研究プロジェクト

静電プラズマエネルギー分析器の原理

プラズマは電気を帯びた荷電粒子であり、宇宙空間はほとんど水素が電離した水素イオン(プロトン)と電子に満たされている。

プラズマエネルギー観測器はそこにあるプラズマ粒子をひとつひとつカウントし、どんなエネルギーの粒子がどの方向からどれだけきているかを測定することが可能な観測器である。

プラズマエネルギー観測器は主に2つの部分から構成されている。一つ目は入射プラズマ粒子のエネルギーを選択するところであり、ある一定のエネルギー幅を もつ粒子しか通さないフィルターの役割をしている。2つ目の役割はそのフィルターを通っていた粒子の検出部である。検出部で1粒子を電気信号に変えること で信号処理を行う。


図1:平行平板電極間の荷電粒子の運動

エネルギー選択部

2 枚の電極に電圧をかけ、そこに電気を帯びた粒子が入るとどうなるかを考える。 そうすると、以下の図のように粒子のもつエネルギーによってその運動の軌跡は異なる。電極間の電場により入射した荷電粒子は力をうけ、運動方向が変化す る。エネルギーの低いもの(速度のおそいもの)は、通過に時間がかかりその間に電極にぶつかってしまい結果として通過できない。つまり、エネルギーの低い 粒子は電場によってよく曲がり、高い粒子はそのまま直進する傾向がある。


図2:球核電極中の荷電粒子の運動

球核の電極盤を考える。

そうすると、低いエネルギーのものは電極にぶつかり、高いエネルギーのものもやはり電極にぶつかる。この電場中の粒子の運動方程式は重力のそれとおなじ形で軌道の解は円と楕円と双曲線だけなので、円軌道で運動するあるエネルギーの粒子だけこの電極間を通過できる。


図3:トップハット型分析器

静電プラズマ分析器ではトップハット型と呼ばれる2分の1球の電極がよく使われる。この形状は入射プラズマの飛来方向により落ちる場所が違うことを利用し360度の視野で速度ベクトルの観測が可能であるのが利点である。


図4:2次電子増倍の原理

検出部

検出部にはMCP(micro channel plate),チャンネルトロンが使われる。チャンネルトロンを多数集めたものがMCPであり基本的な原理は同じである。両方とも2次電子増倍管であり、 入射粒子がチャンネルトロンの壁面を叩き、出た2次電子を電圧で加速し、また壁面を叩き2次電子を出す、という過程をくりかえし、最終的には100万倍以 上のゲインを得る。 感度は基本的には2次電子を出すものにはなんでもあり、イオンをはじめ電子、紫外線、X線、中性子などがある。 MCPの時間分解能 は大変よくその時間は1n秒以下である。しかし、実際そのあとの信号処理に時間がかかるので信号処理の早さがプラズマ観測器の時間分解能を決定している。

<斉藤実穂>