研究プロジェクト

東大総長賞への道

2011年3月、光栄にも東京大学総長賞なるものを頂きました。身に余り過ぎる栄誉なので、自分がその賞について語るなどおこがましいにも程がありますが、「何か書け」の一言とともにこのようなスペースを頂いてしまいました。そこで少しでも後輩たちの参考になればと思い、自分が辿った道のりを簡単に以下で紹介します。何より、F研究主幹にドスの聞いた声で執筆を頼まれたら断る術はありません。(※以下は必ずしも実際の選考過程と一致しない部分もあるかもしれません。あくまで主観的文章としてどうかご理解願います。)

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@0次予選:D論提出
2月初旬、博士論文審査の通過が内定。この山が最も高く険しいものであったことは言うまでもありません。タフさ、という言葉の意味と重要性が少し分かった気がします。しかしD論奮闘記を書き始めてしまうとハリーポッター並のファンタジー大長編になってしまうのでここでは割愛します。

A一次予選:宇宙惑星科学講座代表決め
まずは各講座の代表者が決められます。博士論文の通過が内定したあと、主査の先生より宇宙惑星の代表として理学系研究科研究奨励賞・総長賞候補に推薦するとの旨を伝えられました。といっても、今年度は宇宙惑星から博士論文を提出できたのが自分一人だったので不戦勝です。D論奮闘記は今年Dを取る予定の同期 K 君に託したいと思います。彼ならゴルゴ13並の大長編を書いてくれるに違いありません。

B二次予選:地球惑星科学専攻代表決め(研究奨励賞選出)
次に各講座(宇宙惑星、地球惑星システム、固体地球、大気海洋、地球生命圏)の代表者が集められての選考が2月中旬に行われました。事前に主査の先生による推薦書、博士論文要旨および業績リストを提出しました。選考会の内容は5分間のプレゼンテーションおよび10分間の質疑応答。各講座の先生方が相手なのでできるだけ専門用語などは避け、かつ5分という短時間でも伝わるようトピックを絞ったプレゼンを心がけました。とはいえどうしてもイントロなどが不十分になってしまうので、その部分は質疑応答で補えるように準備をしました。
今回、講座代表者のうち自分を入れて3人が学部(地物)の同期。顔なじみとの再会で緊張がほぐれました。しかも自分は発表順が最後(名前順)で、先に入った同期に中の様子を聞けるという恵まれた状況。結果、数時間後に教務委員長より専攻代表決定の報を頂き、喜びと同時に同期たちの分まで頑張らねばという気持ちにかられました。
蛇足ですが、選考会前日に友人と巣鴨にあるモンゴル料理店で晩御飯を食べました。翌日のことを考えお酒を遠慮していたにも関わらず、店主からモンゴル焼酎ショットグラスのサービス。一杯だけならと頂くと、モンゴルでは3杯飲むのが礼儀、という日本でよく聞く文句でさらに二杯。その後のプレゼン準備が効率的だったかは定かではありませんが、結果として自分にとっては縁起のよいお店となりました。ぜひまた勝負事の前にはあのお店でモンゴル焼酎と羊肉を頂きたいと思います。みなさんもぜひ。

C最終予選:理学系研究科総代決め
そして今度は理学系研究科の各専攻(物理学、天文学、地球惑星科学、化学、生物化学、生物科学)代表者による選考会が3月初旬に行われました。この選考により理学系研究科からの総長賞推薦者が決まります。今回は博士課程での成績表や業績リスト、指導教官による推薦書の他に、自身で記述した学業の動機や特長、今後の目標などのプロファイルを提出しました。審査員の専門分野がさらに拡がるため、選考会でのプレゼン(発表5分+質疑応答10分)資料をまたイチから作り直し、また時間ぴったりに収まるよう夜な夜な発表練習を繰り返しました。さすがにこのときはシラフです。

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(プレゼン資料:クリックでpptにリンク)

選考会当日は知っている顔が自分の専攻の先生一人しかおらずやや緊張しましたが、注意していた発表滑り出しに成功したのであとは高いテンションで5分間を駆け抜けるだけです。またこのとき、事前に先生からアドバイスを頂いた「楽しそうに研究していたと思えるような発表を」ということも強く意識していました。質疑応答では物理 or 天文の先生から積極的に質問を受けましたが、幸いなことに自分の開発分野に関する造詣の深い方だったようで、噛み合った受け答えができたように思えます。この時点で分泌されるアドレナリンはMax、そんな時の手ごたえのある質疑応答はやっぱり楽しんご。
やりきった、という爽快感があったので結果はどうあれ悔いなしという気持ちでしたが、発表終了の数時間後に審査会に出席していた地惑専攻の先生から代表当確の報を受けた際はやはり飛び跳ねました。「君の発表が一番分かりやすかった」というお言葉は自分にとって大きな自信となりました。

D決勝:総長賞受賞者選考
いよいよ決勝、全学における総長賞候補者からの選考です。Cの最終予選翌日が提出書類の締切で、大急ぎで修正を加えました。このときの指導教官@アメリカと事務さん@本郷、自分@愛知県のメールラリーの応酬は忘れられません。それからしばらく胃の痛い日々を過ごし、ようやく解放されたのは10日後のことでした。自称「持ってる男」の完成です。

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Eポストシーズンマッチ:総長大賞選考
ようやく終わりかと思いきや、野球でいえば日本シリーズがまだ残っていました。総長賞受賞者の中からさらに総長大賞なるものが選ばれるのです。例年は授賞式の場でそれぞれ3分間のプレゼンを行い、その場で選考を行うようですが、本年は震災の影響で授賞式が縮小となったため書類での事前選考となりました。結果は…。他の受賞者の方々が挙げられた輝かしい業績を見れば納得です。むしろ改めてその場に一緒に並べたことの喜び(<恐縮)を実感しました。
私ごとですが、受賞者の中にはなんと高校の同級生もいました。彼は医学部の博士課程修了で、癌の研究をしているとのこと。同級生トップで理三現役合格の彼が受賞したことは驚くに値しませんが、その彼の横に自分が並んでいたことは我が高校関係者の誰もが目を疑う光景だったでしょう。やんちゃに過ごした高校時代でしたが、少しは母校に錦を飾れたでしょうか。

 以上、長々と自慢話を駄文にて披露してしまいました。ほんの少しでも後輩方の参考になれば幸いです。今回の経験で「楽しく研究して、かつその楽しさがわかるように伝えること」の大切さを学べた気がします。今後は今回頂いた大きな肩書きに見合うように、中身も大きく磨いていきたいと思います。最後になりましたが、このような賞を頂けるまで育てて頂いた指導教官および先生方、諸先輩方、またお世話になった秘書さんおよび事務さん、楽しい学生生活を作ってくれた同期、後輩たち、そしてそのような生活を送らせてくれた両親にこの場を借りて心から感謝の気持ちを表したいと思います。本当にありがとうございました。

<村上豪 / 編集: 中原美江>