研究プロジェクト

数値シミュレーションを行う場合の注意事項その1

目に見えない宇宙プラズマを研究するにあたり数値シミュレーションは便利な研究手法となります。磁気リコネクション等のプラズマ現象に対してシミュレーションを行い、ジェットが激しく吹く様子などダイナミックなプラズマの運動を動画で見ると興奮します。興奮するだけでなくもちろん数値シミュレーションは実際に様々な宇宙プラズマ現象の解明に大きく貢献しています。しかし、目に見えないからこそ数値シミュレーションを行う場合は注意が必要となります。

注意事項その1 :結果を信じない

宇宙プラズマには「ほぼ無衝突」「とても高温」「ほぼ完全電離」といった普段我々が触れている空気や水とは大きく異なる特徴があるため、我々が想像しえない複雑な運動をします。そこが宇宙プラズマを研究する面白いポイントなのですが、複雑であるがゆえに、数値シミュレーションによって得られた結果が宇宙プラズマの運動をしっかり捉えているものなのか、数値的な誤差やプログラムミスによるものなのか判断するのが難しいという面もあります。大発見かと思ったけれど冷静によく調べたらミスだったということは研究をしているとよくある話です。

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図: 大規模に発達する磁気リコネクションをシミュレーションした例

さらに、数値シミュレーションを行うには様々な近似が必要なので、都合のいい近似や仮定をしてしまっているために、本来考慮すべき重大な事実を考慮しないで何を見ているか分からない結果を出してしまうこともあります。 研究するには「宇宙プラズマの運動を正しく理解する」気持ちが何より大切であり、ミス等の結果を発見と誤解して発表する、といったことは絶対にあってはなりません。誰かがそのようなことをしてしまうと混乱を招きいつまでたっても宇宙プラズマ物理が進まなくなってしまいます。

ですので、数値シミュレーションは、プラズマの運動を直接理解するためのものではなく、複雑な運動を理解するためのサポートツールとして認識し、慎重に結果を解析することが必要です。そのためには、出てきた結果をとりあえず疑う、ことが大事だと思います。


<中村琢磨 / 編集: 田中健太郎>