見ると、長蛇の列。職員が列に並ぶ人の名前を聞いてどうにかしようとするがどうにもならず、うるさいだけでシステマティックな対応とは言い難い。機内アナウンスでは、「全部プリントアウトして、対応準備万全」と元気よく言っていたのにね。

さて、ホテルでふて寝、の前に、欧州行きの再アレンジである。欧州便は同じチケットの接続便ではないのだが、それでもUAが原因だし、LHは同じスター・アライアンスだ。UAでどうにかしてくれるのか?答えは、あっさり、NO。ま、現場の人とグリグリやってもしゃ〜ないし、そうだろうなとも思うので、LHのカウンタを探しだして交渉。この、ちょっとややこしい状況を説明しようとすると、中学校の先生みたいな担当職員は、「私の質問に答えなさい」と質問を連発して状況を把握、カネを払えば予約やり直しOKとなった。最後に冗談半分で「UAはこのカネを払ってくれるかな」と言ったら、首を横に振りながら大笑いしていた。ま、しゃ〜ないな。行かなければならないベピ・コロンボの会議に穴を開けずに済んでよかったというのが、その時の気持ちだった。ちなみにSK便の斎藤さんは、航空会社のカウンタがなく、夜、ホテルからの電話攻勢も(安いチケットだったため)空しく、乗り遅れ扱い→出張キャンセル、となった。

捜しまわった挙句にようやく見つけた乗り場(別のターミナルまで移動し、かつ、そこから少し離れた場所にある。こういうことをちゃんと教えないところも、日本的サーヴィスと違うのだ)からホテル行きのシャトルに乗り込み、ちょいと立派なホテルへ。食事券ももらったのだが、料理がおいしく、二人でワインも飲みつつ、$20の限度額を大幅超過した。その後、斎藤さんはSKへの電話攻勢、藤本は日本で世話になっている旅行代理店に「UAに道義的責任はないのか」と雑談メールして、ふて寝。

翌日の空港。シート番号が変わっている!しかも、通路側でない!!おいおいおいおい。さすがに火が入る。どういうこっちゃ?Window side しかない?んじゃBulk head はどや?ある?んじゃ、手打ち。

乗ってみると、隣が居なかった。かつ、目の前はビズ席との仕切りの壁=リクライニングは倒れてこない、かつ、足を上げられる。実は、最高の居心地。ひとつおいて隣の奴に、「席、替わったよね」と聞くと、そいつは、昨日、カウンタでの手続きを終えるとすぐにUA予約センタに電話攻勢をかけてbulk head row を勝ち取ったらしい。それに、昨日は満席だったのに、今日はちらほらと空席がある。電話攻勢をかけて re-route した人たちだろう、とのこと。やはり、シカゴのカウンタでは混乱もあってどうしようもなく、電話センターで勝負をかけるということのようだ。また、機材は同じだが、re-routeした人たちのために預かり荷物は一度取り出されてから再度積まれたのだろう、とのこと。UAもたいへんだ。

離陸して8時間、日付変更線を越えた頃。「お客さまのなかにお医者さまはいらっしゃいませんか?」。Ohh… 機内中で、ものすごい声が上がる。しばらくして、「お問い合わせがありましたのでアナウンスいたしますが、当機はシカゴに引き返すことはございません。また、先ほどの方のご気分はよくなりました。」。

 

<編集 浜田恵美子 2012/12/04>