磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」

地球の尾っぽのプラズマ科学探査「GEOTAIL」

第一線の研究者の声

宇宙・プラズマ・Geotail

浅野 芳洋

夜空の星々を飽きずに眺めつつ, パイオニアビーナスやボイジャーの写真等でわくわくしていた子供時代, しかしそれらの衛星を作り上げ, 打ち上げた人々,そのデータを元に研究する人々の存在は, 私の人生からは遥か遠く彼方のものでした.ましてやこれら画像のある惑星科学や宇宙誕生の壮大な謎を解く天文学に比べ, 日本では見られないカーテン状オーロラの物理や, 目で見ることができないだけでなく, 重力や大気などと比べて実感することも難しい磁場・電場・プラズマ等の観測をベースにした磁気圏物理学に私が辿り付くには多くの時間を要しました. しかし一方でそれが未知の魅力でもあり,私を磁気圏研究にぐっと引き寄せた原因でもあります.そして最終的には大学生の頃講義で示されたGeotail衛星のプラズマデータが進む道を決定付けたといっても過言ではないでしょう.さもなければ気象学か惑星形成の物理をやっていたに違いありません. しかしながら, このように感覚的に取り付きにくい分野であるために,Geotail衛星のデータを見始めて10年以上経った今でも専門家以外に研究内容を説明する時には苦労します.プラズマといっただけで分からないからと逃げられる方も多いですし,一生懸命聞いている風で, 最後に一言「分からなかった…」Geotail衛星といっても何を観測しているのか理解してもらえないまま,衛星よりロケットの話題になったり,プラズマディスプレイと液晶ディスプレイの違いの議論に変わっていたり.地球磁場の説明と, 神社の磁場が…という話がまったく噛み合わずに終わったことや,プラズマからヒトダマの話にひたすら脱線していったことなど…しばしばあります. でもそれも楽しみの一つかもしれませんね.まだまだそんな魅惑的な(?)プラズマを直接観測し続けているGeotail,素敵な観測衛星です.

(編集: 三津山和朗)