プラズマ圏観測衛星「あけぼの」
太陽活動とオーロラ現象を結ぶ「あけぼの」
松岡 彩子 (MATSUOKA, Ayako)
写真: 松岡准教授(相模原キャンパスにて)
「あけぼの」のこれまでの役割とこれからの役割について、語っていただきました。
「あけぼの」 第一の使命
「あけぼの」は1989年2月22日に、M-3SII ロケット(JAXA 相模原キャンパスの敷地内に寝そべっているロケット)4号機で打ち上げられました。以来19年の間、磁気圏・電離圏の観測を続けています。
図1:「あけぼの」衛星
「あけぼの」を打ち上げた第一の目的は、オーロラ現象の解明でした。そして、オーロラを光らせるプラズマについて、また関連する様々な現象について多くの発見をもたらしました。しかし同時に、多くの新たな疑問も生み出しました。そして、その後の「れいめい」衛星などの新たなプロジェクトの目的となりました。
図2:「あけぼの」衛星の運用に用いられる、内之浦局の10mアンテナ
オーロラ観測からプラズマ圏・放射線帯の内部磁気圏観測へ
「あけぼの」は、オーロラ現象だけでなく、地球からのイオン流出や、プラズマ圏・放射線帯の観測でも、多くの成果をあげました。プラズマ圏・放射線帯がある内部磁気圏は、小型衛星EGR衛星によって更に詳しく調べられていくことでしょう。
このように「あけぼの」は、それまで断片的、イベント的にしか捉えられていなかった磁気圏や電離圏の現象を、統計的に描き出したこと、また観測的な磁気圏・電離圏の研究の手段としての、更に高度なプロジェクトの礎となったことに特徴のあるプロジェクトであると思います。
図3:「あけぼの」衛星によって撮影されたオーロラ
太陽活動の長周期変動と地球内部磁気圏変動を結ぶ「あけぼの」
「あけぼの」はもちろん日本では一番長く続いているプロジェクトです。人工衛星にとっては最悪の環境である放射線帯を飛来している衛星としては、世界的にも類を見ない長寿衛星です。地球の磁気圏は、太陽の磁場活動と密接な関係があるのですが、太陽の磁場は、22年の周期で反転します。また、太陽表面に強い磁場がある黒点の数は、11年周期で増えたり減ったりします。「あけぼの」を打ち上げた1989年は、太陽活動の極大期でした。「あけぼの」プロジェクトは、太陽の磁場の周期である22年間のデータを連続的に取る計画で、現在も運用を行っています。
図4:「あけぼの」衛星で観測された、毎年の放射線帯のプロットと太陽黒点数