スタッフ出張報告

韓国の大阪へ行く
田中健太郎

Asia Oceania Geoscience Society (AOGS) 2008 に参加・発表してきました.今回の目的は2つあって,一つは自分自身の研究紹介・自分自身の売り込み,そしてもう一つは,釜山大学の人との語らいです.

AOGSのメインスローガンは:
(1) To the cooperation and discussion in Asia and Oceania among scientists concerned with studies of the Earth and its environment and the planetary and space sciences.
(2) To promote and encourage the development of any or all of the relevant sciences within and outside Asia and Oceania.
で,アジアのアジアによるアジアから発信するサイエンスコミュニティの確立です.AOGSのpresident先生からいつも直接言われる事がありまして,『その土地土地の学生と積極的に多方面から関わってください』です.
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さて,僕自身の研究領域はSolar Terrestrial (ST)で,ほぼ毎日のようにセッションが繰り広げられていました.太陽・惑星圏・惑星間空間・地球磁気圏・高層大気がSTの範疇です.最近の動向としては,かぐや (SELENE) 関連の初期解析データの紹介やHINODEの鮮明な画像が,アジア人の心を虜にしていたように見えました.特にかぐやセッションでは,中国人研究者と思われる人がバシバシ写真を撮っている光景が印象的でした. ホスト国である韓国や,隣国の台湾は,ロケットを用いた高層大気の研究が盛んで,その辺りの動向をじっくり聞けるよい機会でした.

僕自身の発表は口頭発表で,『口頭発表=パフォーマンス』と考える僕にとって,僕なりのパフォーマンスでその場のオーディエンスを巻き込んだ発表が出来たと思っています.発表終了後は,様々な方面 (presidentや身近な研究者) から指摘された部分を,今後の課題点と改良点と捉え,論文化に向けての糧になりました.
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ST全体の傾向として一番印象的だったのは,今まさに世代が変わっているというダイナミズムでした.地上,衛星,プラズマ,惑星,それらの領域がそれぞれの垣根を越えて一つのシステムとして現象を捉え,手持ちのピースを出し合って,一つの大きなパズルを完成させる意気込みがヒシヒシと感じられました.

IGYからIHY.ある人はそんな言葉で表現するかもしれない.実際の人と人との協働がかみ合って来ている,そんな感じを強く受けました.いっそのこと,JPGUをAOGSにしてしまえばよいのに..
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目的の2つめに上げた,そして,president先生からの勅命でもある,その土地土地の学生とコミュニケーションを取ることについても積極的にやってきました.会場で釜山大学の学生・スタッフの詰め所をAOGSスタッフから聞き出して,詰め所に繰り出し,そこにいた釜山大学のスタッフに,僕が此処に来た経緯などを説明.そうしたら,快く迎え入れてくれて,じゃあ早速今晩,一緒に行きましょうか?と言ってくれた.
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待ち合わせの時刻に詰め所に行き,地下鉄に乗り込む.ぼくの飲食の好みを尋ねられたので,伝統的なものよりも,今時の学生が良く行くような場所で,今時の学生スタイルの食事をしたい!と言うと,若干笑われながらも,携帯電話でレストランの確認をしてくれました.韓国では地下鉄でも携帯の電波が通じるって凄いなぁ..と思う.
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僕を連れて行ってくれた学生・スタッフは大気科学 (AS) が専門で,特に気象学を積極的に行っているらしい.そして,筑波にある研究所にデータ取得のために比較的頻繁に日本を訪れている助教授が同席していました.その助教授曰く,「あなたは普通の日本人とはちょっと違うわね.」だそうな..

大気科学にとって,東シナ海や日本海の気象情報は重要で,それだけ見ても国際協調の重要性が明らかになった.韓国と日本は,歴史的に見て複雑な過去を経験したのだが,若い世代にはそれを乗り越える新たなつながりが有ることを見つけてきた.それはアカデミズムという狭い文化範囲を超え,サブカルチャーや映画・音楽,そのほか色んな部分で接点を模索し続けている証拠だろう.
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多様性の中に潜む普遍性.その普遍性すら時空と共に多様化していく.大陸合理論とはある種異なる,アジア独自の感覚.色即是空,空即是色.

#釜山のトイレ事情・エスカレーター事情

釜山のトイレを何カ所も使っているうちに気づいたのだが,トイレットペーパーの引っ張り出す向きが日本と逆であることに気づいた.日本の場合,手前側にペーパーの端があるのだが,釜山では奥側になっていた.エスカレーターに関しては,どうやら右側に立ち止まる人が多かった.ここは大阪か? 一瞬戸惑ったが,これもまた文化.

<田中 健太郎 / 編集: 田中 健太郎>