スタッフ出張報告

AGU Fall Meeting 2009 @ San Francisco
-世代の移りゆく様を感じた-
田中 健太郎

ユニオンスクエア周辺で,比較的大きな群れを作っている鴎たちに目がとまった.

年々,予稿集のスタイルが変わっている事に気がつく.数年前までは,電話帳の分厚さの予稿集だったが,その後,分冊するようになって,今年は完全にPDF化された.ノートPCの発展と参加者の増加を考えると,成るべくしてなった,という所か.僕は出発前に,興味のあるパートを印刷して自分専用の予稿集を作った.そのお陰で肩こりが今年はない.
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とある修士学生(日本人)が今回,英語発表が初めてだと言う.宇宙プラズマの分野柄,聞きに来る相手は非日本人率が高い.というわけで,英語が共通語になるわけで.ポスターの中身を見ると,良くまとまっていると感じたので,「あとは情熱よ,てか,情念よ.パッション・アンド・エモーション.単語を並べれば分かってくれる.相手はバカやないし.実際,中国人の発表は,単語を並べただけやん.」と説き伏せた.

発表時間が終わって,たまたまその学生に会った.顔つきが明らかにキリッとしていた.「何人切りした?」と尋ねると,「6人ぐらいっすかねー.少しはサイエンスの議論が出来た感触です.」との事.自信が付いてなにより.
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僕の発表を聞きに来た,という,積極的な人(学生)が居たのが嬉しい事である.発表論文で名前は知っているが,実際に僕を見るのが初めてだ,と言うその学生は,明らかに僕より年上に見える.いや,僕が若く見えるだけなのか.その学生と異常抵抗とはなんぞや?という議論を30分程度行った.説明的な議論にとどまらず,無衝突プラズマの持つその不思議さ・神秘性にまで話が広がり,ある種,自然哲学的対話が出来た.こんな話が出来るのは,国際会議ならではだろう.

いつの間にか,年下の研究者(学生)から注目されている事に気づかされた.そういう立場になった,という事か.
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Pritchettのポスターを見に行って,色々と議論を交わした.彼が最近出した研究論文を中心に話が進み,論文の中では書かれていない,研究の苦労話などをした.また,僕のポスターの話もした.どういう経緯でイオン非等方性に着目したのか?と尋ねられたので,実は,学生が始めた研究の延長で,たまたま学生がイオン非等方性に着目しなければ今のような研究の方向性に行って無かっただろう,という,これまた「裏話」的な事を議論できるのも,国際会議ならではだろう.

会議後,宿に戻ると大抵,ラップトップを開いて日常的な作業をした.年々,SFのホテルのインターネット環境が良くなっている.スパコンにリモートログインしても,時差を感じない.大きなファイル受信も問題なくなっている.
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数ヶ月前にサブミットした論文の結果メールが届く.2ヶ月以内にリバイズせよ,との事である.比較的好意的なコメントだったので安心した.

リバイズ要求と時を同じくして,執筆中の原稿ができあがった.それをボスにメールする.今から塩漬けタイムである.もう1本執筆中の原稿があるのだが,此はまだ計算結果が出てくるのを待つのみ.文章はできあがっている.後は数値を入れるのみ.
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# 空港へ向かうBART車内にて.
斜向かいにお孫さんを連れたご夫婦が居た.おそらくは,お孫さんの一人旅の見送りに付き添っているのだろう.半べそかいておじいちゃんにしがみつき,それをおばあちゃんがあやしている.超大国と呼ばれている此の国の,最も基本的な社会単位である「家族」のその光景は,どの国であっても同じなのかも知れない.
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<田中 健太郎 / 編集: 田中 健太郎>