スタッフ出張報告
コスパー出張報告 @ モントリオール
西野 真木
「かぐや」とGeotailの最新成果を国際会議COSPARで発表する機会を頂き、2008年7月12日〜20日にカナダ・モントリオールへ出張した。今回は口頭講演2本・ポスター講演1本ということもあり、出発の前日まで慌てて準備していた。同じ時期に別の原稿を頼まれていて、原稿を成田空港のラウンジからメールで送信するという慌ただしさ。もっと計画的に仕事をしたいものだ・・・
■ ロストバゲッジ
いきなり妙な話で恐縮だが、今回はかなり多くの日本人研究者がロストバゲッジやオーバーブッキングに遭っていた。何とも気の毒な話である。僕は学生に預かってもらったポスターが遅れて届いた程度で実害はなかったが・・・。着替えの詰まったスーツケースが届かないことに比べたら、成田で歯磨き粉を没収されたことなどは些末なことだ。
■ セッション
1つめの講演では「かぐや」データの解析結果を紹介させて頂いた。自分の講演は何故かChang`e-1 (嫦娥一号)のセッションに組み込まれていて、そのセッションのトップバッターかつ唯一の日本人講演者であった。他の講演者と座長が中国人ということもあり中国語(普通話)で自己紹介をしたところ、拍手が沸き起こった。あと、英語はもっと上手くなりたい。話すスピードをもう少し速めることができたら、伝えられる内容も増えるはずだ。
個人的にはChang`e-1 (嫦娥一号)の太陽風観測データを見たかったのだが、発表者が来ていなかったので話を伺うことができなかった。嫦娥一号と「かぐや」は飛行高度が異なるので、データを比較すれば面白いことが言えるかもしれないと思っているのだが・・・。中国側が今回のプレゼンで多くのデータを示したわけではなく、科学データが取得できているのかどうかさえ実のところ不明ではあるが、それでも中国の熱気のようなものは伝わってくる。
この月セッションを通じて強く感じたことは、「かぐや」は人類史に残るミッションになり得るだろうし、そうなるように我々が努めていかなければならないということだ。
さて、もう一つのほうの口頭講演ではGeotailとClusterによる観測を紹介させて頂いた。この内容の論文を早く仕上げてしまいたいと思いながら話した。今年は論文をまだ1本しか出していない。太陽風のように超音速で仕事をしたいものだ。
また、ポスター講演の内容は直前にPRLに受理されたもので、COSPAR期間中に論文出版の請求書が送られてきた。例によって論文が受理された後の2時間くらいは嬉しいのだが、手続きだけが残る今となっては…。(なお、この原稿を書いている時にその論文の最終校正作業がやってきた…。)
■ モントリオールのこと
街には想像していた以上にフランス語が溢れていた。レストラン等でも基本はフランス語だったのだが、英語の分かる店員さんはちゃんと英語で対応してくれた。そのレストランでは夕暮れになると人々が延々と議論をしている。ヨーロッパでもそうだが、こういう風土だからこそ科学や芸術が生まれてくるのかもしれない。・・・それに対して日本は、いや、日本に限らずアジア諸国は、そもそもサイエンスの土壌が欠けているように思う。自分の仕事も表面的にはサイエンスに見えるしサイエンスだと思って取り組んでいるが、実のところどうなのだろうか。
モントリオールには中華やイタリアンをはじめとして色々な国の料理があり、アジアとの時差さえなければ実に過ごしやすい街だと思った(まあ、時差のことを言ってはおしまいなのだが・・・)。ただし、モントリオール交響楽団の演奏会がない期間だったことだけは残念だった。機会があればまたカナダに来てみたいと思う。