スタッフ出張報告

シンガポールのAOGS2009
横田 勝一郎

8月の11日から15日にかけてシンガポールで開催されたAsia Oceania Geoscience Society (AOGS) 2009 に参加・発表してきました。

今回の発表では、最近誌上発表した「かぐや」衛星での観測結果について紹介してきました。齋藤、西野、横田と朝1番で3連発の発表でした。内容に関しては、月軌道でのイオン観測は実質「かぐや」が世界初ということで自負するものがありますが、客足はイマイチでした。前の席で熱心に聞いてくれていた加藤先生とIp先生の存在は有難かったです。午前の半分を過ぎるとさすがに人が増えてきました。

一応ベッピコロンボ計画の末席を汚す身なので、水星セッションをチェックしました。メッセンジャーの2ndフライバイ観測の紹介があり、90%をカバーするという水星表面の画像は、手放しで賞賛を送りたくなるものでした。質量分析や大気の話になると、どうしても懐疑的な見方が強くなってしまいます。3rdフライバイがもうすぐで楽しみですが、複雑な思いもあります。

今回の発表で最も感銘を受けたのは、`The SAGA of solar wind'でした。`SAGA'って何だと、10分前に辞書で調べて慌てて聞きに行きました。太陽風に関する英雄冒険譚。それは老教授の「太陽風は昔からあったわけではない。」という語りかけから始まりました。

「50年代以降、太陽風の理論が生まれ、その時から太陽風の"存在"が始まった。」

その内容は、一言で言うとその老教授の思い出話です。登場人物は、ビアマン、アルフベン、チャップマン、そしてパーカー。シカゴ大学での会合でビアマン教授と若き学生ユージンの出会い、いくつもの雑誌から却下されるユージンの論文。時にその場の会話を再現しつつ、太陽風理論がどのような人間ドラマの中で成り立っていったかのを語ってくれました。私にもいつかこのような漫談スタイルの懐古話をする日が来ればと思います。その時の登場人物は誰でしょうか。

最後にシンガポールの個人的な感想を述べましょう。熱帯雨林気候ですが、東京のような町並みです。ビル、ビル、団地、団地、ショッピングモール、たまにマーライオン。正直ショッピングモールには食傷気味になりました。日本ほど不況の雰囲気を感じません。皆普通に消費しています。不安を煽るマスコミがいないのが 消費マインドを落ち込ませない最大の原因でしょうか。ぶらぶら散歩したのですが、都市の規模に応じた渋滞がまるでありませんでした。残念なことに歴史的な空気が少なく、国の奥行きなるものを感じませんでした。一方で、ある種の息苦しさや不自然さを感じました。端的に言うとピンク産業が見当たりませんでした。料理は大満足です。外食が日常らしいためフードコートが発達していて、安くておいしいものに事欠きませんでした。チキンライス、フライドホッケンミー、ご飯に何かいろいろ盛ったやつ、よく冷えたタイガービール。ドリアンも美味しく頂きました。