スタッフ出張報告

世界不況下のAGUで思ったこと @ サンフランシスコ
プロジェクト研究員 西野 真木

●はじめに

午後に成田を出発し、日本時間の夜24時頃にサンフランシスコに到着した。つまり、普段生活している時間帯のフライトだったので、全く眠れなかった。そして現地は朝。時差ぼけで苦しい一日が始まった・・・。それにしても寒い。もっと暖かいと思っていたのだけど、出端を挫かれた感じがする。

到着日の午後に、AGU前日に毎年恒例で行われているGEM miniワークショップに参加した。だが、面白さをあまり理解できなかった。長旅で疲れているためなのか、それとも・・・。

●AGU

本題である。今回のAGUでは口頭講演が2本、ポスター講演が1本、合計で3回の講演がある。まずポスター発表。「かぐや」観測データによる最新成果を紹介させて頂いた。そのときに、海外で活躍する○○人の研究者が、日本の月探査のことを羨ましがっていた。「○○は莫大な金をかけて月まで行ったのに何のデータも出ていない。それに対して日本は素晴らしい」と複数の○○人が言っていたのが印象的だった。○○は、単に情報を外部に出していないだけなのでは・・・?

今回、口頭発表では招待講演を仰せつかり、その他にも通常の口頭発表があった。だが、正直に言って、一つの学会で複数の講演をすることにはなかなか慣れることができない。前日ホテルの鏡の前で何回も練習した台詞が出て来なかったりして悔しい思いをしたのだが、要するに練習が足りないということだ。あと、論文も早く仕上げなくてはいけない。

●漢字併記

つい最近、アメリカの物理学会ではCJK(Chinese, Japanese, Korean)の著者名の漢字併記を認めた。この動きは他の学会にも広まっていくものと信じている。僕は以前から、英語でのプレゼンの際にも可能な限り漢字名を併記するようにしていて、勿論今回も併記をした。漢字圏の人間には分かりやすく、非漢字圏の人には興味を持って頂けるという、二重の利点があるからだ。なお、プレゼンのpptファイルを会場のマシンで開く際に漢字が文字化けを起こす可能性があるため、漢字の部分は最初から図として張り付けてある。

今回の滞在中に最も驚いたのは、華僑である知人のことだ。なんと彼は漢字をほとんど読むことができないのだそうだ。「日本」は読めるが「宇宙」や「航空」は意味が分からないと言っていた・・・。

●世界不況

サンフランシスコ市街は年末商戦だというのに客が少ないように見えた。そういえば、昨年と比べて白人のホームレスが増えた気もする。自分は経済のことはマッタク分からないが、なんだか世界的にヤバそうだという雰囲気だけは理解できる。世界が経済恐慌に突入した時、宇宙科学はどうなるのだろうか。月探査も含めて、これから米国が没落してアジアが台頭するのだろうか? もしそうなったら、果たしてサイエンスはサイエンスであり続けることが出来るのだろうか? そのときに日本が何の将来戦略を持ち得ないとしたら、どうなるのだろう。(それ以上に、そういった困難な状況になった時に自分はどうしたいのか、という問いがあるのだが。) サイエンスの境界条件が理学や工学とは関係ない要素で決められてしまうことは大いにあり得るのだ、などということを考えたAGUだった。