スタッフ出張報告
短いスパンでの副産物
JSPS-PD研究員 田中健太郎
長いスパンのプロジェクトや仕事をする上で大事な事.それは,短いスパンの中でどれだけ有用な副産物を生産出来るか,である.と感じた.
「宇宙とエネルギーと材料の出会い」と題したシンポジウムに参加した.このシンポジウムの趣旨は,傾斜機能材料 (FGM; Functionally Graded Material) が今後の宇宙開発,特に宇宙太陽光発電 (SSPS; Space Solar Power System) にどのような役割を演じるかを話し合う場であった.また,その技術が宇宙空間だけでなく,地上でどのように活かせるかを話し合う場であった.
その中でのパネルディスカッションで,とても興味深いコメントが出てきた.(僕を含め)多くの宇宙開発に携わる人々は,数十年のスパンで様々な計画をたてるが,その一方で,社会との接点を考えたときに,社会に還元出来る新素材や新技術が「そのスパンの中で副産物」として生まれてくるはずだ.それを意識しないでただ闇雲に数十年先の事を考えていてはパブリック・アクセプタンス(社会からの賛同)は得られない.
シンポジウムの後,その筋の権威(僕は全然知らなかったが)から声がかかり,立ち話がてら将来の宇宙開発について話をした.そこでとても印象的な,ある種の名言を頂いた.「人は3年周期で成長しなきゃいかん」と言うお言葉だ.
その真意は:
初めのうちはペーペーだけれども,そのうちにいろんな事を学び,いずれは人の上に立つ人間に育って行く.その立場が3年周期だと,うまく組織や社会が回って行く.この事は,どんな職種・業種でも当てはまる,普遍的な言葉だと痛感した.逆に言うと,3年待てないようでは,何処に行ってもステップアップは望めないと言う事だ.
「副産物」と「3年間」.これらの共通項は,「代謝」だと思う.短いスパンで代謝し,それを副産物として排出する.その代謝が正常に機能する事で,さらに崇高な代謝活動が可能になるのだろう.