スタッフ出張報告
サブストーム会議@セッガウ城
高田拓(プロジェクト研究員)
5月5日〜9日にオーストリアはシュタイヤマルク州の南に位置するセッガウ城で開かれたサブストーム国際会議に出席した。サブストーム国際会議は、世界中の様々な場所で2年毎に開催され、サブストームの研究者が一同に会して議論を戦わせる場である。開催場所のお城は、近くの小さな町(ライプニッツ郡:人口7.5万人)から少し離れた丘の上にあり、眺望はすばらしく・・・その代り参加者はお城に缶詰め状態にされてサブストームの議論をすることになった。
サブストームは、極域でのオーロラ現象として知られているが、実際には、地球磁気圏で起こる大規模な爆発現象も含めた現象のことである。1950年代後半に始まる長年にわたる地上・衛星観測にも関わらず、サブストームの発生モデルに関してはコンセスサスが得られていない。簡単に言ってしまうと、「外側から始まるか(図上)」、「内側から始まるか(図下)」のどちらが正しいかでモメテいるのだ。
結果として、9回目を数える今回の会議でも両者はモメタままであったが、希望の光は見えていた。本会議では、2007年2月に打ち上げられたTHEMIS衛星とそれをサポートする地上観測網による初期的な研究成果が数多く紹介されていた。今まで手に入らなかった高時間精度の多点同時観測データを基に、ここ2-3年の間にサブストームの議論が大きく前進する可能性を感じさせてくれた。一方で、コミュニティー全体として、サブストームをどう決着させていくかという面では、いくつかの問題提起と共に現状の方向性を危惧する声も聞かれた。会議に参加して改めて感じたことは、サブストームの世界では定性的な理解を完全にするためにも、定量的な理解が必要であり、その実現には多くの研究者の協力が必要になりそうだ、ということである。
今回の会議のテーマは主催者(私の元ボス)によると、「サブストーム」と「ワイン」であり、参加者は、開催期間中ずっとこの2つのどちらかを味わい続けることとなった。シュタイヤマルク州は白ワインの産地でもあり、丘の上に葡萄畑が広がる風光明媚な場所が多くある。当然、セッガウ城もワイン畑を持っており、敷地内にある蔵内でのワインのテイスティングが行われた。出てきたワインは5種で、どれもシュタイヤマルクを代表する上質のワインであった。出来た順に並べると@Welschriesling、AMorillon、BRheinriesling、CMesswein、DZweigelt(赤)。日本ではあまりなじみのないオーストリアのワインだが、一飲の価値はある。
<高田 拓, 編集 :田中 健太郎>