研究プロジェクト
地球磁気圏の観測的研究
惑星間空間には、超音速のプラズマの流れ(太陽風)が存在します。地球には固有の磁場があり、太陽風が直接入るのを妨げるバリアーのよう な役割を果たしています。この領域は地球磁気圏と呼ばれており、太陽と反対の方向に長く引き伸ばされています。しかし、太陽風中の荷電粒子のいくつかは磁 気圏の境界を越えて内側に侵入してくるため、太陽風と磁気圏内のプラズマが接する境界ではプラズマの混合によりダイナミックでおもしろい現象が起きていま す。また、前面には超音速の太陽風が地球の磁気圏とぶつかることにより衝撃波が形成されています。地上とは違い、宇宙空間のプラズマは粒子間の衝突がほと んどありません。そのため無衝突衝撃波と呼ばれています。粒子間の運動量・エネルギーの交換は、プラズマ中の様々な電磁波動を介して行われます。磁気圏の 内側でも、プラズマ粒子の加速・加熱が起きており、そのメカニズムは未だ謎に包まれています。
下の絵は磁気圏のイメージ図です。
提供:ISAS/JAXA
今まで述べてきたように地球磁気圏内には領域ごとに様々なプラズマ環境があり、地球磁気圏はプラズマ物理学の実験室だと言うことができるでしょう。それは 私達が地球磁気圏を使って、プラズマのいろいろな現象をin-situ観測(その場観測)で確かめることができるからです。そこが私は、地球磁気圏の一番 の面白さだと思います。観測により得られたデータを解析し、理論に基づくシミュレーションをする、この二つの手法を用いることにより、地球周辺での物理現 象をさらに深く理解することができます。
私たちのグループが現在運用している磁気圏関連の衛星は「あけぼの」「GEOTAIL」です。磁気圏観測衛星「GEOTAIL」(ジオテイル)は、 1992年7月24日に、デルタIIロケットによってアメリカ・フロリダ州のケープ・カナヴェラルから打ち上げられました。これは宇宙科学研究所と NASA(アメリカ航空宇宙局)の共同計画です。GEOTAIL衛星は、地球磁気圏内の物理現象の理解に重要な役割をはたしましたが、現在もなお多くの問 題が未解決です。これらの問題解決のために、将来ミッションとして磁気圏探査衛星(SCOPE)の計画があります。
〇磁気圏尾部−内部磁気圏遷移領域でのサブストームプロセス>>
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<関克隆 / 編集: 田中健太郎>