研究プロジェクト

衛星観測より求められたサブストーム時の磁気圏尾部変化と磁気リコネクションに関する研究

宮下氏は地球電磁気・地球惑星圏学会 (SGEPSS) で大林奨励賞を受賞されました.本稿では,氏の研究と受賞に至る過程を紹介します.

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>>研究対象と研究手法はどのようなものですか?

磁気圏物理学における最重要課題の一つに「サブストームはどのように駆動されるか」という未解決の問題があります。その解決に向けて、地上Pi2脈動やオーロラを用いて多くのサブストームの開始時刻を同定し、ジオテイル衛星で観測された様々な物理量をSuperposed Epoch Analysis法により解析し、サブストーム開始前後の磁気圏尾部の変化を統計的に調べました。

>>過去のサブストームに対する理解はどのようなものだったのですか?

これまで、磁気リコネクションモデルやカレントディスラプションモデルなど、物理過程、開始領域が異なる様々なサブストームモデルが提唱されてきました。しかし、どのモデルが正しいのか、あるいは、統合した過程が起きているのかは、数十年にわたって研究されてきたにもかかわらず、現在も激しい論争が続いています。

>>百家争鳴な研究領域に身を投じたわけですね。そのような中で、氏の研究によって何が明らかになったのでしょうか?

一連の解析により、この問題に対する重要な手掛りを得たのと同時に、磁気リコネクションがサブストーム発生に重要な役割を果たしていることを明確にしました。つまり、サブストーム開始数分前に、地球から反太陽方向に地球半径の約20倍の距離だけ離れた真夜中前の領域(X〜−20 Re)で磁気リコネクションが起こり、サブストーム開始直後に、X〜−30 Re付近でのプラズモイド発達とX〜−10 Re付近での磁場双極子化が同時に起こるという、磁気圏尾部のサブストーム開始に伴う発展の全体像を得ました。また、磁気リコネクションの起こる位置とその変動幅や、磁気嵐時と非磁気嵐時のサブストームが基本的に同一の性質を持つことも明らかにしました。

>>GEOTAILデータは誰でもアクセス可能なデータなわけですが、その中から前人未踏で斬新なアイデアを抽出するためには少なからず困難があったと思います。研究するにあたっての困難、それに対する解決策はどのようなものがありましたか?

諸変数の変動の表示方法に工夫が必要でした。個々の観測データを二次元(XY)平面上にベクトルや円で表示する方法をとりました。

>>今後の研究展望はどのようなものでしょうか?

本研究結果は、今後衛星データを解析する際のガイドになるだけでなく、新たな衛星計画を策定する際にも重要な指針を与えるものだと思います。今後も宇宙プラズマ現象の理解に貢献し、また、将来の磁気圏観測計画や惑星探査計画にも貢献していきたいと思っています。

>>受賞するにあたって、何が受賞のポイントだとお感じですか?

いろいろな要因があると思いますが、今まで、支えてくださった方に恵まれたのが大きいのではないかと思っています。


<宮下幸長 / インタビューア: 田中健太郎>