スタッフ出張報告
AGU Fall Meeting 2007 @ San Francisco
-乾いた空と雑踏の街路との間に-
田中 健太郎
今年のAGU (American Geophysical Union) Fall Meetingは40周年記念らしい.そんなにも長く続いているこの分野がこれからも絶え間なく成長を遂げていけるよう,僕らは日々精進.そんな気持ちでレジストレーションを済ませに行った.
SFO到着はいつもの事ながら午前の早い時間で,BARTのUnion Square駅に着いてケーブルカーの線路沿いに数ブロック上ると宿泊先のChancellor
hotelがある.チェックインは昼過ぎなので,一旦荷物を置いて,凝り固まった筋肉をほぐしながら街を散策.何となく体がこの街になれてくる頃,チェックインの時刻になる.少しばかりの部屋で休息の後,徒歩10分そこらにある会場に向かい,レジストレーションを済ます.
AGUの会場は,僕が知る限りではいつもMoscone Centerと決まっている.ただ,2年前くらいから南館と西館両方を使うようになった.参加者が増えた証拠だろう.ちなみに今回の会議登録者数は15000人である.是非とも40年後にはAOGSでもこの程度の参加者になって欲しいと思った.
所で,レジストレーション時に予稿集を貰うわけだが,これがとにかく分厚い.タウンページくらいの厚みである.いちおう3冊に分冊されているが,これを毎日持ち歩くのは正直しんどい.なので,事前にAGUのウェブページで興味有る発表を調べて自分専用の予稿リストをプリントアウトすることを強く勧める.会場はとても広い.
発表はポスター発表で,最終日.それまでの間,主に人と会って情報交換したり,最新の研究ネタを聞いたりしていた.今回のAGUですでに4回目になるが,結構海外の研究者の知り合いが出来ていたので,AGUは格好の情報交換の場になる.とかく研究者は一人で考えることが多いが,世界中から研究者が集まると,限りなく自分自身の研究に近いことをやっている人もいる.そう言う人と議論する機会がAGUにはある.今回もそのような機会に恵まれ,それは嬉しい反面,早く論文化しないと追い越されてしまうというある種の緊張感も持たされる.海外で研究活動を行っている日本人と話せるのもAGUならではチャンスである.特にポスドクともなると世界各地に散らばっていることが良くあることなので,ポスドク独特の立場ならではの話が出来る格好の場でもある.
ホテルと会場の途中に(と言っても,ホテルの目の前なのだが),Union Squareがある.ここは街の人の憩いの場であり,特にこの時期にはキレイに飾られたクリスマスツリーが印象的だ.日が落ちる頃,どこからともなく三脚を持った人々がベストショットを収めんと,色んな角度からその木をねらっている.木のそばでは,家族連れやカップルがデジカメで記念写真を撮っている.その光景は日本でもよく見られるのだが,たいていの人がStarbucksのGrandeサイズ紙カップとチョコチップマフィンを手にしている.やはり此処はサンフランシスコだ...
ポスター会場はサッカーコートが2面以上入るくらいの広いスペースがあり,そこにAGU全分野のポスターが毎日入れ替わりで掲載される.ざっと見るだけでも半日かかるかも知れないポスターをざっと見回すと,各分野で少しずつ毛色が違うことに気づく.分野によっては,画像を多用するところもあったり,図を多用するところがあったりする.これだけ多くの分野のポスターを見るだけでもプレゼンの作り方の勉強になる.ビジュアル面で言うと,フォントの大きさ・種類・色,背景色,図・表・画像の大きさ,そしてそれら全体の構成が,ポスターの見栄えを決める.ポスター発表を見に来る人は,まずは自分の興味有る話を予め予稿集で調べて来るが,その発表を見終わると,あとは興味の向くままその周辺のポスターを見て回るだろう.その時に重要になってくるのがポスターの見栄えである.どれだけ観客を引きつけるか,それが重要である.研究内容が良ければなお良いと言うことは言うまでもない.ざっとポスター会場を見て回った印象では,欧州勢のポスターが総じて良い.亜州勢はまだまだ改善の余地が残されていると言ったところか.ただ,欧州勢の作るポスターは,何処かで見たことのある構図であったりして,新鮮みに欠けるところがある.一方,一部の亜州勢は,グッと来るデザインで魅力的な構図であった.たとえて言うなら,欧州勢はオーケストラのハーモニーで,亜州勢の一部はケチャダンスのグルーブだろうか.
会議中,午後の前半セッションが終わると参加者の殆どはビールを求めにポスター会場に集まる.無料でビールが振る舞われるのである.そう言う意味で,午後の後半はかなりポスター会場がごった返す.ビール片手に議論を交わしているその姿は,いかにもアメリカらしい.というか,日本ではあまり考えられない.
僕の発表は最終日の午後後半だったので,あまり人が来ないのではないか?と心配していた.というのも,最終日の前日に帰ってしまう人がいるからだ.ところが,実際は結構人が来てくれた.内訳は,午後のコアタイムと午前中でそれぞれ半分ずつ.つまり,午前中にちょこちょこポスター付近で人を待っていたおかげで結構な人数になった.そういうことだ.最近は大抵の人が(学生も含めて)コアタイム以外にポスターの前に立たないように思える.でも,実際はコアタイム以外にも人は来るのである.なぜなら,コアタイムの裏側でオーラル発表が行われていて,オーラルを聞きたい人にとっては,コアタイムを外した時間帯にポスター会場に現れるからである.ちなみに,僕の隣でポスター発表していた人は,コアタイムが終わってから二度と自らのポスターの前に現れず,つまり,張り逃げして会場をあとにしていたのである.そしてその遺されたポスターの片隅に,「君の発表に大変興味を持った.是非とも議論したいので以下のアドレスにメールして欲しい」との書き置きがあった...
チャンスの神様は後ろ髪が無い.だから一度通り過ぎると二度と捕まえることが出来ない.
基本的に食生活がベジタリアンなので,食事は常にタイ/ベトナム料理になる.ここサンフランシスコは世界一大きなチャイナタウンが有ることで有名だが,チャイナタウン以外にも,と言うか,街中至る所に(デパ地下やビルの階上も含め)タイ/ベトナム料理屋がある.香草が気にならない人であれば,非肉食を貫くことは容易である.ただ問題なのは,量が半端無く多いことだ.ついつい,"not
so much"と言う癖が付いてしまう.
(余談) 飛行機内で語られていた,cabin attendantが持つ日本人のマナーについて
今,成田行きのNW27便の中でこの記事を書いている.僕の座っている席は42-Bで,これはA330機の最後尾にあたる.先ほど喉が渇いたのでCAに水を頼んだ.ありふれた光景である.僕の座席の真後ろがCAの座席で,彼らのしゃべり声が筒抜け状態である.先ほど僕に水を届けたCAがこんな事を喋っていた.”Japanese people usually say just “Water”, “Juice”. But that guy says so politely, “May I have a cup of water?”.” この手の表現は誰しも中学校で教わったはずだ.そんな物は細かいことだ,なんて事はゆめゆめ思うべからず.
<田中 健太郎 / 編集: 田中 健太郎>